ストレスチェック125|産業医が新たにストレスチェックに項目を加えたい場合(16/5/01)
トップページ > ストレスチェック125|産業医が新たにストレスチェックに項目を加えたい場合(16/5/01)

ストレスチェック125|産業医が新たにストレスチェックに項目を加えたい場合(16/5/01)

2016年05月01日(日)11:06 PM

ある産業医より以下の問い合わせがありました。 
【質問】 57項目の質問項目は、とても満足いくものとは思えません。新たな項目を加えたいのですが。

【回答】
ごもっともです。
「仕事のストレス要因」、「心身のストレス反応」、「周囲のサポート」の3 領域に関する項目により検査を行い、ストレスの程度を点数化して評価できる条件を満たしてさえいれば、独自に自由記述欄を設けたり、業者の提案する質問項目を追加で増やしたりと、提供するサービスを付加することは差し支えないというのがストレスチェック実施「マニュアル」からの回答です(これら3領域を入れる科学的妥当性も疑わしいというご質問が追加で出そうですが・・・・)。

もとし、その場合には以下の観点からの吟味が必要です。

 第三者の評価を得ていない質問や尺度を、職業性ストレス簡易調査票と、あたかも“ 抱き合わせ販売” しているかのような業者が見受けられます。実際、産業衛生学会等の第三者により科学的な妥当性の吟味を受けた尺度はまれです。その質問や尺度が本当に有用なのかについては評価・吟味が必要です。

性格検査や自死(自殺)リスクを含めた精神疾患のスクリーニングを検査に盛り込むことは「ストレスチェック実施マニュアル」にて不適当とされています。確かに定期健康診断の保健指導がこれまでなされていないというような、産業保健の土台となる健康管理活動してこなかった事業場では、突然、高ストレス者に対する医師による面接制度を設けたとしても、労働者は戸惑い、否定的な反応しか呼び起こされず、働きやすい職場環境形成という理念すら危ぶまれる可能性が高いこと、日本労働安全衛生コンサルタント会常任理事である産業医科大学の森晃爾教授からも危惧されています。

一方、高ストレス者であって面接指導が必要と評価された労働者であって、医師による面接指導の申出を行わない者に対しては、相談、専門機関の紹介等の支援を必要に応じて行うこととマニュアルにあります。
実施者が専門的見地から意見を述べられる医師である場合、医師による面接指導が必要な「高ストレス者」と区分されたにも関らず、その面接指導の申出を行わないことが想定されるような場合や、次に述べる場合には、精神疾患のスクリーニングを始めとした専門的対応を行うことは可能になります。いや、実施した方が良いともいえましょう。
マニュアルには「「死にたいですか?」とか「死んでお詫びをしたいと思いますか?」といった項目は、背景事情なども含めて評価する必要性がより高く、かつこう
した項目から自殺のリスクを把握した際には早急な対応が必要となることから、企業における対応の体制が不十分な場合には検査項目として含めるべきではないとされています。しかしながら以下の理由により事業者は実施する必要性が安全配慮義務履行上、正当化されます。
「東芝深谷事件」(最高裁第2 小法廷平成26 年3 月24 日判決)では、精神的健康に関する情報を申告しなかったことをもって、民法418 条または722 条2 項の規定による過失相殺をすることはできないと判断しました。このような判例があることから鑑みると、自殺リスクを把握せずに実際に自殺者が出た場合には、安全配慮義務履行違反に問われかねません。

厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」において「メンタルヘルス不調」の定義は「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの」とされています。自殺という記載がある以上、それらの予見性に基づいた結果回避義務対応がストレスチェック制度では求められるものと考えられます。ストレスチェックの結果は、「実施者」は把握できても、「事業者」は受検者の同意がない限り把握できません。しかしながら厚生労働省の担当者は、検討会にて“ 責任を負うのは「事業者」” との姿勢を貫いています。である以上、自衛手段が必要になりましょう。また、あくまで疾病リスクを評価する追加質問は医療職による面接と同じく任意です。任意であることから、労働者を大切にしたい企業においては、十分な体制が整っているとの外形を示す「健康投資」にもなりましょう。
身体に対する定期健康診断では、各種がん検診まで導入している企業があります。
がん検診の有用性についてはアメリカPreventive Services Task Force(米国予防医学専門委員会)による勧告が有用です(米国予防医学専門委員会の勧告の一部は、「海外癌医療情報リファレンス」で確認可能です)。
そこから推奨されていないがん検診さえ導入されている背景には、おそらく、労働者側から、健康面で不安が出ないように、安心して仕事に打ち込めるようにしたいといった要望があったのかもしれません。この実際から鑑みたら、ストレスチェック制度には働きやすい環境づくりが理念にある以上、安心して働くために、メンタル失調に関してのスクリーニングの導入も求められていくことでしょう。

以上より体制が十分な企業では、これらの項目を含めるべきという解釈が成立します。むろん心配な向きあるでしょう。外部業者に事業者が会社の未来を委託することになるわけですから、慎重な判断が求められます。その業者が手配する「実施者」は、果たして専門的見地から意見を述べられるような専門性があるのか確認してみてください。忘れてはならないこととして、今回のストレスチェック実施後の結果は、会社独自で決めた項目に関する検査結果であっても、労働者の同意なく事業者に提供することはできません。

参考:「座談会 ストレスチェック制度の効果的な導入とコンサルタントの役割」安全衛生コンサルタント(2015,35(116):6-23)02550240031-ce8b-4a42-920c-e9a4046c7704-medium

 




«   |   »

123社

産業医契約が必要な企業様へ


合同会社 パラゴン
モバイルサイト