武漢での新型コロナウイルス感染症対策⑲|治療例集(20/03/06)
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武漢での新型コロナウイルス感染症対策⑲|治療例集(20/03/06)

2020年03月06日(金)12:17 午後

国立感染症研究所からの112例報告より、厚生労働省による症例定義では、見落とし(偽陰性)と悪化が懸念されること、当⑱で報じた通りです。

ただPCR検査という受検しようにも、PCR検査には採取(採取者は感染しないような細心の注意を払いながらの保護具着用が必須。更には非侵襲的陽圧換気法(NIPPV)を受けている患者からはエアロゾル発生から医療従事者への感染リスクが指摘されているため)、輸送(全国の公立衛生研究所に加え、業者が参入したとしても、要バイオハザード対策という厳密な管理が必須)、検査(被検査対象物が混入しないように神経を使う)というように、相当な手間や労力がかかります。

そして「検査を受けたい!」と 心配する市民が医療機関に押し寄せて医療資源を消費しては、本当に治療が必要な方々が後回しにされ、それが新たな感染源となっては困りましょう。実際に2008-09の豚由来新型インフルエンザパニック時と同じように、医療機関がパンクすることが想定されます。

そこで症例報告より、予見方法、治療方法を抽出しつつ、感染症対策でもプロフェッショナル産業医で知られる合同会社パラゴンが補足を加えることで、科学的根拠ある対策として紹介します。



COVID-19 肺炎初期~中期にシクレソニド吸入を使用し改善した 3 例

■地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立足柄上病院の入院治療を行う感染症病棟は、一般診療と交叉しない独立陰圧換気環境。

■同院はクルーズ船からの陽性者8名を受け入れ、そのすべてが65歳以上であった。
 2名は入院時無症候でその後も症状なく陰性化し退院、
 6名に酸素化不良と胸部CTにてすりガラス影を呈する肺炎像を認めた。
 4名は入院時に肺炎が存在、2名は入院後発症と考えられた。
 また6名中3名は重症化を来し高次医療機関へ転院搬送となり、うち2名(入院後発症1名)が人工呼吸器管理。

受け入れ直後は、肺炎発症者はほぼ重症化するような状況で、多くの報告で言及されているとおり初期の症状が軽症でも発症後7-10日で急速に悪化する印象であった。
同院は 当時 感染症病棟での人工呼吸器管理を行える体制が取れず、重症化リスクのある肺炎患者を抱える危機感が大きく、2月19日のシクレソニドの情報提供(本ウイルスに対し既存の気管支喘息治療用吸入薬シクレソニド(商品名オルベスコ)が、強い抗ウイルス活性を有することが国立感染症研究所村山庁舎のコロナウイルス研究室から紹介された)を受けて直ちに投与を開始した。

症例1は、入院時から肺炎を呈し、LPV/r開始し炎症の急性期を脱したものの酸素化不良が継続、食思不振が長期化したがLPV/r中止に踏み切れず、体力低下著明で急性増悪が危惧され、CT所見も増悪傾向を示したため転院を検討も他に重症患者がおり搬送順位を下げざるを得ず、転院先選定にも難渋する中、情報を得て投与開始したところ急速に快方に向かった

←混乱する現場で、懸命に救命と究明に尽力される医師像が伝わってきます。



COVID-19陽性確定者の肺炎への用法用量
① シクレソニド(オルベスコ)200μgインヘラー 56吸入 1日2回 1回2吸入 →14日分
② シクレソニド(オルベスコ)200μgインヘラー 56吸入 1日3回 1回2吸入 →約9日分
①を基本とし、重症例、効果不十分例に対し②を検討。そして感染局所への薬剤の到達を考慮し、「深く吸入する」、という用量用法が、現状最もreasonableな投与方法であると考える。

(無症候長期陽性者については、今後の検討が必要と思われる)

パラゴン補足:酸素飽和度は当初問題なくても、急激に悪化していった症例が複数あること、印象的でした。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)無症状病原体保有者3例の報告(地方独立行政法人大阪府立病院機構
大阪はびききの医療センター)


3例中3例にCRP上昇、3例中2例に肝機能の軽度上昇。画像検査では胸部X線では判明しにくいものの、胸部CTでは3例中3例に異常陰影を認めた。

M.Liuらの報告ではCOVID-19の重症罹患者の血液検査では健常者と比較し白血球、肝機能、LDH、心筋逸脱酵素、D-dimerが上昇し、リンパ球とアルブミンが低下するとあるが、本症例のような無症状病原体保有者では当てはまらない可能性がある。

→酸素飽和度が低い順に 93,97,98 でした。



COVID-19肺炎の2症例:クルーズ船内感染例およひ゛市中感染例(杏林大学医学部付属病院)


■1例目:実母、夫共にPCR陽性のクルーズ船乗客65歳女性。経過観察目的で入院。
 ■57歳時に左乳 62歳時:冠れん縮性狭心症あったも、症状悪化なく入院12日目に退院。

■2例目: 58歳女性.
既往歴:本態性高血圧症、高脂血症、2型糖尿病(HbA1c 7.5%)で内服受療中。

感染先?:2月8日に都内某所で多人数が参加したイベントに参加。移動は電車使用。
転帰:同10日夕刻より37.8℃の発熱、悪寒、咽頭痛、両頬の発赤出現。
11日に近医でインフルエンザ検査陰性。COVID-19肺炎を考慮したが、厚労省のPCR検査基準を満たさないことから抗生物質による対症療法治療開始。咽頭痛は次第に改善したが、微熱が継続。しかしながら、呼吸困難は増悪し、
15日に再度近医を受診し肺炎像、低酸素血症(SpO2 90%, 経鼻カヌラ2-3L/分)を認めたため18日(発症から8日目)同院へ紹介。

陽性所見:鼻汁、咽頭痛、食欲低下、全身倦怠感、両頬の発赤
陰性所見:悪寒戦慄、体幹の皮疹、嚥下痛, 筋肉痛
酸素飽和度95%(室内気)
AST 85 IU/L, ALT 129 IU/L, CRP 5.58 mg/dL

低酸素血症の進行(7Lマスクで93-95%)より入院2日目にに人工呼吸器管理開始。
COVID-19肺炎の暫定診断のもと、同日からLopinavir/Ritonavir(カレトラ:以下 LPV/r)4錠(800mg/200mg)分 2 の内服を開始したが効果なし。
入院4日目午後にCOVID-19のPCR陽性が判明し、夕刻には呼吸状態(P/F ratio 87)および画像所見がさらに増悪したため、心機能が良好であることを確認後に、体外式膜型人工肺 (ECMO: Extracorporeal membrane oxygenation)をV-V modeで同日より開始。
入院12日目の胸部X線では依然として肺病変の進行を認めている状態。

考察より:透析管理やECMO管理の可能な陰圧個室の確保が必要。
ECMOの導入に関して、呼吸器内科、麻酔科、救急科、心臓血管外科、循環器内科、感染症科、臨床工学士、看護師、外部から招聘した集中治療エキスパートなど総勢30名程度で議論した。

2月21日の時点で,東京都内のECMO使用が可能な施設は同院のみであり、残りは宇都宮の施設のみであることなど、貴重なアドバイスを日本COVID19対策ECMO netから頂いた(24h対応 専用電話番号050-3085-3335)



ロピナビル・リトナビルで治療した新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)の症例報告(国際医療福祉大学熱海病院)


■クルーズ船乗客71歳女性。
■臨床症状は改善するも画像所見の悪化から、PCR陽性判明後8日目にカレトラ配合錠 1回2錠(400/100mg)を1日2回、10日間の計画で投与開始。
■投与3日目に解熱。 
■副作用の下痢出現


COVID-19と判明した市中肺炎の1例

50代 日本人男性、身長 170 cm 体重 90 kg

既往歴:高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、糖尿病、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群
喫煙歴:元喫煙者 20本×20年(20~40才)
主訴:発熱、咳嗽 労作時息切れ
病歴:発症時、発熱、倦怠感
4日目37度台発熱にて近医通院、翌5日目39度台、インフルエンザ抗原検査は両日陰性。酸素飽和度97%
11日目息切れ、12日目救急外来にて酸素飽和度 93% (リザーバーマスク8Ⅼ)、胸部CT:両側斑状 スリガラス陰影、不規則な浸潤影が認められたため「急性間質性肺炎」の診断にて入院加療開始。

入院時検査所見:白血球数11,510(うち好中球数が92.2%とウイルス感染とは非特異的)、CRP31.59!!HbA1c6.6%、
13日目:人工呼吸開始、
16日目:PCR陽性

 

 

 



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合同会社 パラゴン
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