2017/18インフルエンザ⑥ なぜインフルエンザ予防ワクチンが不足しているのか(17/11/09)
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2017/18インフルエンザ⑥ なぜインフルエンザ予防ワクチンが不足しているのか(17/11/09)

2017年11月10日(金)12:03 PM

日本におけるワクチン行政の前時代ぶりを問題視した方々が2016年10月に確認されていたのに、1年経過するのに解決されないどころか、「ワクチンが足りない」と、混乱させる悪意ある勢力がはびこっているかのような「ワクチンギャップ」問題の本質を、プロフェッショナル産業医合同会社パラゴンは、2017年10月23日に紹介しました。

その後、 横浜市衛生研究所 横浜市感染症情報センターが、これらのことを公的に情報発信すると共に、英米と比べて前時代性である表も公開してくださいました。

「百姓は 知らさぬよう、殺さぬようという」江戸時代とは違い、不作為は共同正犯という立場(なぜなら、不安や恐怖を与えることは、抑うつ性障碍といったメンタル不調を招きかねないこと、がんにかかったことを、当人には知らさず、家族に知らせる非人道的行為は今はなされていない)から、この横浜市感染症情報センター抜粋掲載します。


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「インフルエンザワクチンは効かない」と言って、インフルエンザワクチンを受けない人もいます。インフルエンザワクチンを受けても、インフルエンザではない、インフルエンザに良く似た病気にかかってしまう場合があります。そのような場合には、その人は、「インフルエンザワクチンが効かなかった」と思うでしょう。また、前冬の流行ウイルスを参考としてインフルエンザワクチン株として選ばれたウイルスと、実際に今冬になって流行したウイルスとが遺伝子的にかけ離れたものとなってしまい、遺伝子的に近い場合と比較すればワクチンの効果が少なく見えるようなこともあります。

大量のインフルエンザワクチンの製造には時間がかかり、実際の流行の半年以上前にインフルエンザワクチン株を選んでいるので、その半年以上の間に、流行ウイルスの遺伝子の大きな差異が生じてしまうと、改めてワクチンを作りなおすというようなことができません。

実際に流行が始まってみないと、流行ウイルスの遺伝子の差異がわからず、また、ワクチンの効果の程度もよくわからないのです。

 インフルエンザのワクチンウイルスを卵で培養する場合、培養する間に順応した変異がワクチンウイルスに起こってしまい、ワクチンの効果を減じてしまうことがありえるとされています。近年、特に、A香港(H3N2)型ウイルスのワクチンウイルスにおいて、課題となっています(参考文献24)。


 例年、日本におけるインフルエンザHAワクチン製造株の決定にあたっては、厚生労働省は、インフルエンザHAワクチン製造株の検討を国立感染症研究所に依頼し、国立感染症研究所の検討結果を踏まえ、インフルエンザHAワクチン製造株を決定します(参考文献26)。

平成29年度のインフルエンザHAワクチン製造株の検討にあたっては、国立感染症研究所はA香港(H3N2)型ウイルスのワクチンウイルスとして、当初、A/Saitama(埼玉)/103/2014(CEXP002)を選定しました。

同株は昨年度の製造株と比較して卵での培養による変異が少なく、流行株に近く、WHOもワクチン株として認めています。

ところが、同株の増殖効率が想定より著しく低いとの報告が業者から厚生労働省にあり、最大限の生産努力によってもワクチンの大幅な不足が懸念されました。

そのため、昨年度の製造株であったA/Hong Kong(ホンコン)/4801/2014(X-263)(H3N2)の使用を可とすることを再検討するよう国立感染症研究所に厚生労働省が依頼しました

再検討の結果、国立感染症研究所は、A/Hong Kong(ホンコン)/4801/2014(X-263)(H3N2)の使用を可とすることを了承しました。

その結果、例年より約1か月遅れで、厚生労働省は、平成29年度のインフルエンザHAワクチン製造株を決定しました(参考文献27)。

平成29年度については、製造株の決定が遅れたことから、生産も遅れていて、医療機関へのワクチンの入荷も遅れています。

そのため、横浜市の平成29年度高齢者インフルエンザ予防接種については、インフルエンザワクチン接種期間を「平成29年10月1日~平成29年12月31日(休診日を除く)」から「平成29年10月1日~平成30年1月31日(休診日を除く)」へと一か月間延長しました

 

 日米英で使われているインフルエンザワクチンの違いについて表にまとめると下記のとおりです。米英で使われているインフルエンザワクチンは多様です。出血性の疾患がある場合などには米英では筋肉内を避け皮下深部に注射する場合もありますが、米英の筋肉内注射に対して日本の皮下注射は特徴的です。

日米英で使われているインフルエンザワクチンの違い
生か不活化か ウイルス・抗原の増やし方 投与方法 米国
(商品名)
英国 日本
不活化 卵で培養 筋肉内注射  
卵で培養 針無しジェット注射
(Afluria[3価], Afluria Quadrivalent[4価])
   
卵で培養 皮下注射    
卵で培養 皮内注射
(Fluzone Intradermal Quadrivalent)

(Intanza 15 microgram/strain)
 
細胞培養 筋肉内注射
(Flucelvax Quadrivalent)
○→×
(Optaflu: 2015-16年冬季までで生産中止)
 
リコンビナント(遺伝子組み換え) 筋肉内注射
(Flublok[3価], Flublok Quadrivalent[4価])
   
卵で培養 鼻腔内噴霧
(FluMist Quadrivalent)

(Fluenz Tetra)

 

引用されていた文献は以下

24.Grohskopf LA, Sokolow LZ, Broder KR, et al. Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines. MMWR Recomm Rep 2016;65(No. RR-5):1-54.
DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.rr6505a1

25
WHO: The Global Advisory Committee on Vaccine Safety (GACVS); “Safety of squalene“(スクアレンの安全性); 14 July 2006.

26.厚生労働省 :第16回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会(平成29年8月25日[金])配付資料.
 

27.小田切 孝人:資料2 2016/17シーズンの国内外のインフルエンザ流行株(総まとめ)および次シーズンのワクチン株について [pdf:4,940KB] (PDF版):国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター.
厚生労働省 :インフルエンザ(総合ページ).
 ○関連法令・通知・事務連絡.
  ・平成29年度インフルエンザHAワクチン製造株の決定について(通知):2017年7月12日 [pdf:40KB] (PDF版):厚生労働省健康局長.

28.Grohskopf LA, Sokolow LZ, Broder KR, et al. Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices — United States, 2017-18 Influenza Season. MMWR Recomm Rep 2017;66(No. RR-2):1-20. DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.rr6602a1.

29.厚生労働省 :予防接種情報 :予防接種法等、さまざまな情報が得られます。

30.英国薬剤概要情報サイト(eMC): The electronic Medicines Compendium.
 ・Fluenz Tetra 添付文書:Summary of Product Characteristics (SPC)
 ・Fluenz Tetra 患者用リーフレット: Patient Information Leaflet (PIL)



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