令和8年度「全国労働衛生週間」では、働く女性の健康問題への対応が、これまで以上に明確に打ち出されました。
厚生労働省が示した実施要綱では、準備期間中に取り組む「重点事項」の第2項として、**「女性の健康課題の理解促進」**が掲げられています。
そこでは、
- 女性の健康課題に関する健康教育や相談体制の整備
- 産業保健スタッフ等に対する専門的研修
- 女性の健康課題に関する相談窓口の活用
- 「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル」の活用
などが具体的に求められています。
女性の健康支援で問われるのは「実際に医療へつなげられる体制」があるか
2026年、厚生労働省は一般健康診断の機会を活用し、
「女性特有の健康課題(月経困難症、月経前症候群、更年期障害など)で職場において困っていることがありますか」
という問診を行い、「はい」と回答した労働者に対しては、必要に応じて情報提供や専門医への早期受診を促す仕組みを示しました。中でもキー対策は女性特有の健康問題を放置することなく、きちんと健康支援を提供できるかどうか 労働者の目線から鑑別しえるようになったものと理解できます。

保健師に 出席しない産業医の捺印をさせる名義貸し産業医稼業を働く営利集団があるとします。
そして
つまり、女性社員が受診する健診機関が、この項目を質問しているものか、そして、きちんと専門医につなげているものか確認することで簡単の把握可能です。。ここで重要なのは、単に「女性活躍」「ウェルビーイング」「健康経営」という言葉を掲げることではありません。
実際に困っている女性労働者を把握し、本人の意思とプライバシーを尊重しながら、必要な場合には適切な専門医療へつなげられる仕組みがあるかどうか。
ここに産業保健の実力が表れます。
厚生労働省のマニュアルも、女性の健康問診は任意であり、その回答を健診機関から事業者へ直接提供するものではないこと、そして科学的知見に基づいて専門医への早期受診を勧奨することを明記しています。
「女性支援」と「妊娠・出産への介入」を混同してはならない
一方で、女性の就労支援について考える際、もう一つ忘れてはならない視点があります。
それは、
女性の健康を支援することと、女性に妊娠・出産あるいは不妊治療を勧めることとは、全く別である
ということです。
正直、不妊治療までさせるのが女性就労支援だと推奨する集団があるとしましょう。
これらは かえってマタニティハラスメントではないでしょうか。もちろん不妊治療を希望する労働者が、治療のために仕事を辞めなくて済むよう職場環境を整備することには重要な意味があります。厚生労働省も、不妊治療経験者の中に、仕事との両立ができず離職・雇用形態変更・治療中断に至る人がいることを示し、「治療を受けながら働き続けられる職場づくり」を推進しています。
他方 不妊治療は、make money 産業です。ウェルビーイングのスタンダードではありえません。そのように人の不幸を換金することが実態なのに、うわべだけ 健康経営をうたうかのような営利集団である可能性が高いと考えられます。すなわち実質的かつ本質的に健幸経営を具現化する企業との違いは、まさしくこの辺りが分水嶺ではないでしょうか。なぜなら、不妊治療を産業保健関係者が 真っ先に勧めることは、make money産業保健以外、ありえません。真っ当な産業保健は、あくまで本人が希望する治療を支える制度づくりや環境整備という、お金にはなりようがない環境づくりに邁進するものです。
企業や健康支援サービスが、社員の極めて私的な領域である妊娠・出産・生殖に必要以上に立ち入り、「妊娠すること」「治療を受けること」を暗黙の望ましい選択肢として提示するようなことはしないものです。
なぜなら健康支援の主語は企業でも医療産業でもありません。
主語は、あくまで一人ひとりの労働者本人です。
「健康経営」の看板より、産業保健の中身を見る
同じことは産業医制度にも言えます。
産業医が実質的に事業場へ関与せず、他の産業保健職に産業医名義での処理を委ねるような運用が仮に行われているとすれば、そのような体制が、本当にこれから求められる女性の健康支援に対応できるのでしょうか。
問われるべきなのは、産業医の「名前」があるかどうかではありません。
- 産業医本人が職場の状況を理解しているか
- 労働者が安心して相談できるか
- 健康診断後の事後措置が実質的に機能しているか
- 月経困難症、PMS、更年期障害などの健康問題を見逃さないか
- 必要な人を適切な専門医につなげられるか
- 本人の自己決定と健康情報の秘密が守られているか
こうした実質こそが重要です。
令和8年度の全国労働衛生週間は、「女性の健康支援」が企業の福利厚生上の付加価値ではなく、産業保健そのものの重要課題になったことを示していると考えます。
「健康経営」と「健幸経営」を分けるもの
表面的に「健康経営」や「ウェルビーイング」を掲げることは簡単です。
しかし、本当に問われるのは、その企業で働く一人ひとりの健康課題を早期に把握し、本人の意思を尊重しながら、必要な支援や医療につなぐ仕組みが機能しているかどうかです。
その意味で、企業が委託している健診機関について、
「女性特有の健康課題について適切な問診を行っているか」
「問題が把握された場合、専門医への受診勧奨につなげているか」
を確認することは、その企業の女性健康支援が「看板」なのか「実体」なのかを見極める、一つの分かりやすい指標になるでしょう。
厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」でも、月経、妊娠・出産、不妊治療、更年期、がんなど、ライフステージを通じた健康課題と就労支援が前面に取り上げられています。
人の健康課題をビジネスの入口にするのか。
それとも、その人が健康に、尊厳を保ちながら働き続けるための支援を提供するのか。
この違いこそ、うわべだけの「健康経営」と、実質的・本質的な**「健幸経営」**とを分ける、一つの分水嶺ではないでしょうか。
なお、両立支援サイトも、今は女性の就労支援が前景に出てきています。
