健幸経営産業医発|認知機能障害と行動・心裡症状に対する超音波刺激による有用性評価
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健幸経営産業医発|認知機能障害と行動・心裡症状に対する超音波刺激による有用性評価

2022年08月14日(日)12:00 AM

わが国における2022年4月1日現在における65才以上の人口は3,627万人と、1955年時点の475万人と比すると7.6倍にまで増加しています。2021年の人口動態統計(確定値)からすると、鳥取県の人口である55万人より多い64万人もの人口が減少していました。2018年に認知症患者は500万人を、2020年には602万人となりました。65才以上でいうならば6人に1人の認知症と見込まれるまでになりました。これらは2025年にはそれぞれ700万人と65才以上の5人に1人へ、2050年には1千万人を超えるものとの推定がある程です。人口ピラミッドは当社代表が命名したように「棺桶型」になりつつあります。

市民の一人ひとりがこの認知症と向き合い、疾病ではない認知やサルコペニアを筆頭とした心身機能の衰弱、減弱を正しく理解し、共生する社会を目指す必要があります。

日経ビジネスが隠れ介護の衝撃という特集を組んだのは2014年でした。



そこで21世紀のメンタルヘルスは介護問題が中心になると捉え、2014年からといち早く取り組んできたのがメンタル産業医の命名者が創設した合同会社パラゴン(東京都港区)です。介護離職を防止するには、認知機能障害と認知症における行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:BPSD)に対する改善や緩和支援が強く求められます。そんな中、図の装置が一例ですが、微弱超音波刺激による認知機能や精神症状への影響に関し、科学的に検証されつつあります。

参考サイト:超音波ケア ウルトラーマ | 一般社団法人日本セルフケア研究会 (japan-selfcare-i.jp)



例えば藤井博子らの検討では、レビー小体型認知症(Dementiawith Lewy bodys:DLB)4 症例、アルツハイマー型認知症(Alzheimer type dementia:ATD)2 症例の計6 症例を対象とした介入研究を実施した結果では、認知機能評価にはミニメンタルステート検査(Mini-Mental State Examination:MMSE),患者重症度および介護者負担度評価には神経精神目録-質問票 (Neuropsychiatric Inventory Questionnaire:NPI-Q)を用いて微弱長波超音波装置を用いた超音波刺激を 12 週間施行後の効果を検討したところ、MMSE は 6 症例中 6 症例,NPI-Q は 6 症例中 5 症例において,認知機能,精神症状の軽快が確認され,それに伴い患者重症度・介護者負担度の軽快が確認されました。

出典:藤井博子,岡野秀鑑,霜鳥良雄,小阪憲司. 経頭蓋微弱超音波刺激による認知症症状軽減作用.日本認知症予防学会誌 Vol.11 No.1, 2021

 

また、レビー小体型認知症患者における認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)及び認知機能への微弱超音波刺激介入の影響を検討した特定臨床研究の結果は以下の通りでした。

◎BPSDへの改善評価

NPIーQによる評価結果では、介入後8週目以降、統計学的に有意な改善結果を示し、かつ介入の継続にて一貫して改善度は向上していました。介入終了後4週間目でもp=0.052と有意差は棄却されたものの改善が示唆されていました。

◎介護負担への軽減評価

ZARIT8による評価結果では、介入12週目に統計学的に有意な改善が確認され、それは終了後の4週間目でも持続していました。


◎パーキンソニズム症状の改善評価

UPDRS-Ⅲによる評価では、介入12週目に統計学的に有意な改善が認められるまで改善傾向が継続していました。終了後の4週間目には有意差は棄却されたものの改善傾向を示していました。


◎認知機能の改善評価


MMSEで評価した認知機能に関しては介入8週目に統計学的有意な改善が確認されたものの、介入12週目には改善傾向は確認されていませんでした。

 

NPI-Q :「妄想」「幻覚」「興奮」「うつ」「不安」「多幸」「無関心」「脱抑制」「易怒性」「異常行動」「夜間行動」「食行動」の 計 12 項目から構成される認知症者の BPSD(行動・心理症状を表す Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)の頻度、重症度、介護者の負担度を数量化できる評価方法 。

ZARIT8 :介護者の情緒的,身体的健康,社会生活および経済的状態に関して被った苦痛の程度を22 項目から評価する介護負担の評価尺度。

UPDRS-Ⅲ :言語や顔の表情、上肢の動き、下肢の動き、立ち上がり、歩行、姿勢の安定性、手足の振るえ等から構成されるパーキンソンニズムにおける運動機能評価尺度。

 

出典:レビー小体型認知症と臨床診断された患者を対象とする頭部超音波刺激装置 Ultra-Ma の有効性及び安全性に対する臨床研究. 特定臨床研究 報告書 

なおこの微弱超音波刺激装置の使用、利用方法は以下の動画から確認可能です。

 

 

参考サイト:医学的エビデンス.一般社団法人日本セルフケア研究会



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