ユニバーサルデザインという言葉が示すように、多様性ある社会において、多様性を持った労働者の就労を容易するために人間工学を応用した労働安全衛生や産業保健が、そしてその具体的支援として【作業管理】があります。それらの観点から鑑みるとして、達人と思しき方のすばらしい取り組みを紹介致します。
農福連携 例
①砂栽培へのIoT技術による自動潅水システム、②腰をかがめることなく、机の高さで育成するから高齢者や車いす利用者でも作業に従事可、③建設足場資材を用いた栽培ベットで構成されているため丈夫で安全といった特徴を持つシステムです。
農福連携という、地域へ根差した福祉への貢献も期待されています。
実際、京都橘大学健康科学部作業療法学科・小川敬之教授のご指導により、地域包括ケアシステムでの演習先としても、具体的には南山城支援学校や就労継続B型事業所(NPO法人プラッツ)にて活用されています。つまりは 配慮があれば車イス使用者が農業に取り組むことも、精神科の作業療法としてこの「トレファーム®」を用いて就労支援や社会参画にて働き甲斐や生き甲斐を持ってもらうことも可能となっています。
出典:東レ建設(株):本年も京都橘大学の学生の皆さんにWeb講義をさせていただきました。
この小川教授は延岡市の【地域支援センターつながり】の代表もされていらっしゃり、特にひきこもりの方々を対象に社会的・公的支援が十分に届かない方々に対して、創作活動、農業、園芸、ボランティア活動といった社会参画支援や自立支援、そして介護予防に関する事業を提供されています。
のみならず当事者のご家族や医療福祉従事者に対しても、障がいの理解促進を目的とした啓発事業といった重層的な支援体制を構築されていらっしゃいます。
更には NPO法人地域共生開発機構 ともつく の理事も担われ、地域を超えた幅広い活動に従事されています。
ともつくのHPには以下が掲げられていました。
■ 地域のみなさまが安心して通える場を提供すること [地域の居場所づくり]
■ 地域の高齢者の就労的活動の場を創出すること [仕事と役割づくり]
■ 講演活動で「発信」し続けること [地域共生に関する情報発信]
■ 多世代・異業種交流の場を創出すること [交流の場づくり]
小川教授による解説を伺ったところによると「ともにつくる」の想いが込められて「ともつく」とのことでした。この【NPO法人地域共生開発機構ともつく】は、企業における生産活動や業務の一部を切り出し、切り分け、高齢者、障がい者、シングルマザーなど様々な立場の方々が、それぞれ参画可能な施設や家庭にて就労できるように意図され、そしてそれらの様々な立場の方々が切り出された業務や任務に就労することで社会参加が可能になるような活動を展開してきているとのことでした。
語源は、元々 作業療法(Occupational Therapy)のOccupationalの語源であるOccupyから来ているとのことでした。どんな状況・状態であってもその人なりの満たされ感、満足感があり、その人の感じるOccupyを見つめながらとも歩き、ともにつくるの想いが「ともつく」に込められているとのことでした。
【労働】という字を分解すると、人が動くためには労い(ねぎらい)や労わり(いたわり)があってこそ。そしていたわりあい、ねぎらいあうよう、自律的自立が可能となるような就労環境や作業環境を構築する支援には、まさしく民主主義の根幹を為すことで 民主主義を成していけるものという思いがあるものと理解しました。
もちろん仕事をすることで健康や生命が損なわれてはならないわけです。
その人が、(アナと雪の女王や、SMAPの「世界に一つだけの花」のように) ありのまま、その人らしく 生活するに、その人に応じた 適切な、適した支援を様々な場で小川先生は
具現化されている姿勢に感服した次第です。
ここで思い出すのがエイジフレンドリー補助金。
メンタル産業医命名者|「エイジフレンドリー補助金」を解説 で取り上げたのは2020年。2023年版を調べたところ高齢者を含む労働者が安心して安全に働くことができるよう、中小企業事業者による高年齢労働者の労働災害防止対策を主眼としていたことに加え令和5年度からコラボヘルス等の労働者の健康保持増進のための取組に対しても補助対象となりました。しかし例のごとく申請期間は2023年度は6月12日から開始となり、受付は10月末日までのままでした。
出典:令和5年度エイジフレンドリー補助金 ー (一社)日本労働安全衛生コンサルタント会
出典:エイジフレンドリー補助金の申請受付開始について|厚生労働省
もとい
他にも小川教授が具現化された事例の一部を紹介します。
宮崎の特産品 カラスミの製造
障がいを持った方や高齢の者に対して、就労継続支援A型事業やB型事業の工賃ではなく、正規賃金で雇用し、そして 業務の工程分析の結果、業務分担できる部分に積極的に従事してもらう仕組みが具現化されています。
自然音の提供
JVCKENWOOD社による宮崎県 東臼杵郡:諸塚村の音風景
↑
特に「LIVE」がお勧めです。鳥や蝉、生きとし生ける動物や風にそよいでの葉のこすれや雨垂れの音と、まさしく生命のるつぼ・・・lives の中に包まれている感を受けます。
小川教授の解説を伺ったところによると、諸塚村では自治体、包括支援センター、社会福祉協議会、そして地場産業と協力して「じいばあschool」など高齢者や認知症の方々が、仕事を通じた社会活動を通して元気に活躍できる仕組みが構築されているとか。そこでは身体鍛錬や認知機能を高めるといった医療保健福祉という専門性からの支援にとどまらず、参画者それぞれが、今持てる力を最大限発揮できる環境や機会を構築し、自ら元気に活躍できる工夫を提供しているとのことでした。