産業医とは
トップページ > 産業医とは

産業医とは

1.重要性を増す産業医の役割とは

 2017年9月8日のに厚生労働省(東京都千代田区)労働政策審議会で「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」で以下が示されました。

・労働安全衛生法の一部改正として、「産業医の活動環境の整備」が掲げられた。
・産業医から勧告を受けた事業者は、その内容を(安全)衛生委員会にて報告する義務を負う。
・勧告を受けて講じた措置の内容を記録し、保存する義務が生じる。
・産業医を選任した場合には、常時、各作業場の見えやすい場所への掲示等にて周知する義務が課せられる。
・産業医を解任したときや、産業医が辞任したときは、(安全)衛生委員会に報告する義務が課せられる。

このように、今後、ますます重要性を増す産業医の役割・活動の在り方を合同会社パラゴン(東京都港区)が以下にて解説します。

2.産業医が担う職務について


労働安全衛生規則第14条第1項に規定されています。



健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。

健康診断とは、事業者が労働者に命じる仕事が、その労働者の健康状況を悪化させていないのか確認する手段です。そのために事業者は、産業医に、「事後措置」といいますが、以下のような就労区分判定をしてもらい、それに応じた就労支援を提供する必要があります。

要休職:仕事を休ませてでも通院加療させなければならないレベル。至急通院や入院加療が必要な重篤な状況です。血圧が220/120mmHgや糖尿病の指標であるHbA1Cが9.4%を超えているような場合が相当します。

要就業制限:働かせても良いが、主治医の元への通院や、その指示する加療内容遵守が就労の前提として必要なレベル。糖尿病でいうならば、夜遅い食事や運動不足は、治療に阻害的に働きます。従って交代制勤務からは外したり、残業を制限して規則正しい食生活を確保したり、労働時間に上限を設け、日々、運動できるだけの時間を確保しなければなりません。

通常勤務:従前の労働を続けていても、健康に支障がでることはないと判断されるレベルです。

 

長時間労働者に対する面接指導及び過重労働による健康障害を防止するために必要な措置の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。

事業者は、時間外労働に従事した労働者に、健康面で悪影響が出ていないかを産業医に確認させるとともに、悪影響が出ないような労務支援を産業医に考案してもらえます。

 

 心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)の実施、並びに高ストレス者のうち、医師による面接を希望した労働者に対する面接の実施、及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。

2015年12月から課せられた「ストレスチェック」制度でも、産業医は重要な役目を果たせます。「ストレスチェック」はいわば心の健康診断。「事後措置」として面接を通じたこころの病状判断だけではなく、「集団分析」という、職場そのものを活力ある職場に作り直す支援までも、産業医に担ってもらうことが可能になりました。

④ 作業環境の維持管理に関すること。

空調の風のあたり具合や室内温度設定は体調の不調の原因になりえます。給与での待遇がよくても、女性の派遣社員という立場だと、「冷え」を言い出せず、働きやすい職場とは感じられないことから離職者が相次ぐという職場がありました。このような場合に、専門的なご意見番として調和役を担ってもらえます。

⑤ 作業の管理に関すること。

机や椅子の高さを調整するだけで、腰痛や肩こり、頭痛の抑止がかなう場合があります。また、液晶画面の輝度や画面の角度の調整で、眼精疲労の軽減も期待できます。休憩時間中の工夫にて、生産性向上を具現化している事業所もあります。

 

 前各号に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること。

メンタル不調による休職者への復帰支援や再発防止対策検討、治療と職業生活の両立支援、労働衛生管理計画の立案や整備、中長期計画や年間計画の策定、事業所に応じた労働衛生管理体制の整備や有資格者の充足、監督官庁に提出する各種報告書式への署名捺印等、産業医に担ってもらえる業務は多種多彩にわたります。

 

 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。

人手不足倒産さえある中、「健康経営」の導入から、働きやすい職場づくりにて、求人戦線を有利に戦うことも、企業のイメージ戦略として有用でしょう。ここにも産業医が参画してきた歴史があります。それは1988年から始まったTHP(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)という、働く人の心とからだの健康づくりの推進運動です。このTHPでは、個人の生活習慣を見直し、若い頃から継続的で計画的な健康づくりをすすめることで、働く人がより健康になることを目標にしてきています。

 

 衛生教育に関すること。

セルフメディケーションがかなう漢方薬の説明や健康の維持増進に関する話をしてもらうことで、少子化時代、雇用した労働力や価値の毀損を抑止しえます。

 

 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。

健康障害が発生した場合、その原因を分析し対策を衛生管理者と共に検討することも産業医の役割になります。立案してもらった再発防止対策は、「衛生委員会」での労働者側との論議にて、事業所で実行できるようにしていきたいもの。その対策が現場にきちんと落とし込まれているか、衛生管理者や産業医には、「職場巡視」を通じて確認してもらえます。このように、事業者の“目”の役を産業医は果たせます。

 

3.産業医の資格とは


1996年の労働安全衛生法の改正後、産業医学に関する知識について、一定の要件が備えられた医師しか産業医になることはできなくなりました。

産業医の業務には予防法務や労務管理、生産性の維持向上も含まれます。これらを担うには、知識や経験を体系的に修得する必要があります。そのために厚生労働大臣は、以下の場合のみ、産業医として選任されるようにしました。

・例えば日本医師会による「日本医師会認定産業医制度」や産業医科大学の「産業医学基本講座」といった体系的な研修を修了したもの。

・労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの。

・労働衛生に関する科目を担当する 大学の教授、准教授又は講師(常時勤務する者に限る。)の職にあり、又はあつた者。

 

4.産業医の勧告とは


労働者を就労し続けさせることに危険性がある時に、産業医が“危ないよ”とアラートを出す制度です。

 

事業者は、常日頃から現場に張り付いているわけではありません。現場を確認する法的な地位である「衛生管理者」も、法律上、少なくとも週に一度以上しか職場は視ていません。潜在的な危険性にて、労働者に被害が及ぶおそれがある場合に産業医は、労働者の健康を確保するために、労働者の健康管理等について必要な勧告を事業者に対して行うことが保証されています。対して事業者側は尊重義務があります。ただし、ボクシングでのリングドクターが白タオルを投げさせる場合には、ボクサーの体力消耗をつぶさに確認していることと、レフェリーもいることから、投げ入れるタイミングに文句を言うのは当のボクサー位でしょう。他方産業医の勧告は、場合によっては月に一度しか確認しないという限界がある中です。

 

5.最近変更された産業医制度の内容とは


2017年6月1日から、産業医の定期巡視の頻度、健康診断結果に基づく医師等からの意見聴取、産業医に対する長時間労働者に関する情報提供に関して改正された労働安全衛生規則が施行されました。

 

1983年(昭和58年)当時、労働安全衛生規則14条で定められた「産業医の職務」は以下のわずか3項目に過ぎませんでした。

  • 健康診断の事後措置、② 衛生教育、③ 保健

それが今やQ2で述べたように9つになっています。グローバル経済や多様性ある働き方への対応が求められる中、過労死抑止やメンタル失調による休職者への職場復帰支援においては、労働者の「キャリア」への志向性を踏まえた支援を考えなければなりません。このように産業保健を取り巻く状況も時代と共に変化してきています。こうした産業医の業務や役目を整理し、産業医に求められる「コア・コンピタンス」を明確にするために厚生労働省は「産業医制度の在り方に関する検討会」を参集し、この産業医制度を見直しました。その結果を受け厚生労働省は、以下のように労働安全衛生規則を改正し、2017年6月1日から施行しました。

 

:健診事後措置の強化:産業医が求めた場合に事業者は、健康診断でひっかかった労働者の従事する業務内容を提供することになりました。その労働者の健康度と、従前の労働に従事させ続けてよいのか、更には事業者側が考えているその労働者の将来のキャリアとの整合性を産業医は検討することになります。

:長時間労働者に関する情報の産業医への提供:事業者は、1月当たり100時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る超えた時間に関する情報を産業医に提供することになりました。産業医は、その労働者を、そのまま業務に張り付かせてよいものか、それとも残業制限・早退指示・代休取得といった対処が必要なのかの判断を分担することになります。

:職場巡視回数の半減化:事業者から毎月1回,産業医に以下の情報を提供している場合には、産業医による職場巡視頻度義務を、これまでの少なくとも毎月1回以上から,少なくとも2月に1回へと半減することを可能に。

1 衛生管理者による職場巡視結果

2 衛生委員会にて,事業者が産業医に提供するとした情報が提供される場合。これまでは,少なくとも月に1回以上、職場巡視することが義務でした。

3 その事業者が決めた独自項目

すなわち産業医における職場巡視の負担を半減することで、事業者側の責務2点を産業医に分担してもらえることになりました。

 

6.働き方改革を踏まえて予定されいてる産業医の制度改正とは


「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日 働き方改革実現会議)にて、産業医の権限強化が記載されました。

2014年9月に厚生労働省は「長時間労働削減推進本部」を、2015年4月の「過重労働撲滅特別対策班(かとく)」を立ち上げました。しかしながら2015年12月に高橋まつりさんが自らの命を絶つという痛ましい事件がありました。この痛ましい過労死を受けて、BSフジの「プライムニュース」という番組が『「過労死」なくせるか 再発防ぐための方策は』を2016年10月26日に組みました。それに著者が登壇した際、同じコメンテータだった田村憲久元厚生労働大臣と川人博弁護士に以下を“陳情”しました。「産業医をないがしろにする企業があるのみならず、不幸なことに自殺する産業医さえ複数出ていることから、産業医の権限の強化が必要されたら、防止し得る可能性がある」と。

この陳情は聞き流されたのかもしれませんが、安倍内閣総理大臣を議長とする「働き方改革実現会議」での全7回の議事録をみても、どの議員からの発言は見当たらない中、2017年3月28日に決定された「働き方改革実行計画」において、

「7.(3)労働者の健康確保のための産業医・産業保健機能の強化治療と仕事の両立支援に当たっての産業医の役割の重要性に鑑み、治療と仕事の両立支援に係る産業医の能力向上や相談支援機能の強化など産業医・産業保健機能の強化を図る。また、過重な長時間労働やメンタル不調などにより過労死等のリスクが高い状況にある労働者を見逃さないため、産業医による面接指導や健康相談等が確実に実施されるようにし、企業における労働者の健康管理を強化する。加えて、産業医の独立性や中立性を高めるなど産業医の在り方を見直し、産業医等が医学専門的な立場から働く方一人ひとりの健康確保のためにより一層効果的な活動を行いやすい環境を整備する。これにより、働く人々が健康の不安なく、働くモチベーションを高め、最大限に能力を向上・発揮することを促進する。」と記載がなされました。

なお日経ビジネス2017年6月5日号40ページに、塩崎恭久厚生労働大臣(当時)の以下の記載があります。

「産業医制度は、今回の(電通)事件では効果がでませんでした。誰のための、何のための制度なのか。抜本的な見直しをしている最中です。」 

この発言の背景には、著者と同じ思いを持つ方の意見があるものと考えられます。翌6月6日の労働政策審議会安全衛生分科会「働き方改革実行計画を踏まえた今後の産業医・産業保健機能の強化について(報告)」にて、以下、著者による概略記載ではありますが、産業医という機関が、より活用される道筋が織り込まれています。

 

・長時間労働者への医師による面談後、労働者に異常所見があり、産業医が、対応を事業者に要望した場合、その労働者への事業者による対応内容を、事業者は産業医に伝える必要がある。

・産業医による勧告に関する実効性を確保するためには、当該事業場の実情等を十分に考慮した内容で構成する必要がありましょう。そこで事前に事業者に産業医は勧告内容を伝え、内容を事業者と共に議論・討議してもらうと共に、勧告内容は、衛生委員会でも報告する。

・産業医が離任した場合には、事業者はその旨及びその理由を衛生委員会で報告する。

 

7.産業医の活用で企業が注意すべきこととは


“税金”ととらえるのではなく、“資源”。孤独な経営者。判断の振幅を減衰させる軍師として使う方策をお考えください。実際に、合同会社パラゴン代表は、経済産業省 平成29年度 健康経営度調査 (従業員の健康に関する取組についての調査)という、「健康経営銘柄」選定に向けた新たな取り組みを行う法人や、「健康経営優良法人 2017(大規模法人部門)~ホワイト 500~」認定企業の更新支援に従事しています。

日本医師会による「日本医師会認定産業医制度」の認定証は、有効期間5年間内に所定の単位を修了した医師であれば更新可能です。更新しなくても、「産業医学基礎研修」を法律での「一定の要件」を、過去、備えたことからに違いはないことから、“元”日本医師会認定産業医も、産業医として選任することは、法律上可能ではあります。法律を満たせばよい企業であれば、安く雇用できるでしょう。ただ、産業医の活用にて事業者は、自身の負担が軽減されるのみならず、高いコストをかけて雇用した労働者のポテンシャルを発揮してもらうことで、企業の生産性をも高める支援や営業指南役を果たせる場合もあります。著者も調度品のレイアウト、室内の色合いや雰囲気まで提案しています。契約先の長所を学会で発表したり、掲載審査がある海外雑誌への掲載をしたり、大学院に貢献するような、つまりは公益への貢献といった、「ノブレスオブリ―シュ」を果たすことで、まわりまわってその企業の広報につながる支援も提供しています。このような活用方法もあります。

 

 

 

産業医契約が必要な企業様へ


合同会社 パラゴン
モバイルサイト