健康経営支援産業医によるストレスチェック制度解説|その1:制定背景について
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健康経営支援産業医によるストレスチェック制度解説|その1:制定背景について

2021年10月22日(金)10:43 AM

ストレスチェックについて
「ストレスチェック制度(ストレスチェック及び面接指導)」についての仔細を、健康経営優良法人認定支援にストレスチェック制度を活用している合同会社パラゴン(東京都港区)が最新知見を踏まえて紹介します。


初回は制度そのものの概略と制定された背景を記載致します。そもそもストレスチェックはやりさえすれば良いと勘違いしている企業が2021年度でも確認されています。確かにコンプライアンス(法令順守)面からの前提として大切な内容です。でもいわゆる過重労働に基づく「脳・心臓疾患の労災認定基準」が改訂された後は、労働者に対して過重労働を強いることがないようにするという業務管理からの点検も求められます。
また、当社が得意としている組織としてのイキイキ、のびのび 働きやすさの向上や生産性改善支援まで追求することができます。

2014年6月に改正された労働安全衛生法に基づき、翌4月に「心理的な負担の程度を把握するための検査(著者注:「ストレスチェック」という)及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」が示され、翌2015年12月から事業者に対するストレスチェックの実施が義務づけられました。

このストレスチェックは、仕事によるストレスの程度を把握し、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止する検査です。このストレスチェック制度とは、ストレスチェックの実施、その結果に基づく医師による面接指導、面接指導結果に基づく就業上の措置、ストレスチェック結果の集団ごとの集計・分析など、一連の取組全体を指しますが、主に3つの特徴があります。

 

1つ目がストレスチェックの結果を労働者自らが把握することで、ストレスの状況について気付きを行うと共に、「ストレスマネジメント」といいますが、ストレス因子(ストレッサー)への上手な対応を行うきっかけにすることが可能となります。

2つ目が「集団分析」という、ストレスチェックの結果を集団ごとの集計・分析ができるようになったことです。これら組織分析結果は、これまでに得られている全国統計と比較することで、その集団がイキイキ・のびのびといった形容詞で表現可能な“働きやすさ”という視点からみた全国での立ち位置が把握できるようになります。むろん部門間、部署間、世代間、入社年次別と様々な切り口で社内分析が可能となるので、結果としてどの部門や部署に対して、どのような対策を執ったらより働きやすくなるのかまで考察できるようになることから、企業での職場環境の改善が容易に用意された(出た、おやじギャグ)ということは、取り組まない企業以外では事実です。

3つ目として、「長時間労働者に対する医師による面接指導制度」(労働安全衛生法第66条の8、9)によってこれまでは、月あたりの超過労働時間数が80時間等の長時間労働に従事していた労働者しか希望できなかった医師による面接制度が、ストレスチェックを受けた労働者であれば、希望すれば全員受けることが可能となりました。

 

以上より、労働者がメンタルヘルス不調に陥ることを未然に防止するという「一次予防」の取組みが強化されることで、精神疾患による休職者数発生が抑制される実際が導入した企業の大半で確認されています。

マスコミは、いわゆる「ブラック企業」という造語を元にした報道を行っています。そのようなコンプライアンス意識がないような企業も、きちんとストレスチェックの実行や医師による面接を経ることでメンタル失調によって休みがちな社員の発生が少なくなります。組織全体としての生産性も向上するものです。更には当サイトで紹介している集団分析と「アクションプラン」を通じた職場環境改善計画が提供されたら、労働者にとっていきいきと働きやすく活力あふれる職場形成も容易になります(いわゆる「エンパワメント」)。それらと相まることで、単に生産性向上が期待出来るだけではなく、活用方法によっては、その企業の魅力や社会的評価を高めることさえも容易に確保可能な制度です。

 

参考サイト:資料2 改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度の概要

出典:厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課産業保健支援室.改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について



制度が制定された背景を解説致します。


 わが国における自殺者は、1998年以降連続して3万人を超える状況でしたが、2007年に改正貸金業規制法や2008年の多重政権問題改善プログラムを通じて、いわゆる「サラ金」に対する規制を強化したことから徐々に効果を上げ、2012年には27,858人と15年ぶりに3万人を下回りました(内閣府・警察庁「自殺の状況」)。


その後も低下の一途で、1997年より前がおよそ23,000人台で推移してきたレベルにまで回復してきました。しかしながら精神障碍等に対する労働災害支給決定件数は、2012年の475件と400件を超した後、2016年の498件へと5年連続で400件を超し続けてしまいました。
何しろメンタルヘルスに取り組んでいる事業所の割合は47.2%(平成24年労働者健康状況調査)にとどまっていました。そこで厚生労働省は平成25年度を初年度とした第12次労働災害防止計画の中で、平成29年までにメンタルヘルスに取り組んでいる事業場の割合を80%以上とする目標を掲げました。また、厚生労働省は、平成23年に審議未了のまま廃案となった、メンタルヘルス対策の強化を含む労働安全衛生法の改正法案を、2014年1月の労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)の答申を踏まえて3月に提出しました。同6月に可決され、6月25日に公布されるに至った次第です。

出典:厚生労働省 第12次労働災害防止計画(平成25年度~29年度)

 

 



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