産業医によるコロナ禍検証|自衛隊整備保護具の実際
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産業医によるコロナ禍検証|自衛隊整備保護具の実際

2020年03月26日(木)9:43 PM

産業医向け武漢発新型コロナウイルス感染症対策各種情報をお届けします。

 

対策病床使用率をすぐ探せるサイト


出典:新型コロナウイルス感染症対策プロジェクト.
新型コロナウイルス対策ダッシュボード

都道府県ごとの感染症病棟における空きベットと感染者数とが把握できるようになっています。2020年3月度月例経済報告で6年9か月ぶりに「回復」との文字が消えたということですが、このような飛散な医療水準であっても、この6年9か月の間、「回復」してきたとは、実に驚く医療貧困ぶりでした。農林水産大臣によると、小麦は3か月分、米は半年分しか国内に残っていないというアナウンスもあったようです。



【新たな感染経路説】

ヒト呼吸器コロナウイルスの潜伏期間は3日で,鼻汁の多い,ティッシュの山ができるような鼻かぜを生じる。この感染様式は,くしゃみで感染するというより,ティッシュで鼻をかむ際に鼻を触った手がウイルスで汚染され,その手でドアノブなどの物を触り,そこに付着したウイルスが物を介して別の人の手にうつり,その手を顔面にもっていくことで感染が成立。

緊急寄稿(1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察(白木公康) 日本医事新報社 No.5004 より

 

【現役自衛医務官からの報告】

出典:田村格.コロナウイルスウイルス感染症(COVID-19)について(当院におけるクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」から搬送された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)104症例のまとめです)より

対象:ダイヤモンドプリンセス号内でのCOVID-19に対するPCR検査で陽性と判定された乗客104例

入院時現症: 発熱 28.8%、咳嗽 27.9%、倦怠感 10.6%

症状の推移: 症状の悪化に伴って咳嗽は全体の41.3%で出現。 酸素投与必要例 13.5%、うち約半数がいわゆるネーザルハイフローやNPPVなどの高流量酸素投与が必要だった。 気管挿管による人工呼吸管理を必要としたのは1例であった。

観察期間を通して全く症状や所見を認めなかった症例が31.7%にも上った。

無症状あるいは医療機関を受診しない程度の軽微な症状のSARS-CoV-2感染者は多数存在すると考えられる

 

悪化サイン:軽微な症状にもかかわらずCT検査で異常陰影を認める病態を「Silent Pneumonia」と命名。この「Silent Pneumonia」から「Apparent」になる際は、発熱や咳嗽の増悪や呼吸困難の出現ではなく、高齢者ではSpO2の低下、若年者では頻呼吸の出現で気付くことが多かった。また、症状増悪は初発から7~10日目であることが多く、比較的病状はゆっくりと進行。

→(パラゴン注:酸素飽和度計での確認が有用)

医療職を守るには

平素、感染症診療に携わっていないスタッフの動員に対しては、病院感染対策チームスタッフのみならず全国の自衛隊病院感染管理認定看護師の協力を得て、N95マスクフィットテストや個人用保護具の着脱訓練を行い、ゾーニング要領を徹底して感染管理の質の維持に努めた。

ダイヤモンドプリンセス号からの患者は全員退院したが、スタッフの発症あるいはPCR検査陽性は確認されなかった。この事実からは感染管理の重要性が明らかであるとともに、COVID-19確定症例とわかって対応していれば院内感染は起こりにくい可能性も示唆される。

現在までに報告されている院内感染事例はCOVID-19の診断がなされる前に生起していることが多く、院内感染を防ぐためにはいかに疑い、診断するかが大きく関わってくると考えられる。なお、当院では多数の患者を受け入れたため、陰圧室は不足し、患者の多くは陰圧機能のない一般病室に収容した。このため、ウイルス量が多く、ネーザルハイフローや人工呼吸器などのエアロゾル発生機器・手技を多く必要とするであろう重症例から陰圧室を使用し、ゾーニングを徹底した。

標準予防策に加えて接触感染予防策、飛沫感染予防策を実施し、マスクは原則N95マスクを使用した。アイガードの徹底に加えて脱衣に熟練を要するいわゆるワンピース型個人用保護具は用いず、アイソレーションガウン使用を標準とした。さらに挿管時には電動ファン付呼吸用保護具 も装着した。

 



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