健康経営㉗|メンタル産業医による労働経済政策での人的資産管理

雇用調整助成金による失業率増悪抑止だけでは、DX活用が前提である「Society5.0」社会を生き抜くキャリア形成は構築しえないこと、Society5.0を見据えたメンタル産業医で知られる合同会社パラゴン(東京都港区)が解説します。

1995年以降 継続して生産年齢人口減が持続していることを、労働経済における人的資源管理でもプロフェッショナル産業医で知られる当社創設者が指摘したのは2018年のことです。

出典:櫻澤博文.過労&過老社会対応に向けて.健康開発 2018;22(4)56-60

労働経済を維持するための政策推進の要に「人生 100 年時代」や「エイジレス社会」の到来が位置付けられてからも何年もなります。具現化のために2020年度は「エイジフレンドリー補助金」さえ交付されはじめました。そして生涯を通じた労働者個人の学び直し(リカレント教育)をはじめとした職業能力開発支援も重点分野として位置づけられています。これらはこの「健康経営」シリーズでも触れてきたように、コロナ禍にかかわらず着々と準備され続けています。労働経済を維持するにもキャリアコンサルタントを活用することが肝要だとBSフジの報道番組で述べたのは2016年10月のことでした。その後具体化されてきた実際をまとめました。

 

1.試験内容の変更

2020年4月には、国家資格であるキャリアコンサルタント試験内容が9年振りに変わり、「 職業能力開発(リカレン ト教育を含む)の知識」として下記が含まれました。

『 職業能力開発(リカレント教育を含む)に関し、次に掲げる事項について一般的な知識を有すること。
1、個人の生涯に亘る主体的な学び直しに係るリカレント教育を含めた職業能力開発に関する知識(職業能力の要素、学習方法やその成果の評価方法、教育訓練体系等)及び職業能力開発に関する情報の種類、内容、情報媒体、情報提供機関、入手方法等。
2、教育訓練プログラム、能力評価シート等による能力評価、これらを用いた総合的な支援の仕組みであるジョブ・カード制度の目的、内容、対象等。』

2. 「訓練対応キャリアコンサルタント」認証制度開始

既存の有資格者に対し厚生労働省の委託業者より以下の中長期的なキャリア形成を支援するためのキャリアコンサルタント向け研修 が提供されています。

(1)訓練対応キャリアコンサルタント向け研修(講義時間3時間11分)
(2)IT分野の能力開発に関するキャリアコンサルタント向け研修(講義時間2時間22分)
(3)若者応援キャリアコンサルタント育成研修(講義時間9時間10分)

受講後には試験も課されます。合格者は「訓練対応キャリアコンサルタント」として厚労省に登録されるようになりました。

3.教育訓練給付金受給要件にキャリアコンサルティング受講が

国の教育訓練給付金制度 は現在、以下の3本建てです(教育訓練難度の低い順から)。

 (1)一般教育訓練給付金(上限10万円、費用の20%)
   

 (2)特定一般教育訓練給付金(上限20万円、費用の40%)
   

 (3)専門実践教育訓練給付金(上限120万円、費用の50%・受講後に雇用されたら追加20%)
   

上記(2)と(3)は受講開始日前に、訓練対応キャリアコンサルタントによる「訓練前キャリアコンサルティング」を受けることが条件となりました。
また、(1)においてもキャリアコンサルタントからキャリアコンサルティングを受けた費用(上限2万円)は教育訓練経費として扱われても構わないことになりました。

まとめると、キャリアコンサルタントには 益々 職業能力開発に長けてもらわないと困る状況になっていると共に、職業能力開発に長けたキャリアコンサルタントの支援がより一層、求められる時代になってきていると理解できます。

出典:厚生労働省.  教育訓練給付金制度