メンタル産業医ドクター櫻澤のヘルシーコラム|「あざみ野STYLEvol.42」に掲載

健康経営に長けたメンタル産業医で知られる合同会社パラゴン(東京都港区)代表の櫻澤博文の書いた
『メンタル産業医 ドクター櫻澤のヘルシーコラム いつもこころにうるおいを! ビタミンDでウイルスやアレルギーに負けない体つくる』が、参考サイト:「あざみ野STYLE vol.42 2020SUMMER号」に掲載されました。

出典:「あざみ野STYLE vol.42 2020SUMMER号

骨を丈夫にするだけではないビタミンDの働き、摂取するのによい魚介類やきのこ類、
ビタミンDが防止してくれるリーキーガット症候群とは等、記載されています。

 

免疫力を高めるのみならず、「うつ」も防止できる栄養素、ビタミンD

 

ここで“ビタミンDって、骨粗鬆症対策だけではないの?”と疑問を感じられた方へ

ためしに以下の症状がないか、確認してみてください。

 

□季節でいうと、冬が苦手

□食が細い

□胃もたれしやすい

□下痢や便秘を繰り返す

□おなかの張りや違和感、腹痛を感じやすい

□スギやヒノキ等の花粉症がある

□口内炎や歯周病を起こしやすい

□風邪をひきやすい

□インフルエンザの予防接種をしてもかかりやすい

□不妊や流産の経験がある

 

これらはビタミンD不足で引き起こされている可能性があります。

 

ビタミンD不足の原因

夏に限らず外出時に、日傘・帽子・長袖・手袋で皮膚を覆ったり、日焼け止めを多用したりすることで生じます。元々体内に備蓄が少ない方は、コロナウイルス感染防止にと外出を控えることでも発生してしまいます。外出が減るとますます体内のビタミンD合成に支障が出てしまい、上記症状が悪化してしまいます。なお十分合成されたとしても、体内に脂肪が多い肥満者だと、ビタミンDが脂肪に溶けたまま活用されなくなってしまいます。

 

 

ビタミンDのつくられ方

体内で使われるビタミンDの由来は食事からが1~2割です。残りの9~8割は、体内でコレステロールを材料に合成することができます。ただ合成には、皮膚に紫外線を20分程度、当てる必要があります。

なお、コレステロールという脂質が材料であることと、皮膚で合成されることから、皮下脂肪が多いと、その皮下脂肪に溶けたまま、体内に運搬されず、つまりは活用されずに終わってしまうという性質があります。

 

ビタミンDと免疫

ビタミンDには。免疫機能を調節する作用があること、近年知られてきました。その一つにはビタミンDによる粘膜機能の強化作用があります。スギ花粉等に対する過剰な結膜や鼻腔中の粘膜での免疫反応は抑制する一方、気道や肺胞に侵入してきた細菌やウイルスによる感染防御作用は促進します。従って風邪、インフルエンザ、今回の新型コロナウイルスによる肺炎管支炎といった呼吸器科感染症にかかりにくくなります。

同様に、腸管内の粘膜の機能性向上作用より、下痢や便秘を繰り返すという過敏性腸症候群や感染性胃腸炎も抑止する作用を発揮します。

 

ビタミンDと神経・精神作用

2つの経路から神経・精神作用を強化します。

 

  • 腸管での粘膜保護作用から

ビタミンDには小腸の表面にある上皮細胞と上皮細胞とを、しっかりと結合する作用があります。上皮細胞同士がしっかりと結合されると、小腸のバリアが強固化されます。すると、体内に有害な病原体、水銀や鉛といった重金属、環境ホルモンといわれる内分泌かく乱物質の侵入を阻止しやすくなります。それらの解毒や無害化によって消耗される生理活性物質や・・・仔細なメカニズムは、読まれる方が眠くなるでしょうから中略します・・・簡単にいうと体力を温存できるようになるので、忍耐力が高まります。

逆にビタミンDが足りないと、「リーキーガット(leaky gut)症候群」といわれますが、小腸の上皮細胞間がスカスカになり、不要な有害物質が体内に侵入しやすくなります。

むろん、このリーキーガット症候群は、小麦に含まれるグルテンが諸悪の根源ではあります。

 

実際に減らすことで改善することも知られています。

参考サイト:「朝のパンは体に悪い」と警鐘を鳴らす消化管専門医に理由を聞いた

小麦粉を使った工業製品(パン、パスタ、うどん、ラーメン、菓子類。天ぷらの衣等)の摂取を避けることは必須ですが、ゼロにはできない以上、防衛機能を持つビタミンDを摂取しておきたいもの。

体内で免疫応答という免疫細胞の出動が引き起こされ、かつそれが持続的に続くことから、「過敏性腸炎」や「海洋性大腸炎」を筆頭とした慢性的な炎症が体内のあちこちで生じてしまいます。と同時に、本来吸収しないといけない栄養素は吸収しにくくなることで、栄養不足となり、これらが相まって体調が崩れてしまいます。

  • カルシウム合成作用から

食事から摂取されたり皮膚で合成されたりしたビタミンDは肝臓や腎臓で活性化されます。すると、腸管からのカルシウムの吸収と腎臓再吸収が促進されます。吸収されたカルシウムは血液中に取り込まれ、血中のカルシウム濃度が上昇します。カルシウムは、NMDA型グルタミン酸受容体をはじめとした大脳皮質や中枢神経系に広く存在するGタンパク質結合受容体・・・仔細なメカニズムは、読まれる方が眠くなるでしょうから中略します・・・簡単にいうと、神経という体内の情報伝達・処理系を円滑にします。体内の情報伝達は電気信号を介して行われています。その電気信号の遅延が「うつ」、整流化されていない電気信号のやり取りが「パニック」とすると、これらを抑止しえるようになります。

 

 

ビタミンDと骨代謝・・・特に骨粗しょう症防止に

前述②でのカルシウム濃度の上昇によってカルシウムは骨の中に取り込まれやすくなります。あたかもセメントでひび割れたコンクリートの補修をするように、骨密度を高めていきます。

コンクリートがボロボロとなり、鉄骨といった骨組みだけになっていく病気が「骨粗しょう症」です。ボロボロになってからカルシウムを補強しても、ボロボロなコンクリートの補修は難しいように、骨粗しょう症になってからカルシウムを積極的に摂取しても遅いこと、おわかりになるかと。特に女性は、女性ホルモンの分泌が少なくなると閉経するだけでなく、骨からカルシウムが奪われやすくなります。少々奪われても、もろくならないようにする工夫は可能です。それは、思春期以降、積極的にカルシウムと(骨にカルシウムを吸収しやすくさせる)マグネシウムを摂取するだけではなく、骨に吸収されたカルシウムが骨と同化しやすくするための運動(散歩、ウォーキング、縄跳び、ジョギングといった、立位で体重がかかる要素が必要)の励行です。 特に、ビタミンDは皮下脂肪が多いと、せっかく合成されても、皮下脂肪に溶けてしまい使われにくくなることを防止しえます。

 

 

ビタミンDの多い食材

 

  食材            ビタミンD(単位 ㎍)

あんこうのキモ(生)枚)       110.0

きくらげ(乾燥)         85.4

カワハギ(開き干し)       69.0  

しらす干し(半生)                61.0

        マイワシ(みりん干し)     53.0

焼き鮭                 39.4

         マイワシ(生)         32.0

         サンマ             14.9  

マガレイ                                                 13.0

乾燥シイタケ               12.7

     卵黄               5.9

 

その他マイタケ(干しマイタケ6g中に0.8㎍)、エノキといったキノコ類にも多いです。特にキノコ類は天日干しすると、ビタミンDが増えること、知られています。

 

 

出典:日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要