厚生労働省は3月30日、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法が禁止している妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取り扱いに関して、運用上の解釈を具体的に示したQ&Aをホームページ上で公開しました。厚生労働省では2014年10月に示された最高裁判決を受けて、妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取り扱いに関する解釈通達を改め、本年1月23日に発出しています。
今回公表されたQ&Aはこの通達内容を踏まえたもので、原則として、妊娠・出産・育休等の終了から1年以内に不利益取り扱いがなされた場合は、これらの自由を「契機として」いると判断することとしています。少子高齢化社会対応においてもプロフェッショナル産業医で知られる合同会社パラゴンが、主な回答を紹介します。
問2 妊娠・出産・育児休業等を「契機として」いても、法違反ではないとされる「例外」の1つ目として、『業務上の必要性から不利益取扱いをせざるを得ず、業務上の必要性が、当該不利益取扱いにより受ける影響を上回ると認められる特段の事情が存在するとき』とされている。 具体的に、どのような場合であれば「特段の事情が存在」するものとして、違法でないと言えるのか。 (答) 1 「特段の事情が存在」するものとして違法でないと言い得るのは、 (1)「業務上の必要性」から不利益取扱いをせざるを得ない状況であり、かつ、 (2)「業務上の必要性」が、不利益取扱いにより受ける影響(※)を上回る場合である。 (※不利益取扱いや、不利益取扱いの契機となった事由に、有利な影響がある場合(例:本人の意向に沿った業務負担の軽減等)は、それも加味した影響) この場合は、妊娠・出産・育児休業等を「契機として」いても、法が禁止している妊娠・出産・育児休業等を「理由とする」不利益取扱いではないと解される。 2 上記の(1)(「業務上の必要性」から不利益取扱いをせざるを得ない状況であるか)については、例えば、経営状況(業績悪化等)や本人の能力不足等を理由とする場合、以下の事項等を勘案して判断する。 (1) 経営状況(業績悪化等)を理由とする場合 ① 事業主側の状況(職場の組織・業務態勢・人員配置の状況) ・ 債務超過や赤字の累積など不利益取扱いをせざるを得ない事情が生じているか ・ 不利益取扱いを回避する真摯かつ合理的な努力(他部門への配置転換等)がなされたか ② 労働者側の状況(知識・経験等) ・ 不利益取扱いが行われる人の選定が妥当か(職務経験等による客観的・合理的基準による公正な選定か) (2) 本人の能力不足・成績不良・態度不良等を理由とする場合