「名ばかり産業医」⑧|新たな化学物質管理と産業医の役割
トップページ > 「名ばかり産業医」⑧|新たな化学物質管理と産業医の役割

「名ばかり産業医」⑧|新たな化学物質管理と産業医の役割

2024年04月06日(土)1:57 PM

リスクアセスメント実施義務制定の背景

2014年のことですから、2024年現在の今からすると10年前の6月に労働安全衛生法が改正されました。
具体的には、640種類の有危険有害性&安全データーシート(SDS)交付対象化学物質(「通知対象物」)に対してリスクアセスメント(RA)の実施が義務付けられました。

その法改正のきっかけは2012年の印刷会社での胆管がん11名発症(うち6人死亡)事故でした。どうして胆管がんに罹患したかというと、「この溶剤は有機溶剤中毒予防規則(有機則)の規制対象には該当しません」という、1,2-ジクロロプロパンを使った洗浄剤を、フロン系洗浄剤の代替として使用していたことでした。

有機則の規制対象ではないということを、危険有害性はないものと誤解し、そして有機溶剤に違いはないのに、窓もなく、換気装置もなく、更には防毒マスクの装着指示もない中作業に労働者は従事させられていた(事業者は従事させていた)実際に世間は衝撃を受けたわけでした。

新たな化学物質管理とは

<更に>2022年より新たな化学物質規制が始まりました。そこでは事業者義務として労働者に対するRA対象物に曝露される濃度の低減措置が課されました




出典:厚生労働省  本改正の概要.労働安全衛生法の新たな化学物質規制 [PDF:765KB]



ここにある「リスクアセスメント対象物に曝露される濃度の低減措置」を具体的に、事業者が実行する為には、そもそも、労働者が従事している仕事や作業内容に隠れている危険有害性や危険作業方法、その内容を産業医が、労働安全衛生法によって課せられた誠実義務に沿って、そしてその専門性に立脚した職務である「職場巡視」(労働安全衛生規則第15条)を実施する際、個別具体的に指摘していく必要があります。



ここで当「名ばかり産業医」シリーズ① において、「コンプライアンス順守を意識した」ある小説があることを紹介しました。

それは 「健康経営2.0」という題目の、主人公は 名義貸し産業医による小説でした。その世界での 「安全第一」のフルスペルは「安全(第二でIPOや法人を株価レーマン方式で高く売り抜ける為には今の利幅向上が)第一」と「リデザイン」されていました。当初から「コンプライアンス遵守を意識した」との記載から、遵法精神は元からなく、個別具体的に法的要件の定義や整備を尽くすことは為していない世界が描かれていました。そのような小説の世界の話を真に受けた事業者や事業主、企業が現実世界でもあるとします。とても今回の、化学物質への理解を高めることを目的とした、そして自律的な管理を基本とする日本国の厚生労働行政とは相容れません。つまりは自主管理は元から為されないことは容易に想像しえます。



化学物質管理者の選任や保護具着用管理者の選任の義務化が2024年4月1日から施行されたので、

2023年度のうちまでに、

衛生委員会で議題を出す権限(対する帰責性)や調査審議権を持つ産業医は、RAの対象物質に曝露される濃度を低減するよう提言を行う必要がありました。しかし実際には実施してきていないことより、その産業医を選任した事業主責任は果たされることも、尽くされることもない現実があるものとの想像は容易になしえます。

対して2024年4月より 労働災害の発生またはそのおそれのある事業場について、労働基準監督署長が、その事業場で化学物質の管理が適切に行われていない疑いがあると判断した場合は、事業場の事業者に対し、改善を指示することができるようになりました。



それは当然です。労働者をまたもやがんで死亡させてしまうことになっては大変です。生産年齢人口減の日本。がんで稀少な労働力を亡くす一味の方が「がん」です。

それは
有機則の規制対象ではないということを、危険有害性はないものと誤解
し、そして有機溶剤に違いはないのに、窓もなく、換気装置もなく、更には防毒マスクの装着指示もない中作業に労働者は従事させられていた(事業者は従事させていた)実際と似たようなことが小説で描かれていました。具体的には、産業医の任務を保健師が担うことができると、勝手に誤解した事業者は、保健師が、産業医の印を、その医師ではなく代わりに保健師らが押すことにも何ら不思議さを感じない世界が描かれていました。




産業医が職場巡視をしたという名目の報告書や、衛生委員会の議事録に出席したとの外形を与えるような「名ばかり産業医」の実態は空想小説の中だけであって欲しいと希求します。健康経営研究会の健康経営2.0『未来を築く、健康経営』とは似て非なる「健康経営2.0」も現実にあるようです。

 

 

閑話休題


法治国家を荒廃させようという勢力を放置させないために、厚生労働省は以下も設けています。

厚生労働省:『「医療・介護・保育」求人者向け特別相談窓口』



「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度 受託運営事務局」を担っている一般社団法人日本人材紹介事業協会 【略称=人材協】 の認定制度に関するお問い合わせ・ご意見、認定事業者に関する苦情の受付の対応 

参考:「名ばかり産業医」⑥|厚生労働省:特別相談窓口設置@健康経営2.0

 

いわゆるメリット制の導入

他方、信賞必罰よろしく、いわゆる「メリット制」も導入されています。

 

そんな中、メンタル産業医の命名者が創設した合同会社パラゴン(東京都港区)が紹介する医師は、以上のような新たな化学物質管理に対応できるよう、以下を実施してきております。

 

作業主任者技能講習会講師

自主的・自律的な化学物質管理に対するリスクアセスメントやリスクコントロール方法を共に検討できるように、以下の作業主任者技能講習会の講師を担当しております。

・千葉安全教育センター:特定化学物質・四アルキル鉛作業主任者

・(一財)日本産業技能教習協会:酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者

・(一社)企業環境リスク解決機構:金属アーク溶接等限定作業主任者



«   |   »