損保労連機関誌「GENKI」第151号|メンタル産業医学創設者の文章掲載
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損保労連機関誌「GENKI」第151号|メンタル産業医学創設者の文章掲載

2021年06月30日(水)11:01 PM

損保労連機関誌 GENKI第151号 特集 「長時間労働につながる商習慣の見直し」シンポジウムを開催しました に
メンタル産業医学の創設者として知られる合同会社パラゴン(東京都港区)代表社員の
「コロナ禍や熱中症対応も可能なメンタルヘルス支援とは~成幸力の向上~」が
「シリーズ Let‘s 職場環境改善!vol.15」にて掲載されました。



出典:損害保険労働組合連合会.GENKI第151号

 

メンタル産業医学創始者によるコロナ禍や熱中症対応も可能なメンタルヘルス支援とは ~成幸力の向上~

 

【はじめに】


コロナ禍下、医療従事者に次いでワクチン接種の優先対象者とされた高齢者や「基礎疾患」※ありとされた方々は、「そういえば、熱中症になりやすい方々と一緒!」と気が付いた方、いませんでしょうか。

※主にBMI30以上の体重を誇る方(BMIは体重を身長のメートル表示の二乗で割ると求まる。BMI30とは、身長160センチの方は76.8キロ、170センチの人は86.7キロに相応)、喫煙や睡眠時無呼吸症候群含めた慢性呼吸器障害、治療中の糖尿病患者、高血圧罹患者等 


年齢によって体力が衰弱化するか、持病や生活習慣にて体力が低下する方々は、暑熱という物理的因子にも、ウイルスという生物的因子にも抵抗できずに体内の安定性(恒常性)が破綻してしまうわけです。

同じように、メンタルヘルス(精神・心理面での健康度、ウェルネス度)が不調となり、いわゆるうつ病を筆頭としたメンタル関連疾患にて休職を余儀なくされた社員を思い出してもらうと、どちらかというと、精悍で、身体を鍛え上げた方は入っておらず、どちらかというといわゆる「メタボ」・・・朝食を摂っていなかったり、運動不足だったり、生活習慣に課題がある方、多く思い出しませんでしょうか。
そうなのです。「メタボ」になるとうつ病になるリスクが2.2倍増加することが証明されたのは15年も前。体力の衰弱化や持病、生活習慣にて体力が低下した末にメンタルヘルスに変調を来すこと、読書の皆様の周囲にも多く含まれ続けている現実があるのです。


【サバイバルの秘訣は「早寝・早起き・朝ご飯」と プラス・・・】



ある「革新を実現に」という標語を掲げるコンサルタント会社の産業医をしていたとき、厳しい労働環境を長年生き抜き、日本人初のグローバル組織のボードメンバーになった当時の会長に、単刀直入に成功の秘訣を確認したことがありました。すると「早寝・早起き・朝ご飯」と「休日のゴルフ」を挙げられました。おりしも私が産まれた1969年に大学を卒業したのち、2004年までの35年、体力の衰弱化を防止し、良い生活習慣を確立し続けることで、成功を収めていたこと知りました。その後から今日まで筆者は、この2点を科学的に解明かつ、それら健康度向上が「成幸力」という「成功」と「幸福」を導くとの支援を展開しています。今回はそのさわりを紹介します。

【「早寝・早起き・朝ご飯」に含まれる健康医学的成功要素とは】


①「早寝・早起き」の医学的効果の紹介 「早寝:早起き」には、「自律神経」という、我々のからだの安定性を維持する神経への負担がかかりません。そもそも日の出と共に人類は目覚め、日の入りと共に食料確保活動を止め、就寝に備えたという太古からの「恒常性」維持に合わせて体温やホルモン、インターロイキンといった体内での情報・刺激伝達系や栄養代謝系を整備しあげてきた進化発達を遂げているからです。

②「朝ご飯」の効果:いわゆる心身症防止作用が 朝食摂取は、「自律神経」の中で「交感神経」というアクセル役を担う神経を活性化します。また、神経細胞の集合体である大脳が正常に働くためには、消化吸収された栄養が不可欠です。朝食を摂らない空腹時間が長くなるとガス欠の車となり、神経細胞は、ノートパソコンのスタミナモードよろしく、大脳の働きに制限を加え、栄養不足による死滅を防止しようとします。それが数か月続くと、いよいよ細胞が死に絶えるといううつ病に陥ってしまいかねません。不規則な食事や偏った栄養摂取では、生活習慣病が増加することから、2005年に「食育基本法」が制定され、文部科学省は「食育」として、農林水産省と共に幼少時からの健康確保事業を推進しています。しかしながら「平成22年度度全国学力・学習状況調査」(文科省)では、義務教育レベルから欠食や偏食の影響として学力低下や自覚的ストレスやうつ症状まで把握されています。生活習慣の中に身体の「恒常性」が確立しえていないと、この法律に違反するだけではなく、心身の不安定化に伴う様々な症状(世にいう「心身症」)が露呈しやすくなります。それを増長しやすいのが「裁量労働制」です。[残業→寝る前のドカ食い→遅寝→(就寝中の消化作業に伴って生じる熟睡不良)→遅起き→消化不良から朝食不摂食]といった負の連鎖性が「生理」という「恒常性」を破綻させ、結果として胃潰瘍や潰瘍性大腸炎といった心因性消化器疾患の増加や抑うつ状態の発生という、合わせて「心身症」という心身の変調、つまりは心身双方における生活習慣病という「病理」構造を形成してしまうことが複数の産業医の間で確認されています。

③熱中症対策にもなる朝ご飯とは 「洋食と和食、どちらが健康食でしょうか?」との問いを間違える人はいません。そうなのです。和食は健康食なのですが、他方の洋食は健康食ではないということまで気が付いている人は少数派です。その主な理由は、米食だと食後の血糖値の増加が緩やかなことから神経細胞への負荷が少なく、かつ持続的に血糖値は上昇することより神経細胞は疲労しにくいので「農耕民族」の主食たるゆえんです。と加えて味噌汁を飲みます。味噌は酵素という麹で作られています。GABAという神経を穏やかにする効果がある栄養素が含まれるのみならず、腸内で免疫細胞を賦活化させ、皮膚のシワやたるみで自覚される酸化作用(サビ付き)に抵抗させる効果があること、女性誌では「腸活」や「腸能力」増加作用があると紹介されていること、目にされた方、おいでかと。

なお煮干しで出汁をとった、海藻入り味噌汁にてカルシウム摂取にて、

イ:熱中症予防(いわゆるスポーツ飲料1リットル分の電解質補給が可能)

ロ:気持ちを落ち着かせる効果あるカルシウムも摂取可能(コロナうつ対策にもなる)

ハ:海藻の中のカリウムによって高血圧防止にもなる。


以上より、出勤前の味噌汁1杯が、熱中症防止の命綱だと産業医先で必ず取り上げてもらっています。実際、運送会社では熱中症発症者がゼロになりました。 他方パンやラーメンといった小麦を使った食事は、食後の血糖値の増加は急峻、持続力はなく神経細胞への負担が大きいのみならず、バターやラードといった脂肪分も一緒に摂食しやすいことから、動脈硬化という「血管の欠陥化」が促されやすいです。


【運動習慣確立による強壮効果】


① 運動生理学的解説
・運動には身体を構成する最小単位である細胞にある、ミトコンドリアという原動機や発電機のような働きをする細胞内小器官の能力を高める作用があります。従って運動をすると同じ負荷をかけても疲れにくくなるという耐性が向上しますし、「やればできる」という、掛値なしの自信が涵養されます。

・運動に伴って分泌される筋肉由来内分泌因子(マイオカイン)には、神経細胞そのものの活動や大脳内の情報の統合制御作用を向上させる作用があることが知られています。それらが相まって運動を実施している間は、仕事の嫌なことを忘れることができます。運動後、シャワーや入浴にて格別な爽快感を味わうことでリフレッシュできます。更には熟睡効果も感じられているかと。

・運動は30分、続けてやらないと効果ないとか毎日しないと効果ないと思い込んでいる方、多くいますが、これらは今では否定されています。30分も続けてしなくて、土日にまとめて実施しても効果があること証明されています。

② 電車内で簡単にできる運動例(治療中の方は主治医に相談すると共に、腕・肩・頚・腰・足に痛みがある方は整形外科医にかかってから始めてください) ・コロナ禍にて在宅が推奨されていながらの通勤を余儀なくされている方におかれましたは、交通費支給があることより、「お金も貰える体幹トレーニングの機会」と捉え直すことが精神衛生上からも良い思考選択です。これは「認知行動療法」という、うつ状態の方に治療として提供されている、思考のより良い指向性への方向転換とその試行継続でもあります。

・バッグを手に持って、軽く後方に持ち上げたり、つかまり棒使ったりすることで得られる二の腕ほっそり運動、車内の動画でご覧になった方、おいでかと。

・つり革を使った懸垂運動や、足幅を肩幅くらいに広めにとり、つり革を握ったまま、掴む握力を弱めることで、身体を不安定にすることで得られる体幹トレーニングもあります。 ③ 社内でできる運動例(実施には上司に相談の上取り組まれてください)

・キヤノン社のように会議は立ってするようにすることで、運動効果と短時間で会議を切り上げる業務合理化を確立している企業もあります。

・キヤノン電子社のように、工場内の歩行速度が遅いと、ベートーベンの交響曲「運命」が流れることで、早歩きを意識させる企業もあります。

・NTT各社のように社内駅伝を開催することで、日ごろからの健康度高揚を企図している会社もあります。 ④ つまづき防止に 高齢社会の進展に伴って、労働者の平均年齢向上に伴ってのつまづきや転倒災害が増加しているため、以下にて確認できますが、簡易にできる運動を紹介しています。

参考サイト:「アクティブ体操®」を健康経営に長けた産業医が紹介|関節痛~転倒災害防止効果までも



⑤ 階段を使った運動(ビルのセキュリティ部門に相談の上、実施ください) 階段を一段上がるだけで、ダンベルを片手巻き上げすることの5回分の効果があります。エレベータを使う方も、1階分下の階でおり、本来の目的階へと階段を使うだけでも約20段×5回より、ダンベル体操約百回分の効果があります。ダンベルを100回も片手巻き上げすることは難しくても、階段を1階分余計に歩くことは、そう難しい話ではありません。



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