健康経営に長けたメンタル産業医で知られる合同会社パラゴン(東京都港区)が、健康経営を実践する基盤として、顧問や契約している産業医先に説いていることがあります。それは労働経済における人的資源管理、人財開発だと。そもそも昭和時代までは、資本で製造機器を購入し、大量生産を通じて製造原価を下げさえしたら、旺盛な需要もあった時代です。売れに売れました。そのような1970年第まではそれで済みました。ビル・ゲイツが象徴の、第3次産業革命が、その成功体験を過去のものとしました。結果、生産性の拡大と労働者の減少が比例する社会が到来しました。更に第4次産業革命によって労働がIT(情報処理)に置換されました。今や人件費より輸送コストの低減が必要な社会となり、そのために生産工場は低賃金国から自国に戻されることになりました。BRICsという用語が、成長セクターだと1990年大はもてはやされましたが、それらの国々の株価やGDPの進展をみたら、幻想だったことが理解可能です。
そんな中、うかうかしていた日本も、コロナ禍でようやく本腰を入れる姿勢がみられるようになってきました。健康経営をより確実にするために、今回はその特徴的な制度を紹介します。
2021年の職業能力開発の在り方
中小企業も2021年は事業再構築補助金を用いて、労働経済やコロナ禍に伴うデジタルトランスフォーメーションといった事業環境の変化に対して「事業転換」にて対応を遂げていくことでしょう。
では、就労している労働者版は何かというと「転職」になります。ただここでの「転職」は、これまで経験を重ねてきた、高校や大学で習ってきたような、もしくは元々就労していた仕事においてOJTを通じて培ってきた職業能力だけで対応できた、いわば就労先の変更を示しているのではありません。これまでの職業種や業態から別の職業種へ移るという真の意味での「転職」です。
例えると、外科医が赤十字病院の勤務医から長期療養施設の管理医になるのは就労先の変更です。真の意味での「転職」は、すし職人になるようなものです。当然、従前の職業で培った知識やスキル(職業能力)だけで新たな職業に対処することは困難です。
当社 健康経営シリーズ第30回にてお伝えしました「職業能力開発」が必要となり、その為に国は「教育訓練給付制度」という支援を提供しています。
教育訓練給付制度とは
学び直しを通じたスキルアップを目指す場合、障壁になるのが自己投資に必要な時間と費用確保です。育児や就労との両立に関しては当社作成の参考サイトをご覧ください。
自己投資という投下資本の増強に対する行政支援として「教育訓練給付金制度」があり、年々拡充されています。
この「教育訓練給付制度」とは、雇用保険加入者が利用できる資格取得などを支援する仕組みのことで、厚生労働省が指定した大学、大学院、専門学校、資格学校などの講座修了や資格取得に伴って、要した学費等の一部を将来、還付する仕組みです。以前から「一般教育訓練給付」はあり、日商簿記やTOEICといった資格取得に向けて活用された方、おいでかと。この「一般教育訓練給付」は、費用の20%までで上限額は10万円です。
ここにある「特定一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」は受講前に「訓練前キャリアコンサルティング」を受ける必要があります。
専門実践教育訓練
- 特に労働者の中長期的キャリア形成に資する教育訓練が対象。
- 受講費用の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6か月ごとに支給。
- 資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の20%(年間上限16万円)が追加支給。
※令和6年10月以降に開講する講座の場合、上記の追加支給の要件を満たしたうえで、訓練修了後の賃金が受講開始前と比較して5%以上上昇した場合は、受講費用の10%(年間上限8万円)が追加支給。
- なお、失業状態にある方が初めて専門実践教育訓練(通信制、夜間制を除く)を受講する場合、受講開始時に45歳未満であるなど一定の要件を満たせば、別途、教育訓練支援給付金が支給(給付率は上記と異なりますので詳細はリーフレット(ご案内)等をご確認ください)。
特定一般教育訓練
- 特に労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象。
- 受講費用の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給。
※令和6年10月以降に開講する講座の場合、上記に加え、資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の10%(上限5万円)が追加支給。
一般教育訓練
- その他の雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練が対象。
- 受講費用の20%(上限10万円)が訓練修了後に支給。
これらは働く人が主体的に、中長期的にわたってのキャリア開発や能力増強を志す場合の支援制度です。その志の背景にある概念が「キャリア・アンカー」でしょう。合同会社パラゴン代表が監修した書籍においては、一級キャリアコンサルティング技能士である上之園洋一氏が記述しています。
出典:金剛出版.キャリアコンサルティングに活かせる 働きやすい職場づくりのヒント;第5章 組織内キャリア理論とキャリアききへの予防的対策と実践
その「キャリア・アンカー」をキャリアコンサルタントが把握の上で、必要に応じて「専門実践教育訓練」を紹介することがあります。
この「専門実践教育訓練」とは、厚生労働大臣の指定を受け、専門実践教育訓練の教育訓練給付金の対象となっている訓練です。その訓練への受講を一定の条件を満たす雇用保険の被保険者(在職者)または被保険者であった方(離職者)を「カウンセリー」としてにキャリアコンサルタントが、いわばガイドやコーチするものと捉えてください。そのカウンセリーが厚生労働大臣の指定する「専門実践教育訓練」を受講・修了した場合、ご自身で教育訓練施設に支払った教育訓練経費の一定割合額(上限あり)を、ハローワーク(公共職業安定所)に申請すると、この「専門実践教育訓練給付金」が支給されます。
参考:自律的自立を目指す「プロティアン・キャリア」とは
「プロティアン・キャリア」はダグラス・ホール提唱したキャリア理論で変幻自在のキャリア(Protean Career)と名付けたものです。
組織に埋没すると、生き甲斐は会社から与えられた任務遂行が上手く進むことになりがちですが、「プロティアン・キャリア」では、自分の生き甲斐は市場を見渡しながら自分で決めるという自立的自律といった指向性を示します。
組織内でしか通用しない社内政治、社内力学が強く働く重力点という位置を確固たるものにするキャリアパスや 就労能力を高めても、社外や社会で果たして通用する資産や財産なのか、試算するという棚卸しが必要ではないでしょうか。組織内キャリアを金ピカバッジにしても、社外や社会からしたら金メッキバッジ。
2021年1月元日付け日経新聞朝刊で、ますますジョブ型雇用導入が拡大されること、『展望2021 やる気刺激「働きがい改革」』にて取り上げられました。世の働く労働者全員が、キャリアアンカーに基づいた、その人がその人らしく働ける職業や職種をキャリアカウンセリングを通じて選好することにんり、キャリアコンサルタントによっていきいきと活躍できる職場が構築しえたら、楽しく愉快な創造性あふれる働き方が叶うことになります。そのような労働環境が構築しえたら、そもそも職場不適応や適応障がい、さらには過重労働感に伴う抑うつ状態なぞ出さなくて済むようになると、「健康経営」の本質を説いたのが、参考6で紹介している「働きやすい職場づくりのヒント」にて「第6章ハイパフォーマンスを具現化する企業変革事例」を書かれた 故樋口保隆氏でした。彼がその思いを伝えてきた場が「実践キャリア勉強会」。