産業医による健康経営対策㉘|リスキリングに向けた教育訓練給付金制度の拡充
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産業医による健康経営対策㉘|リスキリングに向けた教育訓練給付金制度の拡充

2020年12月28日(月)12:58 PM

健康経営に長けたメンタル産業医で知られる合同会社パラゴン(東京都港区)が、健康経営を実践する基盤として、顧問や契約している産業医先に説いていることがあります。それは労働経済における人的資源管理、人財開発だと。そもそも昭和時代までは、資本で製造機器を購入し、大量生産を通じて製造原価を下げさえしたら、旺盛な需要もあった時代です。売れに売れました。そのような1970年第まではそれで済みました。ビル・ゲイツが象徴の、第3次産業革命が、その成功体験を過去のものとしました。結果、生産性の拡大と労働者の減少が比例する社会が到来しました。更に第4次産業革命によって労働がIT(情報処理)に置換されました。今や人件費より輸送コストの低減が必要な社会となり、そのために生産工場は低賃金国から自国に戻されることになりました。BRICsという用語が、成長セクターだと1990年大はもてはやされましたが、それらの国々の株価やGDPの進展をみたら、幻想だったことが理解可能です。

参考サイト:第3次産業革命を定義する

そんな中、うかうかしていた日本も、コロナ禍でようやく本腰を入れる姿勢がみられるようになってきました。健康経営をより確実にするために、今回はその特徴的な制度を紹介します。

2021年の職業能力開発の在り方

中小企業も2021年は事業再構築補助金を用いて、労働経済やコロナ禍に伴うデジタルトランスフォーメーションといった事業環境の変化に対して「事業転換」にて対応を遂げていくことでしょう。

では、就労している労働者版は何かというと「転職」になります。ただここでの「転職」は、これまで経験を重ねてきた、高校や大学で習ってきたような、もしくは元々就労していた仕事においてOJTを通じて培ってきた職業能力だけで対応できた、いわば就労先の変更を示しているのではありません。これまでの職業種や業態から別の職業種へ移るという真の意味での「転職」です。

例えると、外科医が赤十字病院の勤務医から長期療養施設の管理医になるのは就労先の変更です。真の意味での「転職」は、すし職人になるようなものです。当然、従前の職業で培った知識やスキル(職業能力)だけで新たな職業に対処することは困難です。

当社 健康経営シリーズ第30回にてお伝えしました「職業能力開発」が必要となり、その為に国は「教育訓練給付制度」という支援を提供しています。


教育訓練給付制度とは

学び直しを通じたスキルアップを目指す場合、障壁になるのが自己投資に必要な時間と費用確保です。育児や就労との両立に関しては当社作成の参考サイトをご覧ください。

自己投資という投下資本の増強に対する行政支援として「教育訓練給付金制度」があり、最近、拡充されています。

この「教育訓練給付制度」とは、雇用保険加入者が利用できる資格取得などを支援する仕組みのことで、厚生労働省が指定した大学、大学院、専門学校、資格学校などの講座修了や資格取得に伴って、要した学費等の一部を将来、還付する仕組みです。以前から「一般教育訓練給付」はあり、日商簿記やTOEICといった資格取得に向けて活用された方、おいでかと。この「一般教育訓練給付」は、費用の20%までで上限額は10万円です。

出典:厚生労働省 教育訓練給付制度

 

ここにある「特定一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」は受講前に「訓練前キャリアコンサルティング」を受ける必要があります。

 

特定一般教育訓練給付金とは

社会保険労務士や税理士、一定レベル以上のIT(情報技術)関連資格取得に対応する講座の受講支援制度です。再就職を速やかにし、また、早期のキャリア形成に資する教育訓練を受けた場合に、その受講のために支払った費用の40%(上限20万円)を支給してくれます。職業に関して必要とされる知識や技能が変化し、多様な職業能力開発が求められる中で労働者の主体的な能力開発の取組をキャリアコンサルタントが支援し、もって雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とする雇用保険の給付制度の1つと位置付けられています。

一定の条件を満たす雇用保険の被保険者(在職者)または、被保険者であった方(離職者)が、厚生労働大臣の指定する特定一般教育訓練を受講したい場合の手続きと、受講修了した場合、原則1か月以内に、自身で教育訓練施設に対して支払った教育訓練経費に対して申請することでハローワーク(公共職業安定所)がキャッシュバックしてくれるようになっています。

<補足>ここでの被保険者とは、一般被保険者及び高年齢被保険者を指します。

出典:厚生労働省 特定一般教育訓練の「教育訓練給付金」に関する支給申請手続きのご案内


指定されている講座は以下から確認が可能です。

 

参考サイト:厚生労働省.現在指定されている講座について

 

専門実践教育訓練給付金とは

法科大学院や経営学修士(MBA)といった専門職大学院、看護師や保育士の養成課程、文部科学省が認定した「職業実践力育成プログラム」という大学で受講が可能な講座も対象になります。

給付額は費用の50%(上限は年40万円)で、最長4年間の受講に対して受給可能です。なお資格取得後、1年以内に就職するなどしたら、給付費用が70%(上限は年あたり56万円、4年で224万円も!)まで引き上げられます。

これらを対象に、働く人が主体的に、中長期的にわたってのキャリア開発や能力増強を志す場合の支援制度です。その志の背景にある概念が「キャリア・アンカー」でしょう。合同会社パラゴン代表が監修した書籍においては、一級キャリアコンサルティング技能士である上之園洋一氏が記述しています。

出典:金剛出版.キャリアコンサルティングに活かせる 働きやすい職場づくりのヒント;第5章 組織内キャリア理論とキャリアききへの予防的対策と実践

その「キャリア・アンカー」をキャリアコンサルタントが把握の上で、必要に応じて「専門実践教育訓練」を紹介することがあります
この「専門実践教育訓練」とは、厚生労働大臣の指定を受け、専門実践教育訓練の教育訓練給付金の対象となっている訓練です。その訓練への受講を一定の条件を満たす雇用保険の被保険者(在職者)または被保険者であった方(離職者)を「カウンセリー」としてにキャリアコンサルタントが、いわばガイドやコーチするものと捉えてください。そのカウンセリーが厚生労働大臣の指定する「専門実践教育訓練」を受講・修了した場合、ご自身で教育訓練施設に支払った教育訓練経費の一定割合額(上限あり)を、ハローワーク(公共職業安定所)に申請すると、この「専門実践教育訓練給付金」が支給されます。

出典:厚生労働省.専門門実践教育訓練給付金、教育訓練支援給付金についてのリーフレット

 



 

参考:自律的自立を目指す「プロティアン・キャリア」とは

「プロティアン・キャリア」はダグラス・ホール提唱したキャリア理論で変幻自在のキャリア(Protean Career)と名付けたものです。

組織に埋没すると、生き甲斐は会社から与えられた任務遂行が上手く進むことになりがちですが、「プロティアン・キャリア」では、自分の生き甲斐は市場を見渡しながら自分で決めるという自立的自律といった指向性を示します。

組織内でしか通用しない社内政治、社内力学が強く働く重力点という位置を確固たるものにするキャリアパスや 就労能力を高めても、社外や社会で果たして通用する資産や財産なのか、試算するという棚卸しが必要ではないでしょうか。組織内キャリアを金ピカバッジにしても、社外や社会からしたら金メッキバッジ。

 

出典:日本の人事部|プロティアン・キャリア

 


2021年1月元日付け日経新聞朝刊で、ますますジョブ型雇用導入が拡大されること、『展望2021 やる気刺激「働きがい改革」』にて取り上げられました。世の働く労働者全員が、キャリアアンカーに基づいた、その人がその人らしく働ける職業や職種をキャリアカウンセリングを通じて選好することにんり、キャリアコンサルタントによっていきいきと活躍できる職場が構築しえたら、楽しく愉快な創造性あふれる働き方が叶うことになります。そのような労働環境が構築しえたら、そもそも職場不適応や適応障がい、さらには過重労働感に伴う抑うつ状態なぞ出さなくて済むようになると、「健康経営」の本質を説いたのが、参考6で紹介している働きやすい職場づくりのヒントにて「第6章ハイパフォーマンスを具現化する企業変革事例」を書かれた 故樋口保隆氏でした。彼がその思いを伝えてきた場が「実践キャリア勉強会」。彼亡きあととはいえ、遺志と継いだ方々が、第77回実践キャリア勉強会(主催:実践キャリア勉強会 , 日時:2021年1月31日(日)13:30~15:00)で取り上げました。

テーマ:大きな社会変化の中で求められるプロティアンキャリアについて

講師:一般社団法人プロティアンキャリア協会代表理事 有山徹さん

 

事業再構築補助金とは

中小企業庁より事業の再構築に挑戦する事業者のみなさまへと題して、企業の思い切った事業再構築を支援する事業再構築促進事業の概要案内がだされています。

新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す、以下の要件をすべて満たす企業・団体等の新たな挑戦を支援するための補助金です。

1.申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業等。

2.事業計画を認定支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む中小企業等。

3.補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成。

2020年度3次補正予算から実施しています。


事業再構築補助金事務局コールセンター

受付時間 9時~18時(日曜・祝日を除く) 電話番号 <ナビダイヤル> 0570-012-088 < IP電話用 > 03-4216-4080


GビズIDヘルプデスク

受付時間 9時~17時(土曜・日曜・祝日を除く)

電話番号 <ナビダイヤル>0570-023-797



出典:経済産業省 企業の思い切った事業再構築を支援 



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