執筆:櫻澤博文
2017年7月4日に行われた厚生労働省という労働経済を掌る組織の変革の一つとして、「人材開発統括官」が設置されました。その実施している検討会の中に「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会」があります。
人材開発と労働者のメンタルヘルスとは表裏一体で、人財開発、人的資源管理を通じたメンタル産業医活動で知られる合同会社パラゴン(本社:東京都港区)代表として、健康経営の具現化に向けて金剛出版刊「キャリアコンサルティングに活かせる 働きやすい職場づくりのヒント」を監修執筆することになりました。巻頭言でこの「人材開発統括官」についても記載しているように。
この「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会」は「職業能力開発促進法」の改正や次期の職業能力開発基本計画の骨格が議論され、報告書が発表されました以下の参考サイトで取り上げたように、スキルアップを目指したリカレント教育という学びなおしの機会も拡充されました。
参考サイト:産業医による健康経営対策㉘|第4次産業革命進展中:事業再構築補助金、拡大充実されつつある教育訓練給付金制度
それらの背景や概要を産業医も知っていた方がよいので紹介します。
出典:厚生労働省.「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会報告書」を公表します.
目指すべき社会像
① 新型コロナウイルス感染症の存在を前提とした職業訓練の構築とともに、Society5.0の実現に向けた社会実装や第4次産業革命 (IoT、AI、ビッグデータ等)に伴う技術革新の進展等に対応したデジタル利活用人材の育成が進み、国際競争力の維持・向上を実 現している社会
② 人生100年時代の到来による職業人生の長期化を見据え、労働者が在職中・離職中を問わず、若年のうちから主体的に自らの 職業能力開発を継続的に行い、自身のライフステージに応じて、希望する職場で活躍し続けることができる社会
③ 将来的に日本型雇用慣行の変化やいわゆる「ジョブ型雇用」の動きが広がる中で、職業能力評価制度やジョブ・カード等の活用等 が進み、労働市場インフラの機能強化が図られ、労働者一人ひとりが希望するライフスタイルを獲得しやすくなった社会
④ 特別な配慮が必要な人々が必要な訓練機会を確保でき、就職後もキャリア形成しやすい社会
⑤ デジタル技術の活用や技能五輪の誘致等を通じ、我が国に蓄積された優れた技能が世代間で継承され、活かされている社会
<解説>
「Society5.0」についてはこちらをご覧ください。その実現に向けた人材の育成や「新たな日常」の下での職業訓練の在り方、「労働者の自律的・主体的なキャリア形成支援」(「寄らば大樹の陰」の大樹は、昭和時代にはありました。令和の今、影も形もない)に関する方向性が示されたといえます。
【今後の人材開発政策の基本的な方向性】
・第4次産業革命に対応した職業訓練プログラムの開発やデジタル技術を活用した業務効率化等を行える人材の育成、
・「新たな日常」の下 での産業構造の転換を視野に入れたキャリアチェンジ支援
・あらゆる産業分野で働くすべての労働者に必要とされるITリテラシーの付与の推進
・新型コロナウイルス感染症の存在を前提とした「新たな日常」に対応したオンラインやVR等の活用による職業訓練の充実・質の向上
<解説>
具体的には、以下の4領域が示されました。
第1:労働者の自律的・主体的な キャリア形成支援
・キャリアコンサルティングを利用 しやすい環境整備
・積極的な在職者の職業能力開発 の推進
・民間教育訓練機関による訓練 サービスの質向上等への支援
<解説>
一口にキャリア支援といっても、今後は職業選択におけるマッチング、職業能力開発、中高齢者を対象としたリカレント教育指南といった多種多用なコンサルティングが提供される見通しが立ってきました。それは「働きやすい職場づくりのヒント」が示してきた内容をの発展形です。
第2:労働市場インフラの強化
・能力評価制度の更なる活用、 普及促進
・職業情報の見える化(日本版O-netの活用)
・経歴・プランを明示するジョ ブ・カードの在職中の活用
第3:特別な配慮が必要な方への支援
・就職氷河期世代をはじめ、 長期無業者、ひとり親等へ の長期的・継続的支援
・中高年齢者、在職障害者、 外国人留学生への職業能力 開発・キャリア形成支援
<解説>
社会における公平性、公益性の観点から必要な支援です。
障がい者雇用における「農福連携」のように、縦割り行政を打破する仕組みも構築されている時代です。
第4:技能継承の促進
・デジタル技術を活用した技能 継承
・技能五輪国際大会等による 気運醸成
・学校教育と連携した技能体験 イベントの実施
<補足解説>
そもそもキャリア開発とは「何者になろうとしているのか」、キャリア志向とは「誰にどのような価値を提供とするために、どのような職業能力を開発・発展させていけばよいのか」といえましょう。
世界的にも有名なキャラクターのテーマソングではないですが、
何のために産まれてきて、
何をすると端を楽に、そして愉しくさせるのか・・・
それが働くということなのかもしれません。そのハーモニーで組織としてのレジリエンスは向上していくことでしょう。