男性における特定保健診査と特定保健指導(いわゆるメタボ健診)の効果を高めるには

いわゆるメタボ健診といわれる「特定保健診査」と「特定保健指導」の男性における効果は確認されなかったとの検証結果が示されています。

確かに肥満は心血管障がいに対する有害性ある因子であることは、公衆衛生上に限らず、国民の共有資源である医療に限界がある中、実に大きな課題です。しかしながら肥満と 心血管障がいとの関連性に関して、多くの母数を集めた上で、かつ様々な生活様式を鑑みた上での疫学的検討を十分になしえないまま、腹囲に焦点があたったかのような このメタボ健診。開始されて干支が一周しています。対して以下の疫学的研究結果がJAMA誌に掲載されました。

目的:日本での特定保健診査と特定保健指導の効果を検証。
方法:
研究デザイン:コホート研究
期間と対象:2013年4月から2018年3月に特定保健診査に参加した40〜74歳の男性
     うち85センチ以上の腹囲と共に
血圧、ヘモグロビンA1c、LDLコレステロール といった心血管障がい因子を一つ以上保持するもの 

統計学的検討:回帰分析
介入:腹囲85センチ以上かつ有害因子を一つ以上持つものへは特定保健指導を提供

介入に対して把握した結果系指標:
・1〜4年後の肥満状態(体重、肥満度指数、胴囲)、
・血管障がい因子(血圧、ヘモグロビンA1c、LDLコレステロール)の変化。

結果:74693人の男性(平均[SD]年齢、52.1 [7.8]歳、平均[SD]ベースライン胴囲、86.3 [9.0] cm)のうち、特定保健指導対象群では、統計学的有意差は確認されなかったものの以下の減少が確認されましたた。

体重減(調整後の差:- 0.29 kg; 95%CI、-0.50〜-0.08; P = .005)、
BMI(-0.10; 95%CI、-0.17〜-0.03; P = .008)、
腹囲(-0.34 cm; 95%CI、-0.59〜-0.04; P = .02)

しかしながら特定保健指導を受けた後の効果は時間の経過と共に減弱化し、3〜4年目までには いやば 元の木阿弥に戻っている結果でした。

加えて収縮期血圧、拡張期血圧、ヘモグロビンA1c、LDLコレステロール いずれに対しても、統計学的有意差も減少も確認されませんでした。。

結論:日本人の労働者男性に対する特定保健診査と特定保健指導は、統計学的に有意差のある体重減や、血圧、心血管障がい因子として代表的なLDLコレステロールを減少させるような関連性は確認できませんでした。
つまりは、食事や運動といった生活習慣を改善させることで、将来の心血管障がいを予防するという特定保健診査や特定保健指導の意義は見出せませんでした。

出典:Association of the National Health Guidance Intervention for Obesity and Cardiovascular Risks With Health Outcomes Among Japanese Men.JAMA Intern Med. 2020;180(12):1630-1637. doi:10.1001/jamainternmed.2020.4334

 

なんとまあ

企業が「健康経営」の理念や目的を具現化したいと、特定保健診査や特定保健指導を実施したり、保健師に実行したりすることに、上記の検討からでは、悲しいことに科学的意義は確認し得なかったという結論が導き出されています。

2005年に食育基本法が制定されました。三つ子の魂百まで。食育の大切さが唱えられただけではなく、その第6条にあらゆる機会を介して食育の大切さを理解しなければならないことが国民の義務と課されています。しかしながら就職して20年近く経過した後の40才と、以前の老人保健法での老人の定義を満たす年齢に達してから食生活を含めた生活習慣の是正を促すことに、限界があることはNECでの産業保健師や産業医が検討していたこと思い出しました。実際にNECは30才から介入を行うことでその意義を証し続けています。

なおメンタル産業医の命名者が創設した合同会社パラゴン(東京都港区)は公式には2014年より 極寒な中、風雪に耐えられるような肉体と精神を維持し、老化という酸化によって劣化させない支援を提供してきています。

それは定期健診結果を通じた健康管理やTHPを通じた健康増進でとどめるのではなく、筋トレや有酸素運動を通じた鍛錬にて得られる心身双方に対する強壮と、中医学や栄養学的根拠に基づく栄養素や食材、更には漢方薬成分の摂取行動で構成される健康開発が、健康経営優良法人認定の基盤ともなるからです。

従って2018年に監修執筆した「働きやすい職場づくりのヒント」(金剛出版)の「第11章 健康経営を通じたエイジレス社会におけるQOL向上とは」にて根拠あるフレイル対策や臨床試験を通じて認知機能改善効果がわかってきた各種成分の摂取記載含め、特定保健指導以外の健康開発が求められます。