ストレスチェックは、不調の早期発見だけを目的とする制度ではありません。
大切なのは、メンタルヘルス不調の一次予防です。そのため、職場環境の改善も重要になります。
そこで役立つのが、ストレスチェックの集団分析です。
集団分析では、部署や職場ごとの傾向を調べます。さらに、仕事の負荷や職場の支援状況を把握します。
ただし、実施方法には注意が必要です。特に少人数の部署では、個人情報を守る必要があります。
本記事では、集団分析の仕組みを解説します。また、10人未満の扱いや2027年の改正も紹介します。
解説するのは、合同会社パラゴンの櫻澤博文です。産業医・労働衛生コンサルタントの立場から、実務上の要点を整理します。
ストレスチェックの集団分析とは
集団分析とは、ストレスチェックの結果を職場単位で集計する方法です。
例えば、部署や職種ごとにストレスの傾向を調べます。そのうえで、職場環境の改善に活用します。
分析項目には、次のようなものがあります。
- 仕事の量的な負担
- 仕事の裁量度
- 上司からの支援
- 同僚からの支援
- 仕事の適性や働きがい
- 心身のストレス反応
また、国は「職業性ストレス簡易調査票」を示しています。これを用いる場合は、仕事のストレス判定図も活用できます。
ただし、数値だけで職場の良し悪しは決まりません。業務内容や勤務形態も考慮する必要があります。
集団分析は義務ではなく努力義務
ストレスチェックの実施と集団分析は、法的な位置付けが異なります。
集団分析は、事業者の努力義務です。労働安全衛生規則第52条の14に規定されています。
また、分析結果を踏まえた改善措置も努力義務です。
一方、集団分析の重要性は小さくありません。むしろ、一次予防に役立つ重要な取り組みです。
なぜなら、個人の努力だけでは職場環境を変えられないからです。
例えば、業務量や人員配置に問題がある場合です。本人のセルフケアだけでは解決できません。
そのため、職場全体への働きかけが必要になります。
2027年4月から集団分析の方法が明確化
2027年4月1日から、改正労働安全衛生規則が施行されます。
今回の改正では、集団分析の方法が明確になります。
特定の個人を識別できない方法で実施することが、省令に明記されます。
これは、従来の考え方を明文化する改正です。個人情報保護の基本方針が変わるわけではありません。
したがって、集団分析では個人の特定を防ぐ必要があります。
特に、部署の人数が少ない場合は注意が必要です。
また、分析方法によっては個人を推測できる場合もあります。そのため、結果の提供方法も慎重に検討します。
10人未満の部署で集団分析はできる?
10人未満の集団では、個人が特定されるおそれがあります。
そのため、結果を事業者へ提供する際には制限があります。
原則として、対象者全員の同意が必要です。同意がない場合、事業者は結果の提供を受けられません。
ただし、例外もあります。個人が特定されるおそれのない方法で集計した場合です。
例えば、評価点の総計の平均値を求める方法があります。ただし、分析方法の安全性を個別に確認する必要があります。
また、人数は在籍者数だけで判断しません。実際の有効な受検データ数を確認します。
少人数部署で検討する方法
- 複数部署を統合して分析する
- 職種別など別の集団単位を検討する
- 個人を特定しにくい集計方法を選ぶ
- 結果の提供範囲を適切に制限する
- 実施者と産業保健スタッフで事前に検討する
なお、部署を統合するだけでは十分とは限りません。人数や構成によっては、個人を推測できる場合があるからです。
したがって、分析結果の組合せにも注意が必要です。
集団分析で確認したい職場の課題
集団分析では、職場のストレス要因を整理します。
例えば、仕事の量的負担が高い部署があります。また、上司からの支援が少ない部署もあります。
ただし、これだけで原因は確定しません。
そのため、ほかの情報も確認します。
- 時間外労働の状況
- 年次有給休暇の取得状況
- 休職・復職の発生状況
- 健康診断結果の傾向
- 職場巡視で確認した作業環境
- 管理監督者と労働者の意見
- 産業保健スタッフが把握した共通課題
なお、健康情報の利用には注意が必要です。目的を明確にし、個人情報を適切に保護します。
集団分析の結果だけで管理職を評価しない
集団分析は、管理職を評価するための制度ではありません。
例えば、高ストレス者が多い部署があったとします。しかし、その原因が上司だけにあるとは限りません。
業務量の増加や人員不足が背景にある場合もあります。また、組織改編や顧客対応が影響することもあります。
そのため、数値だけで責任を判断しないことが重要です。
むしろ、改善すべき職場環境を検討する資料として利用します。
さらに、結果の伝え方にも配慮します。部署同士を単純に順位付けする方法は避けるべきです。
集団分析から職場環境改善につなげる方法
集団分析は、結果を確認して終わりではありません。
まず、改善すべき課題を整理します。次に、職場で実行できる対策を検討します。
例えば、次のような改善策があります。
- 繁忙期の業務量を見直す
- 人員配置や役割分担を調整する
- 長時間労働を減らす
- 業務手順を改善する
- 管理職と部下の対話を増やす
- 相談しやすい職場環境を整える
- 管理監督者向けの研修を行う
- 産業保健スタッフとの連携を強化する
ただし、対策は職場の状況によって異なります。
そのため、現場の意見も確認します。また、実施後には効果を評価します。
実務例|仕事量の負担が大きい部署への対応
ここでは、架空の部署を例に説明します。
ある部署で、仕事の量的負担が高い傾向を認めたとします。一方、同僚からの支援は比較的良好でした。
この場合、単に相談窓口を紹介するだけでは不十分です。
まず、時間外労働や人員配置を確認します。次に、繁忙期の業務量を整理します。
また、管理職から業務の実態を聞き取ります。必要に応じて、産業医が職場巡視を行います。
その結果を踏まえ、作業分担などを改善します。
さらに、改善後の勤務状況を確認します。次回の集団分析で変化を評価する方法も考えられます。
このように、分析と職場改善を結び付けます。
産業医が集団分析に関与する意義
産業医は、集団分析を健康管理の視点から評価できます。
また、面談や職場巡視の情報も活用できます。
例えば、数値だけでは分からない業務負荷を確認できます。管理職や労働者への聞き取りも役立ちます。
さらに、衛生委員会で改善策を検討できます。
ただし、個人の健康情報は慎重に扱います。集団分析のために無制限に共有してよいわけではありません。
重要なのは、数値を職場改善に役立てることです。
ストレスチェック集団分析の進め方
- 分析の目的を明確にする
- 個人を特定できない集団単位を設定する
- 実施者に集計・分析を依頼する
- 仕事の負荷や職場の支援状況を確認する
- 職場巡視などの情報と照合する
- 必要な改善策を検討する
- 対策を実施して効果を確認する
なお、集団分析では継続的な評価も重要です。
前年度との比較を行えば、変化を把握しやすくなります。ただし、部署構成が変わった場合は比較に注意します。
合同会社パラゴンの集団分析・職場環境改善支援
合同会社パラゴンは、ストレスチェック制度の構築と運用を支援しています。
また、集団分析の結果を職場改善に活用する支援も行っています。
産業医・労働衛生コンサルタントの専門性を生かします。そして、職場の課題を実務的に整理します。
重要なのは、ストレスチェックを実施することだけではありません。
働きやすい職場をつくり、不調を未然に防ぐことが目的です。
また、産業医の選任や職場巡視については、次のページをご覧ください。
参考資料
- 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」
- 厚生労働省「ストレスチェックの集団分析に関する労働安全衛生規則が改正されました」
- 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」
- 厚生労働省「ストレスチェック制度関係Q&A」
※本記事は2026年10月時点の公表情報に基づいています。実際の運用では最新の法令・行政資料をご確認ください。
ストレスチェックの集団分析では、10人未満の部署の扱いや、2027年4月改正による個人識別防止の考え方を理解することが重要です。

