ストレスチェック23|実施者向け解説:集団分析について

集団ごとの集計・分析は、必ずしなければならないのか?

 

健康経営に長けたメンタル産業医で知られる合同会社パラゴン(東京都港区)が人事労務実務のQ&A2015年4月号にてストレスチェックの解説記事を執筆した立場から、ストレスチェック制度における疑問の解消を目的とした解説をします。

ストレスチェック制度は、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止するという、一次予防の取組みを強化することを目的としています。そう考えるなら、当然に集団ごとに、そこでの仕事の量的負荷や同僚または上司の支援を集計・分析するという職場環境の評価と、勤務形態又は職場組織の見直し等、職場環境を当然に改善してもらいたいものでしょう。

 

しかしながら、労働安全衛生規則52条の14には、努力義務までしか課せられませんでした。

 その理由としては、① 高ストレス者と区分された労働者を出した上司が、更迭されるのを防ぐ

② 努力義務ではなく義務としてしまうと、助成金を出せなくなる。

以上が考察されています。

 

出典:厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課産業保健支援室.改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について

 

ストレスチェック制度で「集団分析」は「努力義務」でしかありません。でも、「努力義務」という法律的な建付けとなっている法制度には、助成金が用意されていることが往々にしてあります。この「集団分析」に関しても、その結果を踏まえた働きやすい職場づくりに、資するようにと、労働者健康安全機構による「職場環境改善計画助成金」という公的助成金を受給しながら取り組める助成制度が用意されています。この「職場環境改善計画助成金」のうちBコースは、以下の出典にあるように各都道府県にある産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策促進員の助言・支援に基づき、ストレスチェック実施後の集団分析結果を踏まえて職場環境改善計画書を作成し、計画に基づき職場環境の改善を実施した場合に負担した機器・設備購入費用の助成を受けることができる制度です。集団分析の経験がないことが露見するのではないかと危惧し、職場で実施することに反対するような了見の狭い保健師はいないと思いますが、そういった方がいたとしても、メンタルヘルス対策促進員がより仔細な分析方法を教えてくださいます。「集団分析」をせず、つまりはストレスチェックの受検だけという、ストレスへの気づきを労働者に促すだけではもったいないです。

出典:厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構.イキイキした職場環境づくりを応援します!メンタルヘルス対策関係助成金①心の健康づくり計画助成金②ストレスチェック助成金③職場環境改善計画助成金