疫学的根拠ある医療保健福祉施策を推進させる立場である合同会社パラゴン代表が、東京弁護士会医療過誤法部2018年度第4回部会にて「産業医を取り巻く法的・実務的課題」を発表する機会に恵まれました。
わが国において、
どうして産業医制度ができたのか、
産業医が心身双方の健康管理に加え、労働時間管理を筆頭とした労務管理まで担うことになったのか等を
歴史軸に沿って背景を説明すると共に、
代表がなぜ、精神科医による医療の限界や、「不治も出る」という行政の失敗を教訓に、精神病理学に基づいた産業精神医学ではなく、精神健康医学に基づいたメンタル産業医学といった新たなメンタルヘルス体系が必要で、そのノウハウを、「メンタル産業医入門」を筆頭に、複数の書籍を通じて世に啓発する必要性が生じたのか・・・
そのきっかけは、世界的コンサルティング企業にて代表が初代専属産業医を担う中、
2004年に人事部衛生管理者より、
「世間の精神科医から出される診断書は虚偽記載がほとんどだ。産業医の診立ての方が精確だ」と言われたことに遡ります。
その時は、「精神科の専門医でもないのに、どうして巷の精神科医より優れていることなぞありえようか」と代表は謙遜かつ遠慮していました。
しかし2007年にある地方都市が、その所属県まで巻き込んで、公による住民を精神病だとレッテル貼りさせ、抗うつ薬という名の有害物質を摂取するよう仕向け、自死に至らしめるという有害行為・不経済性という21世紀版「“公”害」・・・住民に服毒させるという、災禍凌辱行為・・・「禍凌」行為を働いていることを代表は知ることになりました。
京都大学大学院社会健康医学系専攻健康情報学分野にて中山健夫教授のご指導を受けていた立場。そのような非科学的な根拠に基づく悪疫学的行為は、悪い転帰をとること危惧されたため、そこで仕事も省みることなく、日本精神神経学会総会にて第105回、第106回と2年連続して組まれたシンポジウムにシンポジストとして登壇し、警告を代表は出し続けました。2009年と2010年のことです。
2009年度の「産業精神保健における実務的課題と解決策検討」では、精神科医が診断書に虚偽記載することは、まわりまわって患者の不利益になることの論理展開と、「不治も出る」が、どうして非科学的なのかの立証を行いました。
2010年度の「産業医からみた精神科医療の疫学的検討と処方箋」では、多剤併用(ポリファーマシー)という多罪悪用に手を染める精神科医が44%も存在している調査結果の報告、診断書での診断名記載の実態調査結果を伝えると共に、2007年から危惧してきた「富士モデルは“不治も出る”」だったことが、不幸にも証明された現実を問題視しました(それぞれ 論述した実際の文章、クリックすることで確認可能です)。
と共に、高名な精神科医に頼み込み、外来を陪席させてもらうことで、診立ての精度を高めることにしました。
これらの危惧は、その後、知るだけで以下の医師が問題視下さいました。
野田正彰. 対策費200億円でもなぜ自殺は減らないか.新潮45;2012年7月号 81-82ページ
野田正彰. うつに非ず うつ病の真実と精神医療の罪. 講談社. 2013年 27ページ
斉尾武郎.精神医学の羅針盤.篠原出版.2014年 194-197ページ
また、現役の新聞記者も問題視下さいました。
中澤誠.ルポ 過労社会. ちくま新書 2015年209-210ページ
日本公衆衛生学会も取り上げてくれました。
第72回日本公衆衛生学会総会 シンポジウム14 「科学的根拠に基づいた公衆衛生政策の推進 ‐ 精神保健版 ‐」 2013年10月24日
実際、上記危惧は不幸にして的中し、今、「不治も出る」という、21世紀型公害病で不幸の代名詞とまでいわれることになっています。
精神科産業医に任せてはおけないということに日本医事新報社も助成くださったのか、『「メンタル産業医」入門』を2016年に刊行くださいました。
2017年になり、同部会事務長だった猪瀬秀美弁護士が問題点をご認識くださり、現部会長の筑波アカデミア法律事務所の永島賢也弁護士と今回の企画を持ってくださるに至ったという経緯がございます。
なお、この第4回部会には、企業側労務弁護士の第一人者であるアンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナーの嘉納英樹弁護士も講師として登壇され、精神科医が働いている問題を提起下さいました。配布資料を元に勝手に論点整理すると以下になります。
①社会性欠落:偉そう、不親切、説明下手、判読不能の汚字で綴った診断書を平気で記載して寄越してくるように、第三者への配慮が欠落している。
②誤診問題:双極性障碍や統合失調症、更には詐病を見抜けず、抑うつ性障碍(うつ病)と誤診。ただ、うつ病と書いてくる方はましで、「抑うつ状態」という状態名を記載したり、「自律神経失調」というように、誰しもなりえる状態を平気で記載してくる。
③権限踰越:メンタルヘルス失調を引き起こす原因探求において、主原因と契機の区別をせず(代表補足:DSM分類での多軸評価をしていない?)、きちんと就労状況を把握することなく(同:上司や人事担当者の同伴通院を求めることなく)、平気で「業務起因性」と記載してくる。
④倫理的問題:アルコール問題に寛容
⑤職務怠慢:患者に対して休職指示は出すものの、休職中の保健指導をしない。
極めて重大な社会的問題だと認知を新たにできましょう。
これまで代表が啓発本を複数社から刊行してもらえてきたのは、こうした問題点の予防や抑止になること、出版社も認識されたのではないかと愚考しております。
「メンタル産業医入門」(日本医事新報社):医師に限らず、従事する専門職に向け精神疾患の鑑別や休職中の支援方法を紹介しています。
「復職・セルフケアガイドブック」(金剛出版):メンタルヘルス失調者の支援方法や、そもそも不調を来さない行動習慣を紹介しています。
「もう職場から“うつ”を出さない」(労働調査会):事業主側が、積極的にストレスチェックを活用することで、メンタルヘルス失調者発生を抑止する方法や手段を紹介しています。
「働きやすい職場づくりのヒント」(金剛出版):「キャリア」に応じた就労調整や、ストレスチェック実施後の集団分析を踏まえた働きやすい職場環境形成にて、メンタルヘルス不調者を出さずにすむという労務管理方法の実際を複数紹介しています。
これらは、類書に多い 学者による机上の空論ではなく、精神科専門医でない一介の医師が、単なる治ったレベルで留まることなく、就労継続というハードルを越えるまでの、主治医以上の支援を労働者に対してなし得てきた実際が基盤となっています。
合同会社パラゴン代表が取り組んできた活動への理解者や賛同者に拡がりがある中、当社は今に留まることなく、より優れた企業における産業医活動の追及を通じて、市民のすべての生活部面によいて、公衆衛生や社会福祉の向上及び増進に益々寄与できるべく、所属産業医一同、精進を重ねてまいりますので、引き続きのご厚誼をお願い致します。