ストレスチェック36|ストレスチェック委託時、悪徳業者に引っかからない為の注意点

ストレスチェックの実施体制

健幸(ウェルビーイング)経営の基盤であるストレスチェックの有効活用に長けたメンタル産業医で知られる合同会社パラゴン(東京都港区)が、ストレスチェックを実施するにあたっての役割と権限、そして悪徳業者による偽装や捏造に遭遇しないための注意点について紹介します。

 

事業者」:指針で定められたストレスチェック制度での役割は以下です。ストレスチェック制度実施に当たっては、実施計画を策定し、事業場内の産業医や委託先の外部機関との連絡調整や、実施計画に基づく管理を行う実務担当者(ストレスチェック制度担当者)を指名し、実施体制を整備することが望ましいとされています。

 

実務担当者(ストレスチェック制度担当者)」:ストレスチェック制度を実施するにあたり、会社側の責任者です。本制度の実施計画を策定したり、実施管理したりと、実質責任者になります。以下で述べる実施者や実施事務従事者とは異なり、ストレスチェック結果等の個人情報を直接取り扱うことをしないため、人事総務課長など、人事権を持つ者でも担えます。指針では、衛生管理者や事業場内メンタルヘルス推進者が担うことが望ましいとされています。

 

実施者」:ストレスチェックの実施主体となれる者であり、「医師保健師その他の厚生労働省令で定める者」(法第66 条の10 第1項)とされています。ここでの厚生労働省令で定める者とは、厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師もしくは精神保健福祉士であって、ストレスチェックを実施する者を指します。マニュアルでは、日頃から当該職場の状況を把握していることより、産業医が実施者になることが最も望ましいとされており、次いでその事業場の産業保健活動に携わっている場合にのみ、精神科医や心療内科医等の医師、そして前述要件を満たした保健看護職が担当できます。従ってかかりつけ医は担えません。また産業医が実施者を担当する場合には労働者本人からの同意を得るプロセスが不要なため、高ストレス者の早期把握と素早い対応が可能です。

 

なお、「公認心理師」資格を定める「公認心理師法」が2015年9月19日、第189回国会において成立しました。公認心理師が行う心理行為としては、「対象者の心理状態の観察・分析」「対象者との心理相談による助言・指導」「対象者の支援者との心理相談による助言・指導」「メンタルヘルスの知識普及のための教育・情報提供」の4種が掲げられており、実施者の要件として「公認心理師」も認められることになりました。

 

[ポイント]  「実施者」と「事業者」とは違います。ストレスチェック制度では個人情報の保護が、これまでの定期健康診断より格段に強化されました。そのために、「事業者」ではなく「実施者」に、ストレスチェックの実施と結果の把握を厳格に実行させる意味があります。従って人事権を有する者(基発では「解雇、昇進または異動などの直接の権限を持つ監督的地位にある者」)は、人事権の対象となる労働者に対するストレスチェックの実施者にも、そして「実施事務従事者」にはなれません。例えば病院という事業場においても、企業の健康支援センター長のような人事権を有する統括産業医は、その部下に対してストレスチェックを実施することは出来ません。

 

この「実施者」は外部機関へ業務委託することが出来ます。その場合、産業医等の事業場の産業保健スタッフが「共同実施者」として関与し、個人のストレスチェックの結果を把握したり、面接指導の要否を確認したりするなど、その外部機関と事業場内産業保健スタッフが密接に連携することが望まれます。

 

「共同実施者」:ストレスチェックの実施者が複数名いる場合の実施者を「共同実施者」といいます。元から契約している産業医が、“メンタル対応は苦手だ!という場合、「実施者」を外部に委託することになります。その場合、その産業医は、労働者のストレスチェックの結果について、本人からの個別の同意がなければ内容を把握することが出来ません。一方、産業医が「共同実施者」という立場であれば個別同意は不要です。ストレスチェック結果もプライバシーへの配慮が必要な健康情報の一つとして管理することになるからです。従って高ストレス状態にある労働者を把握し、即、相談対応したり面接指導を勧奨したりと迅速な対応が出来るため産業医には、「共同実施者」の役目を果たしてもらうことを契約の最低条件とすることを勧めます。以上よりメンタル不調への対応が苦手としている産業医と契約していたとしても、この「共同実施者」として参画するよう要望しましょう。断られた場合や、このような課題を指摘することさえないストレスチェック受託機関と契約を締結してしまった場合でも、メンタル対応に長けた医師や労働衛生コンサルタントに、必要な際にのみ相談する先としての顧問就任を打診する方法があります。

 

「実施代表者」:複数名の実施者を代表する者を「実施代表者」といいます。

 

「実施事務従事者」:実施者のほか、人事権はない者のうち、実施者の指示により、ストレスチェックの実施の実務(個人の調査票のデータ入力、結果の出力事務、個人の結果の保存(事業者に指名された場合に限る)、面接指導の申出の勧奨等を含む。)に携わる者を指します。実施者と同様に人事権を有する者はなれません。人事権を持つ者が衛生管理者を兼ねている場合にはその衛生管理者はなれません。

*ネットを介してのストレスチェックを実施する場合、「実施事務従事者」がネットシステムに精通していないと、外部従事者に委託せざるをえません。その外部会社がIT会社だとプライバシー保護の観点から、注意が必要になります。

*実施事務従事者に対して課された責任の重さに対して、将来性まで奪われかねないことを危惧し、“任命されるくらいなら退職する”と担当予定者が就任を拒否したり、実際に退職まで至った事例が複数確認されています。

事例①:人事権ある地位にないとはいえ人事部部員である場合、労働者から、“人事に影響があるのではないか?”との疑念を受けた事例がありました。防止する方法は、その者を一定期間、人事権ある地位に就けないようにすることや別の職務の管理職に列することになります。しかしながら、課せられた守秘義務の重さに対応した処遇とはいえないでしょう。

事例②:独身者が実施事務従事者を指名された場合でした。“異性に感情的な配慮をするのではないか?”というそしりを受けました。

 

以上のような事例への解決策としては、後述しますが実施事務従事者は社会保険労務士のような専門家に外部委任とするか、医療職を始めとした専門職を雇用して対処することが考えられます。

 

 

  • 『ストレスチェック対象者管理基本台帳』作成
  • 派遣社員も含め、実施事務従事者は、ストレスチェック制度の対象者、受検者、未受検者をリスト化する必要があります。社内情報なので全て外部に委託は出来ません。また、ストレスチェックを紙ベースで実施する際にも、表計算ソフトを使って作成することが現実的です。なぜなら、社員台帳と紐付けしておくことでアップデートしやすいからです。

・項目としては、社員番号、氏名、生年月日、性別、入社年月日、所属、職位、受検希望の有無、受検の有無、領域ごとの点数、結果判定、医師への面接希望の有無、事後措置内容が挙げられます。

 

☆派遣労働者については、ストレスチェック及び面接指導の実施義務は派遣元にあります。対して集団的分析は派遣先が、派遣労働者を含めて実施することが望ましいと指針に規定があります。

☆出向者のうち移籍出向は出向先が実施義務を負います。

  在籍出向については、指揮命令や賃金支払いの実際に応じて、出向元と出向先が協議して決める必要があります。

☆海外出張者の場合、現地企業に雇用されている海外駐在者の場合には実施義務はありません。それ以外は定期健康診断と同じように受検の対象となります。

なお 安衛則43条により「海外派遣労働者健診」の対象となる海外に6ヶ月以上派遣される予定にある方は、本来は派遣対象となる前にストレスチェックを受けてもらうと良いのでしょうが、定期健診さえも派遣が決まってから体調評価がされるような順番がおかしい企業ある中、どこまで実効性が得られるのかは今後の課題です。

 

  • 実施者及び実施事務従事者以外がストレスチェック結果を閲覧することがないようなセキュリティ確保

・ストレスチェックを紙ベースで実施する際には、社内の実施事務従事者は、労働者から返送されたストレスチェック結果を、人事権を持つ者をはじめとして、本人以外の者の目に触れる機会を避ける配慮が必要です。一例として人事部から労務部を新たに独立させたり、ストレスチェック結果は実施者と実施事務従事者以外の者が入ることのない別の部屋で実施したりと物理的に離す工夫があります。物理的限界がある場合でも、同じようなプライバシー配慮が必要なセキュリティレベルが高い社内文書に、人事評価・人事考査・ボーナス査定結果等があります。それらを取り扱う際の工夫かつ、人事権を持つ者が目に触れることがないよう、別フロアで作業に従事することも検討できます。どうしても同じフロアで作業をせざるをえない場合には、実施者と実施事務従事者以外の者の目に触れないよう、離席の際には隠すといった細心の注意を払いつつ、かつ人事権を持つ者が不在のときや休日に作業を行う工夫が必要になります。

 

・電子ファイルやネットを介して作業する場合には、実施者と実施事務従事者しか知りえない暗証番号保護が必要になります。その場合でも、周囲に実施者と実施事務従事者以外の者が勤務している場合には、ストレスチェック制度の結果を話し合ってはいけません。別途、会議室で協議するような工夫が必要となります。

*危惧されていることとして実施者や実施事務従事者がネットインフラに明るくない場合があります。通常、そうでしょう。個人情報の流通を、社内の情報管理部門に任せることに、社内から同意が得られましょうか。社外のIT関係会社に委託している場合も同じです。果たして情報保護が出来ているといえるのか、社員は心配することでしょう。何しろ今まで健康管理において門外漢だった業者が多数、参入しています。外部委託先選考については後述します。

 

・上記のような措置を講じたとしても、人事権を持つ者は、実施事務従事者に対して、その権限を振りかざしてのストレスチェック結果開示を迫るといった倫理感の欠如があってはいけません。また、労働者側から、事実ではなくても「自分が左遷されたのは、実施事務従事者が人事部長とツーカーだからだ」といった疑いの目を向けられるような、信頼が得られていない状況では、このストレスチェック制度は今後、毎年実施する必要があります。出だしから躓くことになってしまいますので、細心の注意が必要です。

 

・領域A「仕事のストレス要因」にある仕事に対する負担感や領域C「周囲のサポート」にある上司や同僚からの支援について、正直に回答した結果がいくら個人情報ということで保護されているとはいえ“内部で作業している以上、結果が一人歩きしてしまうのではないか?”との疑念を抱かれてしまうと、次のような疑心暗鬼が生じえます。“職場内の人間関係が悪化するのではないか?”と。いくら不利益が防止される規定があるとはいえ、一度抱いた感情は容易には変化されないからです。従ってストレスチェックを受けたくない という労働者や、受けても正確な回答をしない方が出る可能性は否定できません。 対応としては、次に述べる外部機関の活用になります。

  • 外部機関に情報管理を行わせる場合

ストレスチェックの実施のみならず、後述する医師による面接指導は、事業場の状況を日頃から把握している産業医が行うことが望ましいことは言うまでもありません。しかしながらメンタル対応が可能な産業医は全国で千人程度しかいないことが(株)産業医大ソリューションズの亀田高志医師によって推測されています。本来、日本医師会認定産業医資格を取得するには、メンタルヘルス対応も履修しているにも関わらず。そして人事権のある者が衛生管理者を兼ねているような場合や、人事権ある者以外に担当しえる者がいないような中小企業の場合、そして前項のようなセキュリティを設けることが現実的ではない場合は、労働安全衛生規則52条の10 第2項よりストレスチェックや面接結果を扱うことは禁止されているため、外部機関に委託せざるをえません。その場合、産業医はどこに委託したらよいとアドバイスすべきでしょうか。

「実施事務従事者」を社会保険労務士という国家資格を有しているものが実施するのであれば、給与計算を始めとしたプライバシー性の高い情報の取扱いについても「社会保険労務士法」の規定により守秘義務が課せられていますから、安心して任せることが可能です。 

そうではない営利目的企業や今回の法制度化に合わせて参入したような企業が運営している場合、それらの経営に非合法組織が介入してきたりした場合の危険性は計り知れません。実際に、国立国会図書館内ネットワークシステムの運用管理業務の委託先である日立製作所の社員が、同業務の遂行のため与えられた権限を悪用し内部情報を不正に取得した事件がありました(関係会社にも問題あり)。そして雪印、阪神阪急ホテル、ロイヤルホテル、不二家、タカタ、旭化成関係会社、日産、三菱自動車、JR北海道、科血研やノバルティス、東芝、オリンパス、教育出版界、バス運行会社・・・・業界を問わず偽装や隠蔽、非倫理的行為が確認されています。株式会社が運用しているといった営利原理が正面から見える企業体のサービスではなく、倫理原理で活動する事業体によるサービスを選考されることをお勧めします。

出典:国立国会図書館.2014年5月15日 株式会社日立製作所社員による国立国会図書館情報の不正取得行為について
参考サイト:日立子会社、三菱東京銀行の偽装請負を告発した社員を強制解雇 不当行為が常態化か
参考サイト:旭化成.杭、偽装
出典:オリンパス事件

 

◆残業代未払いと退職強要、日立子会社を提訴 「結果出ないならサヨナラと言われた」

出典:弁護士ドットコムニュース

 

以下の概要でした。日立製作所の子会社 日立Hシステムズ(東京都品川区)に勤務していた50代男性が2021年2月25日、未払い残業代や退職強要の慰謝料など計約1191万円を求めて東京地裁に提訴。

男性は提訴後に開いた会見で、「残業代なし、休日出勤しても代休無しの『給与定額制使い放題』という立場で勤務していた。

今後、私のような被害者を増やさないためと、他の方が退職強要を受けても黙って泣き寝入りせずに声を上げる勇気を持っていただくためにも、今回訴訟する決断をした」と訴えた。

  • 「サヨナラってこと」上司から退職求められ

 

2018年ごろから課長職に昇進した。同社では、課長級以上の従業員は、一律に残業代支払いの対象外となる労働基準法上の「管理監督者」とされていた。

管理監督者は、(1)経営者と一体的な立場と言えるだけの権限などがある、(2)事故の裁量で労働時間を管理できる、(3)管理監督者としてふさわしい待遇――などが条件となる。

男性は「権限もなく、部下の労働時間削減のため時間外労働を強いられ、給与も月額45万円程度で、残業代が支払われる課長級未満の従業員よりも給与が少ないこともあった」とし、管理監督者にはあたらないと主張。2018年5月から2019年に退職するまでの未払い残業代を求めている。

また、2019年6月以降は、上司から退職強要を受けるようになったという。2018年12月から賞与を20万以上下げられ、2019年6月には上司から「こんなボーナスでよくやってるね」と退職一時金の割増と再就職支援について説明された。

男性が退職を拒否すると、業務計画書の提出を求められたが、提出後も上司から、次のように退職に応じる以外ないかのように追い詰められたという。

「一生懸命やりますっていうところはもう過ぎちゃってるってこと。その言葉が絵に描けない人たちっていうのが今回の対象になっている」

「出来なかったとして、やっぱり駄目ですねでスパッと終わる可能性がある。そうなった時はもう何もない」

「ただいるだけの人はいらないです。結果を出せる人だけにしたい。それが出ないんだったらサヨナラってこと」

  • 男性「正社員の使い捨ての姿勢も明らか」

 

男性は不本意ではあったが不安になり、2019年中に退職した。その後、日立製作所の退職勧奨が違法と認定された判決についての新聞記事を読み、「まったく同じやり方で退職強要された」と弁護士に相談したという。

男性は「業績評価も下げてから退職強要をおこなうなど、今思えば計画的で組織的な退職強要だったかと思う。当時黒字経営だったにもかかわらず、日立製作所が掲げるさらなる利益目標の達成のために、人件費のかかる年齢の正社員に退職強要をおこなっていた。正社員の使い捨ての姿勢も明らか」と訴えた。

 

以上のような問題に対して国の出した指針にある以下の選択要件は十分ではありません。 

 

・委託契約の中で委託先の実施事務従事者を明示させること。

・産業医が共同実施者にならない場合には、外部機関とのやりとりという窓口の役割は、産業医等の産業保健スタッフに担わせることが望ましい(※筆者注:月に一度しか産業医が来ない場合を始め、常勤の産業保健スタッフがいない場合には、人事労務スタッフが担わざるをえないでしょう。その場合には、外部機関に任せたからといって人事権者がストレスチェック結果を閲覧出来ない仕組みがなくて済むものではありません。②で記載したような配慮が必要です)。

・外部機関から事業者に、労働者本人から、事業者に対してストレスチェック結果の開示に関する同意が得られた労働者のストレスチェック結果を提供する際には、産業医等の産業保健スタッフを通じて事業者に伝えることが望ましい。

・委託先の体制が適切か、事前に確認することが望ましい。

・以上について、事前に(安全)衛生委員会にて調査審議すべき。

 

事業者において作成義務があるストレスチェック制度の実施に関する規定の中にも、指針に記載はないものの外部機関名と委託内容を記載の上、本人に通知する必要があると理解できます。

 

委託先の吟味方法例については「外部機関にストレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合のチェックリスト例」が公開されています。

 

 

外部機関にストレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合の

チェックリスト例

(委託する内容に応じて関連する部分を利用すること)

 

ストレスチェック制度についての理解

 ストレスチェックの目的が主に一次予防にあること、実施者やその他の実施事務従事者に対して、労働安全衛生法第104 条に基づく守秘義務が課されること、本人の同意なくストレスチェック結果を事業者に提供することが禁止されていること等を委託先が理解しているか。

 実施者やその他の実施事務従事者となる者に対して、研修を受けさせる等により、これらの制度の仕組みや個人情報保護の重要性について周知し、理解させているか。

 外部機関と当該事業場の産業医等が密接に連携することが望ましいことを理解しているか。

 

実施体制

 受託業務全体を管理するための体制が整備されているか(全体の管理責任者が明確になっているか)。

 受託業務を適切に実施できる人数の下記の者が確保され、かつ明示されているか。

また、下記の者がストレスチェック制度に関する十分な知識を有しているか。

○ ストレスチェックの実施者として必要な資格を有する者

○ ストレスチェック結果に基づいて面接指導を行う産業医資格を有する医師

○ 実施者や医師の指示に基づいてストレスチェックや面接指導の実施の補助業務を行う実施事務従事者

 実施事務従事者の担当する業務の範囲は必要な範囲に限定され、また明確になっているか。

 ストレスチェックや面接指導に関して、労働者からの問い合わせに適切に対応できる体制が整備されているか。

 実施者やその他の実施事務従事者が、必要に応じて委託元の産業保健スタッフと綿密に連絡調整を行う体制が取られているか。

 

ストレスチェックの調査票・評価方法及び実施方法

 ストレスチェックに用いる調査票の選定、評価方法及び高ストレス者の選定基準の決定についての提案等を明示された実施者が行うこととなっているか。

(調査票)

 提案されるストレスチェックに用いる調査票は法令の要件(ストレス要因、心身のストレス反応及び周囲のサポートの3領域を含むものか等)を満たすか。

 国が示す標準的な57 項目の調査票又は23 項目の簡易版以外の調査票を用いる場合は、科学的な根拠が示されているか。

(評価方法)

 提案されるストレスチェック結果の評価方法及び高ストレス者の選定方法・基準は法令の要件を満たすか。

 提案されるストレスチェック結果の評価方法及び高ストレス者の選定方法・基準は分かりやすく労働者に開示されるか。

(実施方法)

 調査票の記入・入力、記入・入力の終わった調査票の回収等が、実施者やその他の実施事務従事者及び労働者本人以外の第三者に見られないような状態で行える方法が取られるか。ICT を用いて行う場合は、実施者及び労働者本人以外の第三者に見られないようなパスワード管理、不正アクセス等を防止するセキュリティ管理が適切に行われるか。

 実施者が受検者全員のストレスチェック結果を確認し、面接指導の要否を判断する体制が取られるか。

 高ストレス者の選定に当たり、調査票に加えて補足的に面談を行う場合、当該面談を行う者は、医師、保健師等の適切な国家資格保有者であるか、又は臨床心理士、産業カウンセラー等の心理専門職となるか。また、当該面談は実施者の指示の下に実施する体制が取られるか。

 労働者の受検の状況を適切に把握し、事業者からの求めに応じて、受検状況に関する情報を提供できる体制が取られるか。

 集団ごとの集計・分析を行い、わかりやすく結果を示すことができるか。その際、集団ごとの集計・分析の単位は、回答者10人以上となるか。

 

ストレスチェック実施後の対応

 ストレスチェック結果の通知は、実施者やその他の実施事務従事者及び労働者本人以外の第三者に知られることのない形で、直接本人にされる方法がとられるか。

 本人に通知する内容は、①ストレスの特徴や傾向を数値、図表等で示したもの、②高ストレスの該当の有無、③面接指導の要否など、法令に定められた内容を網羅するものとなるか。

 面接指導が必要な労働者に対して、実施者やその他の実施事務従事者及び労働者本人以外の第三者に分からないような適切な方法で面接指導の申出を促す体制がとられるか。

 ストレスチェックの結果、緊急に対応が必要な労働者がいる場合に、委託元の産業保健スタッフを通じた事業者との連絡調整を含め、適切に対応できる体制が取られるか。

 ストレスチェックの結果を事業者に通知することについての同意の取得方法について、法令に則った方法になるか(事前や実施時に同意を取得するような不適切な方法が取られないか)。

 実施者又はその他の実施事務従事者が結果の記録を5年間保存するための具体的な方法が明示され、そのために必要な施設、設備が整備され、実施者及び労働者本人以外の第三者が結果を閲覧できないような十分なセキュリティが確保されるか。

 

面接指導の実施方法

 面接指導の実施場所はプライバシー保護や労働者の利便性の観点から適切か。

 面接指導を実施するに当たり、事業者から対象となる労働者の労働時間、労働密度、深夜業の回数及び時間数、作業態様、作業負荷の状況等の勤務の状況や職場環境等に関する情報を事業者から入手し、適切に取扱う体制となっているか。

 

面接指導実施後の対応

 面接指導の結果を事業者に通知するに当たり、就業上の措置を実施するため必要最小限の情報に限定し、診断名、検査値、具体的な愁訴の内容等の生データが提供されることがないような方法が取られるか。

 面接指導の結果、緊急に対応が必要な労働者がいる場合に、委託元の産業保健スタッフを通じた事業者との連絡調整を含め、適切に対応できる体制が取られるか。

 

  • ストレスチェックの実施時期

 

産業医にとって、実施時期を適切に会社にアドバイスすることが求められます。繁忙期での実施であれば、高ストレスにさらされる労働者のストレス状況を把握しやすくなります。むろん、繁忙期の実施は、更にストレス源になることと、受検者数増加が見込めないことから実施は現実的ではありません。また繁忙期最中には「躁的防衛」といいますが、“気が張っていると風邪をひかない”よろしく、ストレスに関する感度が鈍っている場合もあります。また長時間労働者に対する医師による面接指導制度もあります。従って繁忙期が終わったころ、メンタル不調症状は発生しやすいので、その頃を見計らって実施すると良いでしょう。

 

なお、会社の状況により繁忙期後に実施できない場合もありましょう。その場合でも、“平時”ですら高ストレスな方というのは、繁忙期には更なるストレスにさらされるわけです。優先しての支援が必要な方の抽出が可能と理解してみてはいかがでしょうか。