メンタル産業医とレジリエンス向上にて健康経営⑤|五大栄養素について
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メンタル産業医とレジリエンス向上にて健康経営⑤|五大栄養素について

2021年12月18日(土)2:03 PM

健康経営に長けたメンタル産業医で知られる合同会社パラゴン(東京都港区)がストレス耐性をレジリエンス向上にて高める方法を紹介しているシリーズその5です。

当社代表が生まれるちょうど百年前に出生された藤原銀次郎が「すぐ役立つものは すぐ役立たなくなる」と述べていました。当シリーズは、長期間役立ち続けるために、即効性は得られないかもしれませんが、それがレジリエンス(Resilience)を細胞の能力や更には遺伝子のよりよい発現レベルを目指すような内容となることを心がけております。学問もスポーツも、何事も基本が大事。そこで基本要素からおさらいしながらストレス耐性の向上を通じたメンタルヘルス増進を目指す内容を紹介してまいります。

 

これまでレジリエンスを高めるための基盤には、生物や動物としての体力の強靭化と,ストレス源によって誘起される炎症促進作用に対して耐えられるだけの体質の向上が必須条件であること、論じてまいりました。そのための基礎としても、そして健康経営における基盤中の基盤である栄養学について紹介します。

出典:「メンタル産業医」入門.

1.  栄養と栄養素の違い

① 栄養(Nutrition):成長・生育や体温維持といった生命現象を営むために、生物は外界から必要な物質を取り入れています。この生命現象の営みを栄養といいます。

 

② 栄養素(Nutrient):生命現象を営むために外界から取り入れる栄養の素材を「栄養素」といいます。したがって04eacbde-aa52-4f6c-a806-9f156c3c721a-medium様々な食品をバランスよく食べ、栄養素において過不足がない状態であるときが栄養が良い状態と捉える事が可能です。

 

2.五大栄養素のうち炭水化物

糖質とも呼ばれます。甘味のある「糖」と甘味のない「デンプン」に区別され、栄養学的には食物繊維も含まれます。
胚芽米や玄米を通じて炭水化物を摂取するようにすると、糖質だけではなく食物繊維や、五大栄養素を構成するビタミン、ミネラルも多く摂取することが可能になります。炭酸飲料や清涼飲料水を通じて糖を摂取するより健康を維持しながらの摂取カロリー調整が可能になります。
全エネルギー摂取量の60%が摂取の目安とされています。
・肝臓や筋肉中に、グリコーゲンという形で貯蔵されています。100メートル走のような、瞬発力が求められるような運動時、消費されます。

・脳や神経系の唯一の燃料ですから、炭水化物カットダイエットを無理にしていると、脳や神経に悪影響を及ぼしかねません。


3. たんぱく質

約20種類のアミノ酸で構成されています。その中で9種類のアミノ酸は必須アミノ酸と呼ばれ、体内で合成することが出来ないため食事で摂取する必要があります。
全エネルギー摂取量の15%が摂取の目安とされています。

なお、「グルテンフリー」という言葉、聴いたことあると思いますが、小麦に含まれるたんぱく質であるグルテンを摂取していると、「リーキーガット」という頻回なる下痢症状や、悪化すると潰瘍性大腸炎になること、知られています。




参考サイト:通勤電車で下痢に襲われていた50代男性 グルテンフリーで症状改善も

 


4. 脂質

脂質は身体活動のエネルギー源として利用されています。体内では中性脂肪(トリグリセライド)という形で体内に貯蔵されています。
全エネルギー摂取量の25%が摂取の目安とされています。

邪魔者扱いされますが、熱量は炭水化物の1.5倍あり、内臓の保護作用や体温調整に寄与しているように、縁の下の力持ち的役割があります。

・有酸素運動・・・・脈拍が(220-年齢)×6割 程度になるような、きつくない負荷がかかった際に、最もよくエネルギー源として使われます。

 

5. ビタミン(Vitamin)

五大栄養素の4つ目はビタミンです。身体の様々な機能の調整を担っています。ほとんど人体内で合成されません。不足すると健康に支障が生じます。従って食品から摂取する必要があります。ただしVit E含め脂溶性ビタミンと呼ばれるものは、尿を通じた排泄がし辛いため、過剰に摂取した場合、障害が生じえます。
また、サプリメントで摂取した場合には、かえって発がん性が高まる疫学研究結果があることも知られているため、自然な食品を通じた摂取を心掛けたいものです。

・ビタミンB群は、糖質、アミノ酸、脂肪酸の代謝に関与しています。また赤血球の形成にも重要な働きをします。

ビタミンB群の働き

ビタミンB群は、「補酵素」といいますが、体内でのエネルギー産生や「ステロイド」という、ストレスを解消するホルモンを製造する際、エネルギーの材料やホルモンの原料を元に、エネルギーを産生したり、ストレスホルモンを製造したりする際の助っ人です。お酒をつくるときの杜氏みたいなものでしょうか。いわゆる「ジャンクフード」を摂食していると、これらビタミンB群摂取に不足が生じます。すると、体内に入った糖質がエネルギーとして使われることはなくなるから、いわやうる「夏バテ」の症状を呈するのみならず、あまったエネルギーが、困ったことに、誰しもが「不要」と思う、皮下脂肪に変えられてしまいます。つまりは「夏バテ」と「コロナ太り」とダブルパンチに見舞われてしまいます。

 

 

ビタミンB群の持つ栄養作用

 

ビタミンB群には、主に以下の種類と、それぞれが栄養としての作用を発揮します。

 

ビタミンB1

日常生活をおくるのに不可欠なエネルギー産生の補酵素として疲労回復や持久力維持作用があります。また、神経の末端の細くなった部位の保護作用があります。

 

豚肉に豊富に含まれます。脂肪分の少ないヒレやもも肉がおすすめです。そば、真鯛、玄米、枝豆、かつお、まぐろに多く含まれます。

 

 

ビタミンB2 

脂肪をエネルギーに変える際は疲労物質といわれていた乳酸を、“ガソリン”のようにエネルギー源に変えます。“競争時の強壮作用”というと、おやじギャグでしょうか。

 

豚レバー、うなぎ、ぶり、さわらといった魚、モロヘイヤ、牛乳、納豆、ほうれん草、アーモンドに多く含まれています。減量中にはこれらを意識して摂取すると脂肪がよりエネルギー源として使われやすくなります。

 

ビタミンB3 (ナイアシン)

エネルギー代謝にかかわり、数百種類の合成酵素の手助けをします(補酵素といいます)。摂取にて、体調を総合的に整えていきます。

 

たらこ、まぐろの赤身やサバといった魚、鶏肉の胸肉やささみ、エリンギやとうもろこしに多く含まれます。

 

 

ビタミンB5 (パントテン酸)

「コエンザイムA」というサプリ、聞いたことあるかと。その構成成分です。抗ストレスホルモンである副腎ホルモンの産生に寄与することから、抗ストレスホルモンといっても過言ではないでしょう。

「腸活」といいますが、和食摂取にて体内に補給される善玉菌が腸内に豊富だと、それら腸内細菌が合成してくれます。

 

多く含まれる食材としては、鶏のレバーやささみ、胸肉、納豆、アボガド、モロヘイヤがあります。

 

 

ビタミンB6

「機能性表示食品」の中には、「必須アミノ酸」という、体内で合成できないアミノ酸を摂取することで、疲労感を和らげる効果がある商品があります。また、シジミエキスから抽出した「オルニチン」という飲酒による肝臓の機能低下を補うアミノ酸製剤が売られています。これらアミノ酸を積極的に摂取しても、体内でのアミノ酸合成力が落ちていては、いわゆる「バテ」を防止できること効果は乏しいでしょう。 最近は、「美ボディ」と称して、プロテインドリンクを飲む方も多いでしょう。アミノ酸やプロテインドリンクを飲む際には、このビタミンB6を摂取していないと、体内のほかでのアミノ酸の合成に支障をきたしかねないので、注意が必要です。しっかりと摂取しておくと、活動度を維持しやすくなります。

かつお、まぐろ、酒、豚ヒレ、鶏ささみ、バナナ、赤パプリカ、さつまいも、玄米に多く含まれています。

 

 

ビタミンB12

神経伝達物質の伝達を円滑にし、また、メラトニンという睡眠ホルモンの分泌を整えて睡眠リズムが安定化されることから、抑うつ症状の緩和や、アルツハイマー病の予防効果も示唆されています。

 

きのこやきくらげ、いわし、にしんといった魚介類に多く含まれます。

 

 

 

葉酸

ビタミンB12と共に正常な赤血球の生成にかかわっています。赤血球が機能低下してしまっては、体内の細胞一つひとつに酸素をきちんと補給できません。また、日本神経学会のてんかん診療ガイドライン(2018年)より、

 CQ13-3 葉酸は補充すべきか。

要約: 葉酸投与は神経管閉鎖障害の予防などのために有用である。

出典:日本神経学会 てんかん診療ガイドライン

 

また2021年3月の改訂版「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」では、葉酸に関して以下の記載があります。

  「葉酸」は妊娠してからとればいいの?

    葉酸の摂取は、胎児の二分脊椎などの神経管 閉鎖障害の発症リスクの低減に重要です。神経 管閉鎖障害は、妊娠のごく初期に脳や脊髄のもと となる神経管の形成に問題が起こることで生じま す。 

受胎後およそ28日が神経管の形成には重要な 時期となります。妊娠初期の女性、妊娠を計画し ている女性、妊娠の可能性がある女性は、食事に 加え、サプリメントなどによって付加的に1日あたり 400μgの葉酸の摂取が望まれます。

ただし、サプリ メントのとりすぎには注意が必要です。葉酸はモロヘイヤ、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色 野菜、枝豆や納豆、いちご、焼きのりなどに多く含まれていま す。葉酸は水に溶けやすく熱に弱いので、食品から 摂取する際は、 生で食べる、蒸すなどの調理方法 がおすすめです。

日本でも、抗てんかん薬服用中の女性が妊娠されて、葉酸摂取が不十分で、子供に障害が生じてしまったらどうするのだろうかと心配になります。実際エコチル調査の報告( 対象者:2011年~2014年に登録された母親9万人)では、妊娠前から葉酸サプリメントを摂取できたのはわずか8%と悲劇的な実際が確認されていました。

出典: Obara T, Nishigori H, Noshigori T,et al. Prevalence and determinants of inadequate use of folic acid supplementation in Japanese pregnant women: the Japan Environment and Children’s Study (JECS). J Matern neonatal Med. 2017;30:588–93.

 

 

血液検査でわかるビタミンB群不足

肝胆膵酵素系といわれる AST(GOT)、ALT(GPT)、LDHらもアミノ酸が素材となって体内で合成される物質です。これらが低値を示す場合には、前述ビタミンB6含めB群が不足していることが考えられます。

 

・ビタミンCは毛細血管、骨、膠原繊維といった結合組織の強化に使われます。また、抗ストレスホルモンである副腎皮質ホルモン(アドレナリン)の生成にも寄与します。
・ビタミンAは皮膚や粘膜組織を正常に保つ働きや、成長を促進する働きがあります。
・ビタミンDには、カルシウムの体内への吸収や骨密度を増強する働きがあります。

ビタミンDには。免疫機能を調節する作用があること、近年知られてきました。その一つにはビタミンDによる粘膜機能の強化作用があります。スギ花粉等に対する過剰な結膜や鼻腔中の粘膜での免疫反応は抑制する一方、気道や肺胞に侵入してきた細菌やウイルスによる感染防御作用は促進します。従って風邪、インフルエンザ、今回の新型コロナウイルスによる肺炎管支炎といった呼吸器科感染症にかかりにくくなります。

同様に、腸管内の粘膜の機能性向上作用より、下痢や便秘を繰り返すという過敏性腸症候群や感染性胃腸炎も抑止する作用を発揮します。




出典:メンタル産業医ドクター櫻澤のヘルシーコラム|「あざみ野STYLEvol.43」に掲載


ビタミンDと神経・精神作用

2つの経路から神経・精神作用を強化します。

 

  • 腸管での粘膜保護作用から

ビタミンDには小腸の表面にある上皮細胞と上皮細胞とを、しっかりと結合する作用があります。上皮細胞同士がしっかりと結合されると、小腸のバリアが強固化されます。すると、体内に有害な病原体、水銀や鉛といった重金属、環境ホルモンといわれる内分泌かく乱物質の侵入を阻止しやすくなります。それらの解毒や無害化によって消耗される生理活性物質や・・・仔細なメカニズムは、読まれる方が眠くなるでしょうから中略します・・・簡単にいうと体力を温存できるようになるので、忍耐力が高まります。

逆にビタミンDが足りないと、「リーキーガット(leaky gut)症候群」といわれますが、小腸の上皮細胞間がスカスカになり、不要な有害物質が体内に侵入しやすくなる結果、体内で免疫応答という免疫細胞の出動が引き起こされ、かつそれが持続的に続くことから、「過敏性腸炎」や「海洋性大腸炎」を筆頭とした慢性的な炎症が体内のあちこちで生じてしまいます。と同時に、本来吸収しないといけない栄養素は吸収しにくくなることで、栄養不足となり、これらが相まって体調が崩れてしまいます。

  • カルシウム合成作用から

食事から摂取されたり皮膚で合成されたりしたビタミンDは肝臓や腎臓で活性化されます。すると、腸管からのカルシウムの吸収と腎臓再吸収が促進されます。吸収されたカルシウムは血液中に取り込まれ、血中のカルシウム濃度が上昇します。カルシウムは、NMDA型グルタミン酸受容体をはじめとした大脳皮質や中枢神経系に広く存在するGタンパク質結合受容体・・・仔細なメカニズムは、読まれる方が眠くなるでしょうから中略します・・・簡単にいうと、神経という体内の情報伝達・処理系を円滑にします。体内の情報伝達は電気信号を介して行われています。その電気信号の遅延が「うつ」、整流化されていない電気信号のやり取りが「パニック」とすると、これらを抑止しえるようになります。

 

ビタミンDと骨代謝・・・特に骨粗しょう症防止に

前述②でのカルシウム濃度の上昇によってカルシウムは骨の中に取り込まれやすくなります。あたかもセメントでひび割れたコンクリートの補修をするように、骨密度を高めていきます。

コンクリートがボロボロとなり、鉄骨といった骨組みだけになっていく病気が「骨粗しょう症」です。ボロボロになってからカルシウムを補強しても、ボロボロなコンクリートの補修は難しいように、骨粗しょう症になってからカルシウムを積極的に摂取しても遅いこと、おわかりになるかと。特に女性は、女性ホルモンの分泌が少なくなると閉経するだけでなく、骨からカルシウムが奪われやすくなります。少々奪われても、もろくならないようにする工夫は可能です。それは、思春期以降、積極的にカルシウムと(骨にカルシウムを吸収しやすくさせる)マグネシウムを摂取するだけではなく、骨に吸収されたカルシウムが骨と同化しやすくするための運動(散歩、ウォーキング、縄跳び、ジョギングといった、立位で体重がかかる要素が必要)の励行です。 特に、ビタミンDは皮下脂肪が多いと、せっかく合成されても、皮下脂肪に溶けてしまい使われにくくなることを防止しえます。

 

ビタミンDの多い食材

 

  食材            ビタミンD(単位 ㎍)

あんこうのキモ(生)枚)      110.0

きくらげ(乾燥)        85.4

カワハギ(開き干し)      69.0  

しらす干し(半生)               61.0

        マイワシ(みりん干し)   53.0

焼き鮭                39.4

         マイワシ(生)        32.0

         サンマ           14.9  

マガレイ                             13.0

乾燥シイタケ           12.7

     卵黄              5.9

 

その他マイタケ(干しマイタケ6g中に0.8㎍)、エノキといったキノコ類にも多いです。特にキノコ類は天日干しすると、ビタミンDが増えること、知られています。




出典:メンタル産業医ドクター櫻澤のヘルシーコラム|「あざみ野STYLEvol.42」に掲載

 

・ビタミンEは、体内脂質の酸化防止や細胞膜安定化作用があります。


6. ミネラル(Mineral)

無機質とも呼ばれ、ビタミンと同様に身体の様々な機能の調整を司っています。体内にきわめて微量しか存在していませんが、ミネラルは他の栄養素では補うことができないため必須の栄養素です。
代表的なミネラルにはカルシウム、鉄、ナトリウム、リン、マグネシウム、リチウム、セレン、ヨウ素などがあります。

・カルシウムやリンは骨・歯などの硬組織を形成します。またカルシウムは血液、筋肉、神経の生理機能の調整を行います。柴胡加竜骨牡蠣湯に抗うつ、抗不安、降圧効果があるのは、カルシウムが豊富だからということが判りましょう。

・鉄は酸素を運ぶヘモグロビンの中心に座しています。鉄は酸化しやすいですよね。その性質を生命は活用しているのです。不思議ですよね。
・カリウムには、神経における電気信号の伝達作用や体内の水分調整作用があります。
・リンには酸・塩基平衡の維持といった、生命維持に必要な働きがあります。


出典:日本人の食事摂取基準 2015年版

 



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