メンタル産業医による第16回日本外来精神医療学会報告:大人の自閉症スペクトラム障碍ー北里大学における診断と支援(16/07/10)

メンタル産業医の命名者である櫻澤博文が創業した合同会社パラゴン(東京都港区)。製薬会社による制約が国民の福利厚生を侵害してきたことを問題視している立場でもあります。

出典:2017年度版マネーデータベース『製薬会社と医師』あなたの医者をみつけよう

その立場から、製薬企業の寄附という制約や学会本部からの補助金という圧力を一切受けずに開催されたという第16回日本外来精神医療学会にメンタル産業医として参加したので産業医活動において有用と思われる内容をお届けします。

今回はシンポジウム5「大人の自閉症スペクトラム障碍ー北里大学における診断と支援」に参加して学んだ発達障碍に関する有益な情報を紹介します。

以下、自閉症スペクトラム障碍はASDと略します。

また、相模原市は神奈川県で3番目の政令指定都市になったという責任感からか、北里大学医学部に地域児童精神科医療学という寄付講座をつくっていました。それに応えるように同大学は相模原市の教員への産業精神保健支援も担っていました。

1.北里大学医学部精神科学 宮地英雄医師による臨床集積研究から

・ASDが疑われる患者に対しては「医学的重症度」と「社会的重症度」という指標に基づいた診断、評価、対応が必要。
・安易なASDとの病名告知や本人のみならず支援者である家族、学校、雇用側の意識をミスリードしかねない。
・外部から3年間のうちにASD疑いとして紹介された147名中、本当に確からしいと診断が下せた割合はわずか2割しか存在しなかった。

→ 残り8割は、誤診といえば誤診です。ASDバブルの実際が確認されたわけです。

2.北里大学病院臨床心理室 津崎心也臨床心理士の実際の支援集積報告から

・臨床心理士は「特性評価」という診断補助を心理検査を通じて担っている。適切な特性評価は、ASD患者本人がより良く生きていくための基盤になる。
・「継続的支援」という、社会的重症度を下げる重要な役割も担っている。
・具体的な支援としては、事象や物事を具体的に把握、確認する作業を導入することが秘訣として挙げられる。例えば、“すごく”という表現がなされる際には、どんな時に、どのようなことを指すのか、確認するというように。
・ASDの方が、場面の理解や把握方法に難がある場合には、何をどのように、どれを使って、このように、いつまでに実行したら良いのか、ルール化、ルーティーン化すると良いとのアドバイスがありました。

3.相模原市立療育センター陽光園 山口真人所長から

2005年4月施行の「発達障碍者支援法」14条にある関係機関との連絡調整を担う発達障碍者支援センターの支援実際が紹介されました。
切れ目のない支援の重要性や障碍者基本法の理念にのっとり共生社会の実現に資する内容に、世の中も捨てたものではないとの思いを抱けました。

 

Edison