こちら「メンタル産業医」相談室(2):「クラッシャー上司」にならないために… 心を育てる瞑想法を

健康経営に長けたメンタル産業医集団で知られる合同会社パラゴン(東京都港区)のパートナー産業医で「メンタル産業医」として日本でも第一人者の一人である奥田弘美医師が、日経Goodayにて複数の産業医経験を踏まえたメンタルケア・ヘルスケアに基づいた連載を執筆しています。その第2回目こちら「メンタル産業医」相談室が「ヴィパッサナー瞑想」と呼ばれる心を育てる効果がある瞑想法を紹介しています。

ヴィパッサナー瞑想のやり方】

 

1.床に座布団や布を敷いてあぐらで座るか、椅子に背筋を伸ばして座ります。あぐらをかくのは骨盤から背筋をすっと伸ばす姿勢をつくりやすくするためと、足のしびれを予防し、安定して長時間座るためです。椅子に座る場合は足裏を地面にしっかりと付け、背もたれに寄りかからず、背筋を伸ばして座ってください。

2.手は下腹のあたりにそっと重ねておき、目を静かに閉じます。

3.心が落ち着かないときは、大きな腹式の深呼吸を数回行ってください。

4.次に静かな普通の呼吸に戻しながら鼻から息を吸い込みます。このとき、あなたにとって空気の流れを最も感じやすい鼻先の一点を決めて、そこで空気が鼻腔に触れる「感覚」をしっかり感じます。また息が出ていくときも鼻先で「感覚」を感じます。

5.空気を入ってきたこと、そして出ていくことを鼻先の一点で「感じて」「知り」ながら、静かな呼吸を繰り返します。

6.瞑想を始めると1分もしないうちに思考や感情が生まれてくるでしょう。その思考や感情に気づいてください。そして「来週の商談のことを心配している」「さっきの部下の報告に落胆しイラついている」「理解の悪い上司を思い出して怒りが湧いた」などと湧き上がってきた自分の思考や感情を眺めます。
このとき思考や感情の内部に極力取り込まれず、「自分の感情や思考の塊を、少し上から眺めている」感じで客観視するのがコツです。

7.思考や感情に気づいて眺めたら、また静かに鼻先の呼吸に意識を戻します。強力な思考や感情には取り込まれてしまうこともありますが、「あ、取り込まれていた」と気づいたら、また静かに鼻先の呼吸に意識を戻してください。これを時間が許す限り繰り返してください。

 

 

出典:2017年2月14日発 こちら「メンタル産業医」相談室クラッシャー上司」にならないために… 心を育てる瞑想法を

なおこれら雑念が消去されると、心理的自然体になれることから、集中力や意志力を高め、業務遂行力をも高める効果が得られます。

この点について奥田医師は、以下の注意をなさっています。

“しかしマインドフルネスの本来の目的は、「集中力を高めて仕事の成果を上げること」ではありません。あくまでも副次的な効果として認められる現象であって、本来の目的は「心を育てること」にあります。

この己の「心の成長」 を育成しやすい「ヴィパッサナー瞑想」に注力すると、多種多様な性格の部下の管理も容易化され、そして上司自身の「心の安定」「懐の深さ・温かさ」がも涵養されるとか。

以上の方法論を学ぶと部下を靴のように履きつぶしてしまう「クラッシャー上司」を産業医先から出さなくて済む効果も得られます。