メンタル産業医による厚生労働省:合理的配慮指針事例集【第三版】の紹介(17/03/24)

016年05月11日(水)7:35 PM

健康経営に長けたメンタル産業医で知られる合同会社パラゴン(東京都港区)が、厚生労働省による「合理的配慮指針事例集の【第三版】」を紹介します。

障がい者への合理的配慮を提供する際に参考となる事例が幅広く紹介されています。メンタル産業医と名乗るためには、障がい者の特性や必要な支援、福祉を中心とした行政支援のあり方、行政支援の実際といった情報を把握かつ運用できる必要があります。

そもそも障がい者への法的保護としては2016年(平成28年)4月1日に施行された改正障害者雇用促進法に基づき、すべての事業主には、雇用分野における障がい者への差別が禁止され、合理的配慮の提供が義務付けられました。

厚生労働省は、事業主が、障がいのある方に合理的配慮を提供する際に、参考になると考えられる事例を幅広く収集した上で、それを「事例集」として公表してきていました。

事例が集まったことから第三版が公表されるに至っています。ぜひとも産業医は、これを事業者に紹介することで役立ててもらいたいものです。

 

出典:合理的配慮指針事例集・第三版

 

 

*「合理的配慮」とは?と思われた方は、以下をご参照ください。制度の内容や各種資料などについて、ご紹介されています。

 

参考サイト:文部科学省.資料3:合理的配慮について

 

近年、我が国においては、就労支援が積極的に推進されています。

障がい者雇用数でみるならば、以下のように増加してきています。

2006年(平成18年)  2016年(平成28年)

28.4万人         47.4万人

 

47.4万人という数字は、実雇用率でいうならば1.92%(大企業の雇用率2.12%、中小企業の雇用率1.74%)となり過去最高の増加を示しました。

就労系福祉サービスの利用者数においても、平成20年度と平成26年度との比較において、大幅な伸びが確認できます。
就労移行支援は、16,079人から29,760人、就労継続支援A(仔細は後述)は、6,168人から47,733人、就労継続支援B(同)は、51,514人から196,019人となっています。

この雇用障がい者数の大幅な伸びの背景として、障がい者権利条約への署名、締結があります。

障がい者権利条約は、2006(平成18)年12月13日、国連総会本会議において採択され、 2008(平成20)年5月3日に発効されました。
この条約の内容は、原則(無差別、平等、社会への包容等)、政治的権利、教育・健康・労働・雇用に関する権利、社会保障、文化的な生活・スポーツへの参加、国際協力、締約国による報告等、幅広いものとなっています。

我が国は、障がい者権利条約が採択された翌年の2007(平成19)年9月28日に条約に署名しましたが、条約の締結においては、国内の障がい当事者等から、条約を締結する前に、国内法の整備、障がい者に関する制度改革を進めるべきとの意見が寄せられ、障がい者に関する制度改革を進めてきました。
そして障がい者の要望を受け、共生社会の実現に向け2010(平成22) 年12 月から発達障がい者も「障がい者自立支援法」の対象になりました。

また、身体、知的、精神、発達障がい、難治性疾患をもつ労働者の就労支援は、産業保健だけでは十分に提供出来るものではないので、医療、福祉との連携が大切と考えられます。

そのために2011(平成23) 年8月に改定された「障がい者基本法」では、障がい者の定義が心身機能の障碍に加え、社会的障壁により継続的に日常生活や社会生活において相当の制限を受ける状態にあることも含まれました。

2013(平成25)年6月、障がい者自立支援法が「障がい者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障がい者総合支援法)」に昇華されました。具体的には全ての国民が、障碍の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障がいを理由とする差別の解消を推進することを目的とした「障がい者差別解消法」が成立しました。

2016(平成28)年4月より、「改正障がい者雇用促進法」が施行されました。
改正の概要としましては、事業主に障碍者が職場で働くに当たっての支障を改善するために、「合理的配慮の提供義務」、雇用の分野における障碍を理由とする差別的取扱いを禁止する「障碍者に対する差別の禁止」
2018(平成30)年4月からは、法定雇用率の算定基礎に精神障碍者(発達障碍含む)を加える法定雇用率の算定基礎の見直しが行われます。

それに伴って一般企業が2.2%、国及び地方公共団体が2.5%、教育委員会は2.4%となり、
2021(令和3)年度末までに一般企業は2.3%、国及び地方公共団体は2.6%に、教育委員会は2.5%に引き上げられる予定です。

これは障がい者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲が、従業員50人以上から45.5人以上に変わることを意味します。

しかし喜んでばかりもいられません。雇用義務のある50人以上の企業の約3割が障碍者を全く雇用されていない、また、就労継続支援においては、1年間に1人も一般企業への就職者が出ていない事業所がA型事業所で約7割、B型事業所で約8割となっています。今後の障碍者雇用においては、

雇用ゼロ企業を「雇う」企業へ転換させる、

障がい者の職域拡大と職場環境の充実、

ジョブコーチ等からのキャリアコンサルティングの充実

以上が大切と考えられており、それらに向けた対策を実効性あるものにするために福祉政策が整備されてきています。

 

出典:福島弘達.キャリアコンサルティングに活かせる 働きやすい職場づくりのヒント 第9章働きやすい職場づくりに向けた障碍者支援 第2節 共生社会に向けてー障碍者の就労支援における現状と背景金剛出版