健康経営㉟|来る「第11次職業能力開発基本計画」の中身とは

当「健康経営」シリーズ第30報にて「労働経済政策における人財開発政策のあり方」健康経営に長けたメンタル産業医で知られる合同会社パラゴン(東京都港区)が紹介したのは2020年10月6日でした。そこでは以下参考書で紹介した人財統括官による「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会」で「職業能力開発促進法」の改正内容や次期「職業能力開発基本計画」の骨格が議論されたこと紹介しました。

出典:金剛出版|キャリアコンサルティングに活かせる 働きやすい職場づくりのヒント

「職業能力開発基本計画」とは

職業能力開発にかかる国の制度の根幹であり、5年毎に刷新されてきていました。しかしながらコロナ禍もあり、「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会」の継続開催に時間を要しました。労働政策審議会(人材開発分科会(旧職業能力開発分科会))に報告がなされたのは2020年10月26日になります。コロナ禍の下、DXの進展に伴い縮小する業務への就労機会は、いよいよ欠乏していくことでしょう。成長分野にキャリアチェンジ(転職)できるにも、人工知能への理解やプログラミング開発を促す職業訓練を通じて、必要とされる技能の修身が必須です。その流れを受け、12月18日に「第11次職業能力開発基本計画について」が第23回労働政策審議会人材開発分科会の議題として挙げられました。

出典:厚生労働省 第23回労働政策審議会人材開発分科会 

 

「第11次職業能力開発基本計画」とは

society5.0社会の到来を目指すデジタル技術の社会実装の進展が進むことで、武漢発新型病毒より危険な新型鳥インフルエンザが中国から再来したとしても、対応可能だということを日本産業衛生学会のシンポジウム(2020年7月6日付け「労働新聞」で報道済)に加え、過労死等防止対策推進シンポジウムにて当社代表は2020年年末、取り上げてきました。

 

出典:内閣府ホーム > 内閣府の政策 > 科学技術政策 > Society 5.0 

人生100年時代の到来による労働者の職業人生の長期化など、労働者を取り巻く環境は、今以上に大きく変化していくことも想定されています。

対して「第11次職業能力開発基本計画」では大きな4つの柱のうちの1つとして「産業構造・社会環境の変化を踏まえた職業能力開発の推進」と位置付けました。産業構造の変化にともなって訓練内容を柔軟に変化進展させなければなりません。
具体的には第四次産業革命などデジタル技術の進展を踏まえ、IT(情報技術)人材など時代のニーズに即した人材育成を強化するとともに、能力開発において新たな技術の活用を図る計画を立てていきます。

関連政策としては、教育訓練給付におけるIT分野の講座充実に向けた関係府省の連携、公的職業訓練におけるIT活用スキル・ITリテラシー等の訓練を組み込んだ訓練コースの設定の推進、 オンラインによる公的職業訓練の普及、ものづくり分野の職業訓練におけるAR・VR技術等の新たな技術の導入に向けた検討、企業・業界における人材育成の支援、中小企業等の生産性向上に向けたオーダーメイド型の支援の実施が挙げられています。

つまりはITを活用しながら、課題を解決できるような人材を育成することが重要視されました。

二つ目の柱として「労働者の自律的・主体的なキャリア形成の推進」が掲げられました。労働環境の変化に応じて労働者が主体的に能力の向上やキャリアの形成に取り組むための支援があることとは、以下にて一口に教育訓練給付金においても、
「特定一般教育訓練給付金」
「専門実践教育訓練給付金」という、「訓練前キャリアコンサルティング」を受けた後、針路や指針を得た末に、自己選択の上で確保できる支援まであること紹介しています。

参考サイト:産業医による健康経営対策㉘|第4次産業革命進展中:事業再構築補助金、拡大充実されつつある教育訓練給付金制度やプロティアン・キャリアの紹介

 

関連政策としては、企業業へのセルフ・キャリアドックの導入支援、
夜間・休日、オンラインを含めた労働者個人がキャリアコンサルティングを利用しやすい環境の整備、
キャリアコンサルタントの専門性の向上や専門家とのネットワークづくりの促進
 IT利活用等の企業横断的に求められる基礎的内容を中心とする動画の作成・公開、
教育訓練給付制度の対象講座に関する情報へのアクセスの改善
教育訓練休暇や教育訓練短時間勤務制度の普及促進、社内公募制などの労働者の自発性等を重視した配置制度の普及促進が示されています。

加えて「第11次職業能力開発基本計画」では、3つ目の柱に「労働市場インフラの強化」が掲げられました。
労働者の自律的・主体的なキャリア形成を支える基盤として、また、雇用のセーフティネットとして、公的職業訓練や職業能力の評価ツールの充実をはかることが、4つの柱の一つ、「労働市場インフラの強化」として打ち出されました。

関連政策としては、地域域訓練協議会等を通じた産業界や地域の訓練ニーズを反映した職業訓練の推進、
産学官が連携した地域コンソーシアムの構築・活用促進
 技能検定制度・認定社内検定の推進、
ホワイトカラー職種における職業能力診断ツールの開発、
日本版O-NETとの連携
ジョブ・カードの活用促進
デジタル技術も活用した在職者・離職者、企業等への情報発信の強化が示されています。

これまで日本では、終身雇用という長期雇用という慣行を背景に、労働者に対するその職業能力開発は、その労働者の所属先である事業者が主体を担ってきました。しかし人材が成長し育ちあがるまで20年かかるとして、その20年後にその育成された能力が必要とされる労働市場があるかというと、ありません。1980年代、証券取引所で「場立ち」といわれる方々が手指を使って株式の売買発注の媒介をしていましたが、今やスマホでかつ1株単位未満からでも発注可能なように。

最後の柱は「全員参加型社会の実現に向けた職業能力開発の推進」です。誰もが活躍できる全員参加型社会の実現に向けて、個々の特性やニーズに応じた職業能力開発の機会を提供し、すべての労働者が少しずつでもキャリアアップできるよう支援を充実することが示されました。

これまで非正規雇用の下、雇用保険への未加入者は職業訓練を受ける機会は乏しいものでした。それを手当をもらいながらの職業訓練を受けられるように、以下で紹介しているように教育訓練給付金制度といった求職者支援制度も拡充されつつあります。それらを更に拡大する見込みです。

関連政策としては、企業での非正規雇用労働者のキャリアコンサルティングや訓練の実施、求職者支援訓練の機会の確保
育児等と両立しやすい短時間訓練コースの設定、
訓練受講の際の託児支援サービスの提供の促進
就業経験の少ない若者に対する日本版デュアルシステムや雇用型訓練の推進、
地域若者サポートステーションにおけるニートや高校中退者等への支援の強化
高齢期を見据えたキャリアの棚卸しの機会の確保、中小企業等の中高年労働者を対象とした訓練コースの提供○ 障害者の特性やニーズに応じた訓練の実施、
キャリア形成の支援○ 就職氷河期世代、
外国人労働者など就職等に特別な支援を要する方への支援が示されていました。

出典:厚生労働省 第23回労働政策審議会人材開発分科会 第11次職業能力開発基本計画(令和3年度~令和7年度)のたたき台(概要)

参考サイト:厚生労働省.人材開発 明日を拓(ひら)く人を創(つく)る