健康経営を実践する産業医に対して判断が求められることとして、企業でpcr検査を行ったものか、抗原検査が良いのかが挙げられます。判断を行うためには、検査前確率がわからなければなりません。
厚生労働省が6月に3都府県で計約8千人に行った新型コロナウイルスの抗体検査では、抗体保有率は東京0.1%、大阪が0.17%、宮城0.03%でした。東京だと千人に一人が、知らないうちにコロナに感染していた結果でした。
そんな中、東京とも生活圏である神奈川県横須賀市が2020年7月22日に、無作為抽出した市民2千人を対象に行った新型コロナウイルス抗体検査の結果を発表しました。実際には48.5%の964人が検査を受け、うち10人と1.04%が抗体検査陽性でした。
【実施時期】7月3~15日。
【抗体陽性者 内訳】男性7人、女性3人。
年齢別
20代1人
30代1人
40代1人
50代2人
60代2人
70代2人
80代1人。
就業者は5人で、うち2人が市外勤務だった。
【参考情報】横須賀市保健所による新型コロナウイルスの累計PCR陽性者は7月21日までで69人。全市民に対する陽性率は0.018%
【考察】 発症率は 0.018÷1.04より0.017 すなわち1.7%(100人中1.7人)しか発症していない可能性がある結果といえます。
図は横浜市衛生研究所による季節性インフルエンザのPCR検査結果です。数か月で実に多様な変異を行っていることがわかります。新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスに区分されます。同じように変異しているものとみなせます。
うち強毒性に変異したウイルスは、感染した人をすぐ弱らせ、症状を発現させますので、その人は、すぐ隔離され、その強毒性変異ウイルスは、子孫を残せません。
対して 弱毒性へと変異したウイルスは、感染した人に症状を発生させにくいため、その人は知らず知らずのうちに、多くの人にその弱毒性変異ウイルスをうつしていきます。その弱毒性変異ウイルスが、世に多くひろまっていくことは、2009年から2010年にかけて世の中を震撼させた豚由来新型インフルエンザ AH1N1 pdm がその後、Aソ連型を絶滅させ、2019/2020シーズンの流行主体とまでなっている実際からも推測できます。これが種の進化であり、健康経営に長けた産業医なら理解可能です。しかしながら人生の質を高める支援を行っている介護保健福祉施設にてクラスターが生じて、人生の量を増やす医療施設に搬送されてしまうと、この考えとは逆の反応を臨床医いがちです。元から体力も気力も低下した要介護者を目の前にすると、コロナがそうさせてしまったと誤解してしまうのです。つまり、弱毒化していても、目の前の患者は その体調が元からだったという理性ではなく、感覚で判断してしまいます。