健康経営支援産業医によるストレスチェック制度|その5 実施前の事前準備

2015年12月から事業者に対して実施義務が課せられたストレスチェック制度。
その構築と全般的実施にて健康経営優良法人認定まで導く合同会社パラゴン(東京都港区)が解説するシリーズその5です。

ストレスチェック実施前に準備すべきことを、実施フローに基づいて解説します。

まずは実施前準備



1>この「ストレスチェック」は、会社という組織のメンタルヘルス水準、更に向上させる きっかけ の一つなのだという位置づけを社内の関係者に周知することから始めましょう。例えば(安全)衛生委員会を始めとした事業所内での情報提供を行うことも大切です。

2>(安全)衛生委員会で、ストレスチェックの実施に当たって、事前に審議・協議する項目としては以下が挙げられます。
① ストレスチェックを実施する目的(労働者自身によるセルフケア及び職場環境改善を通じメンタルヘルス不調の未然防止を図る一次予防を目的としたものであって、不調者の発見が一義的な目的ではないという法の目的の明示)。
② ストレスチェックの実施体制(実施者、共同実施者、及び実施事務従事者(実施者を除く)の明示)。
③ ストレスチェックの実施方法(使用する調査票、評価基準・評価方法を含む)。
④ 個人のストレスチェック結果に基づく集団的な分析の方法(分析対象とする集団の規模の基準を含む)。
⑤ ストレスチェックを個々人が受けたかどうかの情報の取扱い(事業者による把握、受検勧奨を含む)。
⑥ 個人のストレスチェック結果及び集団的な分析結果の利用方法(ストレスチェックの実施者による面接指導の申出の勧奨、集団的な分析結果の共有範囲を含む)。
⑦ 実施事務従事者による個人のストレスチェック結果の保存方法(保存者、保存場所、保存期間、セキュリティの確保を含む)。
⑧ 個人のストレスチェック結果の事業者への提供内容及び労働者の同意の取得方法。
⑨ ストレスチェックの実施者又は事業者による個人のストレスチェックに係る情報の開示、訂正、追加又は削除の方法(開示等の業務に従事する者の守秘義務を含む)。
⑩ ストレスチェックに係る情報の取扱いに関する苦情の処理方法。
⑪ 労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること。
⑫ ストレスチェックに関する労働者に対する不利益取扱いの防止に関すること。

3>法令等に則ることが可能になるように、事業場での取扱いを内部規定として策定す
ることも大切です。そして労働者にあらかじめ周知するようにしましょう。

4> 外部機関にストレスチェックの実施そのものを業務委託する際には、契約書の中で
委託先の実施者、共同実施者及び実施事務従事者(実施者を除く)を明示することも大切になります。そしてストレスチェックの実施における補助的な業務を外部機関に委託する場合にも、契約書の中で委託先の実施事務従事者を明示することが大切になります。

5>ストレスチェックに係る情報の取扱いに対する苦情や相談を受け付けるための窓口
設置も考慮しましょう。その場合の窓口を、外部機関にお願いする場合も含め、「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」の第3の3にあるとおり、苦情や相談に適切に対応することができるよう、必要に応じて当該窓口のスタッフが、産業保健スタッフと連携を図ることができる体制整備が求められます。

出典:厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課産業保健支援室.改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について

 

ストレスチェックの実施フロー

1>ストレスチェックにおいては質問票を用いることになっています。その質問票は57項目の「職業性ストレス簡易調査票」が原型となり、近日公開予定です。
2>実施間隔は1年以内ごとに1回以上、実施することになります。1年以内に複数回実施することや繁忙期に実施することに関しては、労使で合意すれば可能です。
3>一般定期健康診断と同時に実施することも可能です。
4>ストレスチェックを一般定期健康診断と同時に実施する場合は、
①ストレスチェックには労働者に検査を受ける義務がないこと
②検査結果は本人に通知するものの、本人の同意がなければ事業者には通知しない
以上の事項は間違いやすいポイントですので、事前に丁寧に説明を加える必要があります。
5>ストレスチェックの調査票と一般定期健康診断の問診票とは別にしておいた方が良いでしょう。
更には、労働者の記載結果も、ストレスチェックに係る部分と一般定期健康診断に係る部分とは一緒にしてはなりません。
6>ICT を用いる場合は、一連の設問であっても、ストレスチェックに係る部分と一般定期健康診断に係る部分の区別を明らかにするなど、受検者がストレスチェックの調査票と一般定期健康診断の問診票のそれぞれの目的や取扱いの違いを認識できるようにしなければなりません。

出典:厚生労働省労働基準局安全衛生部.労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度に関する 検討会報告書21ページ

 

なおストレスチェック制度の実施に必要な準備内容は、労働安全衛生法第18条と労働安全衛生規則第22条によると以下の2点です。

  • 事業者による方針の表明
  • 衛生委員会での調査審議

衛生委員会で事業者の方針を決めるわけですから、実質、衛生委員会での調査審議からまずは実施しましょう。

 

ストレスチェック制度の実施に際してのあたって肝要事項

実施を業者等に丸投げするのではなく、事業者の責任において、実施計画の策定、実施者は委託先業者との連絡調整、計画に基づく実施管理をきちんと社内で担える人材を、実施事務従事者として指名・選任するなど、事業場としての実施体制を、整備することです。したがって業者に丸投げの企業は、就労先としては大丈夫なのか吟味が必要と思われます。