メンタル産業医ドクター櫻澤のヘルシーコラム|「AZ STYLE vol.57」に掲載

2025年問題への処方箋 その6 パーキンソン様症状に対する微弱超音波刺激による効果

日本では、太平洋戦争終結後のベビーブーマー世代である団塊世代がみな、75歳以上になったという「2025年問題」に突入して半年が経過しました。2024年における日本での出生数は68万人に過ぎないという、過去のピークからすると200万人もの人口が、一年で失われている絶滅に向けた人口統計さえ示されました。更には「2040年問題」という、団塊ジュニア世代が65歳以上となり、人口の3分の1を65歳以上が占有する時代も近づいてきています。外国人は、社会保険は支払っていないのに、出産一時金を、本人が海外にいても受給できる反面、土地取得後の固定資産税や相続税を免除とするような、日本人ファーストと相反する、日本人を搾取することで成立するような政策はなしにしてもらいたいものです。

そんな中、

2024年末、Alzheimer Disease & Associated Disorders誌にレヴィ小体型認知症(DLB)罹患者における認知機能とパーキンソン様症状の2面に対する微弱超音波刺激による改善効果の検証論文が掲載されました。AZ Style 56号号ではうち認知機能への効果を紹介しました。同57号ではパーキンソン様症状への効果を記述したところ掲載されましたので、投稿文本文を紹介します。

 

背景
DLB
は、神経病理学的にはパーキンソン病(PD)と近傍した神経変性疾患です。DLBの治療に関するガイドラインでは、L-DOPAやコリンエステラーゼ阻害薬使用が推奨されています。しかし、投与によって逆に症状が悪化する報告も確認されており、継続的治療には困難が伴う場合も少なくありません。実際、罹患してから2年前後と、比較的初期段階から、投薬を受けても効果が期待できない方においての心的負担と、その介護者の身体的負荷はどれだけ大変でしょうか。対して超音波には神経変性疾患における神経調整の可能性があること、当シリーズでも報告してきました。今回、薬物治療で症状の緩和がみられないDLB患者に対して、微弱超音波刺激によるパーキンソン様症状への効果について紹介します。

 

対象者

改訂版DLB臨床診断基準にてDLBと診断され、コリンエステラーゼ阻害薬またはL-DOPA(単独または併用)で治療され、除外基準に該当せず、説明に対して同意が得られた12名のうちパーキンソン様症状がみられた7名。

 

介入内容

4週間のプラセボ刺激の後、8週間の実際の超音波刺激が行われ、中止4週間後の状況確認が行われました。

 

測定・評価項目

以下を481216週後に第0週の測定結果と比較。

・パーキンソニズム(パーキンソン様症状):Movement Disorder Society Unified PD Rating ScaleMDS-UPDRS)のPart III

・日常活動度:Barthel Index(身体能力および日常活動度を表す指標)

・介護者の負担:NPI-Qの苦痛スコアおよび日本語版Zarit Caregiver Burden Interviewの短縮版(J-Zarit-8

 

結果と考察

MDS-UPDRSPart IIIからみたパーキンソン様症状は、超音波刺激8週間介入時はp=0.0176と統計学的に有意な改善が示されたものの、中止後4週目にはその効果は確認できませんでした。なお確認された改善症状としては手の回内&回外運動がp=0.0313と顕著でした。

Barthel Indexからみた日常活動度については、超音波刺激介入による影響は確認されませんでした。

・介護者の負担度を把握するNPI-Qにおける苦痛スコアとJ-Zarit-8スコアの双方とも超音波刺激開始8週目においてそれぞれp=0.0117とp=0.0082と統計学的に有意な改善結果が確認されました。さらに、J-Zarit-8において、介入中止後も有意な改善傾向が保持(p=0.0403)されていました。

 

まとめと講評

薬物治療で症状緩和が確認されていないDLB患者におけるパーキンソン様症状に対して、微弱超音波刺激は一定の改善効果が示唆された結果でした。もちろんパーキンソン様症状を示した対象者は7人と症例数は少ないことは否めない事実です。しかしながら投薬治療では、認知機能の変動に伴いパーキンソン様症状の一次的悪化という副作用が生じる報告があるものの、当研究ではMDS-UPDRS Part IIICFIの関連性検討が行われていますが、負の関係は示されませんでした。つまりは中には悪化を示すこともある投薬加療と異なり、この微弱超音波刺激は、パーキンソン様症状を認知機能の変化とは独立した改善因子である可能性があります。そして超音波刺激による患者の症状の改善に比して、介護者の負担の軽減も確認されました。CFIおよびJ-Zarit-8を除き、積極的な刺激期間中に有意に改善された指標は、追跡調査時には改善が見られませんでした。効果は持続的ではなく、超音波治療期間中のみ効果があることを意味します。継続的利用が必要ということになるものの、

罹患して時間が経過していないものの、薬効が得られず失望している方においては、希望の星となることでしょう。

 

 

  • Manabe, Yuta. Clinical Utility and Safety of an Ultrasonic Head Stimulator in Dementia With Lewy Bodies. Alzheimer Disease & Associated Disorders 10:1097, November 26, 2024.

 

出典:AZ STYLE 2025 SUMMER Vol.57