MIRROR(メンタルヘルス改善意識調査票)とは
ストレスチェック制度では、労働者本人への結果通知や必要に応じた医師による面接指導に加え、職場全体のストレス要因を把握し、職場環境改善につなげることが重要です。
その際に活用できる手法の一つが、メンタルヘルス改善意識調査票(MIRROR)です。
MIRRORは、職場環境について労働者が改善の必要性を評価し、職場で優先的に取り組むべき課題を明らかにするための調査票です。
厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」でも、職場環境改善に役立つ手法として紹介されています。
ストレスチェック制度の導入と職場環境改善を支援する合同会社パラゴンが、その特徴と実務上の活用方法を解説します。
【厚生労働省・原典】労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(PDF)
MIRRORの45項目と評価方法
MIRRORには、望ましい職場環境の状態を示す45項目が設けられています。
労働者は各項目について、次の4つから回答します。
- 実現されており改善は不要
- できれば改善が必要
- ぜひ改善が必要
- この職場とは関係がない
回答結果から、改善を求める割合である「要望率」や、望ましい状態が実現されている割合である「実現率」を把握します。
これらを基に改善の優先順位を検討し、職場で話し合いながら具体的な改善計画を策定します。
厚生労働省のマニュアルでは、要望率と実現率の上位項目を参考に、職場ごとに討議して改善計画を検討する方法が紹介されています。
MIRRORの特徴は、ストレスの程度を測定すること自体ではなく、労働者が必要と考える職場環境改善策を把握できることです。
参考:MIRRORに関する過去の公開資料(インターネットアーカイブ)
職業性ストレス簡易調査票とMIRRORの違い
ストレスチェック制度では、職業性ストレス簡易調査票などを使用して、仕事のストレス要因、心身のストレス反応、周囲からの支援などを把握します。
厚生労働省は、職業性ストレス簡易調査票の57項目版を公開しています。また、職場環境をより幅広く評価するための新職業性ストレス簡易調査票も、実務上の選択肢となります。
一方、MIRRORは、労働者が職場環境のどの部分を改善してほしいと考えているかを把握するための補完的なツールです。
| 比較項目 | 職業性ストレス簡易調査票 | MIRROR |
|---|---|---|
| 主な目的 | ストレス要因、ストレス反応、周囲の支援などの把握 | 職場環境改善に対する労働者の要望の把握 |
| 主な活用場面 | 個人への結果通知、集団分析 | 改善課題の選定、職場での話し合い |
| 得られる情報 | 職場のストレス状況や健康リスクに関する情報 | 改善の要望率、実現率、優先順位 |
| 法定制度との関係 | 必要な要件を満たす調査票を使用してストレスチェックを実施 | 法定ストレスチェックを補完する職場環境改善ツール |
したがって、MIRRORを実施しただけで、法定ストレスチェックを実施したことにはなりません。
ストレスチェックの集団分析結果とMIRRORの改善要望を組み合わせることで、健康リスクの高い職場を把握するだけでなく、具体的な改善策を検討しやすくなります。
健康経営優良法人2027・ホワイト500の認定要件とストレスチェック
特定の調査票を使用するだけでは認定されない
従来、本記事では「80項目版や120項目版を使用しないとホワイト500に入れない」と紹介していました。
しかし、健康経営優良法人認定制度は、年度ごとに公表される認定要件や健康経営度調査票に基づいて審査されます。
したがって、特定の項目数のストレスチェック調査票を使用しているかどうかだけで、ホワイト500の認定可否が決まるという説明は適切ではありません。
健康経営優良法人2027の大規模法人部門では、健康経営度調査票への回答と認定要件に基づく審査が行われます。
ホワイト500を目指す企業では、単に調査票を変更するのではなく、最新の認定要件と健康経営度調査票を確認し、ストレスチェックの結果を健康経営施策の改善に活用できる体制を整えることが重要です。
【健康経営優良法人認定事務局】大規模法人部門の申請・認定要件
【健康経営優良法人認定事務局】令和8年度健康経営度調査票サンプル・申請関連資料
認定を目指す企業が実施すべき対策
合同会社パラゴンでは、次のような対応を推奨します。
- 現行の認定要件を確認する:大規模法人部門・中小規模法人部門の区分を確認し、当該年度の認定要件と調査票を基準に自社の取り組みを点検します。
- 法定ストレスチェックを適切に実施する:実施体制、実施者、個人情報の保護、結果通知、医師による面接指導などを確認します。
- 集団分析を実施する:職場や部署のストレス状況を把握し、経年変化も確認します。
- MIRRORなどを用いて改善要望を把握する:ストレス要因が存在する職場で、どのような改善が求められているかを検討します。
- 改善策を実行し、効果を評価する:衛生委員会等で課題を共有し、責任者、実施期限、評価指標を明確にします。
なお、上記は認定に向けた実務上の推奨事項であり、すべてがホワイト500の独立した必須認定要件であるという意味ではありません。
健康経営の取り組みを認定取得だけで終わらせず、労働者の健康と働きやすさの改善につなげることが重要です。
関連サービス:合同会社パラゴンの健康経営支援
2026年公表:小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル
2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、従来は努力義務であった労働者数50人未満の事業場についても、ストレスチェックの実施が義務化されることになりました。
施行日は2028年4月1日です。
厚生労働省は2026年2月25日、小規模事業場に適した実施方法を示す「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表しました。
同マニュアルでは、小規模事業場でも労働者のプライバシーを保護しながら、現実的で実効性のあるストレスチェックを実施するための考え方が示されています。
2026年3月には、マニュアル概要版や周知リーフレットも公表されています。
【厚生労働省】小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル公表ページ
【こころの耳】50人未満の事業場向けストレスチェック制度・マニュアル・支援情報
2026年6月:集団分析の実施方法に関する制度整備
厚生労働省は2026年6月30日、ストレスチェックの集団分析の実施方法について、労働安全衛生規則の改正を公表しました。
集団分析は、職場のストレス状況を把握し、職場環境改善を検討するために重要です。
一方、少人数の部署では、集計結果から特定の労働者の回答内容が推測されるおそれがあります。
厚生労働省の小規模事業場向けスタートガイドでは、集団の人数が10人を下回る場合、原則として事業者は集団分析結果の提供を受けてはいけない旨が説明されています。
ただし、実際の集計・提供方法は、最新の法令、通達、マニュアルに従って判断する必要があります。
小規模事業場では、個人が特定されない集計単位の設定、外部委託先との役割分担、結果の利用目的の明確化が特に重要です。
【厚生労働省】ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策(2026年6月30日の改正通達・リーフレット掲載)
【厚生労働省・労働局】小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル スタートガイド(PDF)

MIRRORを活用した職場環境改善の具体的な進め方
第1段階:ストレスチェックの集団分析を確認する
仕事の量的負担、仕事の裁量、上司や同僚の支援などの状況を確認し、改善の必要性が高い職場を把握します。
単年度の結果だけでなく、可能な範囲で過年度の結果とも比較します。
第2段階:MIRRORで労働者の改善要望を把握する
職場環境について、労働者が改善を必要と考えている項目を調査します。
要望率が高い項目を把握するとともに、職場ごとの業務実態も確認します。
第3段階:職場環境改善の検討会を開催する
管理監督者、労働者、産業保健スタッフ等が、個人情報を保護した集計結果を基に改善課題を検討します。
例えば、業務量の偏りが大きい職場では業務配分の見直し、相談機会が不足している職場では定期的な面談や情報共有方法の改善などを検討します。
第4段階:実行可能な改善策を決める
改善策ごとに、担当者、実施期限、必要な資源、評価方法を決めます。
改善計画は衛生委員会等で共有し、事業者による必要な対応につなげます。
第5段階:改善結果を評価する
次回のストレスチェックやMIRRORの結果を参考に、改善策が実行されたか、労働者の評価や職場の状況が変化したかを確認します。
結果が改善しない場合は、改善策の内容や実施方法を再検討します。
厚生労働省の資料でも、ストレスチェック、MIRRORを用いた事前検討、ストレス判定図等の作成、職場環境改善検討会、改善の実施と評価という流れが紹介されています。
【厚生労働省・こころの耳】MIRRORを活用したストレスチェックと職場環境改善の実践資料(PDF)
小規模事業場ではどのような対策から始めるべきか
50人未満の事業場では、専門スタッフや実施体制の確保が難しい場合があります。
そのため、2028年4月の義務化に向けて、次の準備を進めることが有用です。
- ストレスチェックの実施を担当する体制と外部委託先の検討
- 実施者、事務従事者、事業者の役割の明確化
- 個人情報の保護と不利益取扱い防止のルール整備
- 高ストレス者への医師面接指導につながる手順の整備
- 集団分析を行う場合の集計単位と結果提供方法の確認
- 集団分析や労働者の意見を職場環境改善につなげる仕組みづくり
MIRRORは、職場環境改善の課題を整理するための選択肢となりますが、少人数職場では回答内容から個人が推測されないよう配慮が必要です。
また、MIRRORの実施自体が法定義務というわけではありません。まずはストレスチェック制度を適切に実施する体制を整え、その上で職場の実情に応じて改善手法を選ぶことが重要です。
ストレスチェックとMIRRORの活用を専門家が支援
ストレスチェックは、実施して終わりではありません。
集団分析で課題を把握し、労働者の意見を踏まえ、改善策を実行して評価することで、職場のメンタルヘルス対策の実効性を高められます。
合同会社パラゴンでは、産業医・労働衛生コンサルタントとしての専門性を活かし、ストレスチェック制度の整備、集団分析の活用、職場環境改善、健康経営支援について相談に対応しています。
参考資料・公的資料
- 厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」:MIRRORの45項目、要望率・実現率、改善計画への活用を確認できます。
- 厚生労働省「ストレスチェック関係法令等」:関係法令、調査票、参考資料を確認できます。
- 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表します(2026年2月25日):50人未満の事業場における実施体制と実施方法を確認できます。
- 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」:2028年4月1日の義務化と2026年6月30日の集団分析に関する改正資料を確認できます。
- こころの耳「50人未満の事業場向けストレスチェック制度」:実施マニュアル、概要版、周知リーフレット、支援情報を確認できます。
- 厚生労働省・こころの耳「MIRRORを活用した職場環境改善の実践資料」:ストレスチェックから改善活動までの流れを確認できます。
- 健康経営優良法人認定事務局「大規模法人部門の申請」:健康経営優良法人2027の申請情報を確認できます。
- 健康経営優良法人認定事務局「申請関連資料」:令和8年度健康経営度調査票サンプルなどを確認できます。
関連書籍
職場環境改善とストレスチェック後の対策については、合同会社パラゴンが紹介する次の書籍も参考になります。


最終確認:2026年10月12日。制度の運用や認定要件は改正・更新される場合があります。申請・実施の際は最新の公的資料をご確認ください。
【無料PDF】健康経営優良法人2027・申請後から始める職場改善 実務ガイド
健康経営優良法人2027の申請を終えた企業に向けて、次年度の健康経営に役立つ「職場改善の5ステップ」と、ストレスチェック・MIRRORの比較をまとめた実務ガイド(A4・全2ページ)を無料公開しています。
資料提供:合同会社パラゴン/監修:櫻澤博文(産業医・労働衛生コンサルタント)

