ストレスチェック その10|ストレスチェック制度に関する省令等の紹介
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ストレスチェック その10|ストレスチェック制度に関する省令等の紹介

2021年11月19日(金)8:51 PM

ストレスチェック制度(ストレスチェック及び面接指導)についての解説シリーズその10です。

厚生労働省は、平成26年6月25日に公布された労働安全衛生法の一部を改正する法律により、新たに設けられた「ストレスチェック制度」の具体的な内容や運用方法を定めた省令を公布するとともに、告示、指針(心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針)を定め公表しています。

ストレスチェック制度関係の省令。

ストレスチェック制度に関する省令(労働安全衛生規則の一部改正)のポイント

1 省令の内容

(1) 産業医の職務

 ○ 産業医の職務に、「ストレスチェックの実施」、「ストレスチェックの結果に基づく面接指導の実施」、「面接指導の結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること」を追加。

(2) 検査の実施などに係る規定の整備

 ○ 事業者は、常時使用する労働者に対して、1 職場におけるストレスの原因に関する項目、2 ストレスによる心身の自覚症状に関する項目、3 職場における他の労働者による支援に関する項目について、毎年1回定期的に検査を行わなければならない。

 ○ 検査の実施者は、医師または保健師のほか、厚生労働大臣が定める一定の研修を修了した看護師または精神保健福祉士とする。ただし、検査を受ける労働者について、解雇などの直接的な人事権を持つ監督者は、検査の実施の事務に従事してはならない。

 ○ 事業者は、労働者の同意を得て、検査の結果を把握した場合、この結果の記録を作成し、5年間保存しなければならない。それ以外の場合 は、事業者は、検査を行った実施者による検査結果の記録の作成、検査の実施の事務に従事した者によるこの記録の保存が適切に行われるよう、必要な措置を講 じなければならない。

 ○ 検査結果は、検査の実施者から、遅滞なく労働者に通知しなければならない。

 ○ 検査の実施者が、検査結果を事業者に提供することについて、労働者から同意を取得する場合は、書面または電磁的記録によるものでなければならない。

(3) 検査結果の集団ごとの分析などに係る規定の整備

 ○ 事業者は、実施者に、検査の結果を一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めるとともに、この分析結果を勘案 し、必要と認められる場合は、その集団の労働者の実情を考慮して、この集団の労働者の心理的な負担を軽減するため、適切な措置を講ずるよう努めなければな らない。

(4) 検査結果に基づく面接指導の実施などに係る規定の整備

 ○ 検査結果に基づく面接指導の対象となる労働者の要件は、「検査の結果、ストレスの程度が高い者」で、「検査を行った実施者が面接指導の実施が必要と認めた場合」とする。

 ○ 労働者が検査結果の通知を受けた後、面接指導の申し出を遅滞なく行うとともに、事業者は、労働者から申し出があった場合は、遅滞なく面 接指導を実施しなければならない。また、面接指導の実施者は、面接指導の対象となる要件に該当する労働者に対して、面接指導の申し出を行うよう勧奨するこ とができる。

 ○ 医師は、面接指導を行うに当たっては、この労働者の勤務状況や心理的な負担の状況などを確認しなければならない。

 ○ 事業者は、面接指導の結果の記録を作成し、これを5年間保存しなければならない。

 ○ 面接指導の結果に基づく医師からの意見聴取は、面接指導が行われた後、遅滞なく行わなければならない。

(5) その他の事項

 ○ 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、検査、面接指導の実施状況などについて、毎年1回定期的に、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

2  施行 日

  平成27年12月1日

 

 ストレスチェックの実施者に関し厚労大臣が定める研修に関する告示のポイント

1 告示の内容

○ ストレスチェックの実施者のうち、看護師または精神保健福祉士について、労働安全衛生規則第52条の10第1項第3号の厚生労働大臣が定める研修は、次の各号に定めるところにより行われる学科研修(これに相当する研修で、平成27年12月1日前に開始されたものを含む)とする。

    一 次のイからハまでに掲げる科目について、それぞれイからハまでに定める時間以上行われるものであること。

       イ 労働者の健康管理 2時間

       ロ 事業場におけるメンタルヘルス対策 1.5時間

       ハ 事業場における労働者の健康保持の増進を図るための労働者個人、労働者の集団に対する支援の方法 1.5時間

    二  前号の研修を適切に行うために必要な能力を有する講師により行われるものであること。

    三 前二号に定めるもののほか、研修の実施について必要な事項は、厚生労働省労働基準局長の定めるところによるものであること。

2  適用日

平成 27 年 12 月1日


また常時50人以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回、定期に検査及び面接指導の実施状況等について、所轄労働基準監督署長に報告しなければならないことになることと出典:定期健康診断における有所見率の改善に向けた今後の取組について(平成22年3月25日 基発0325第1号)を紹介します。
 
抜粋すると、以下とあります。

 都道府県労働局、労働基準監督署においては、次の方法により、事業場における有所見率の改善に向けた事業者の取組を促進します。
(1)事業場に対する重点的な周知啓発、要請等
 有所見率が全国平均よりも高い又は増加が大きい事業場や業種等の集団に対して、周知啓発を行うとともに、脳・心臓疾患関係の主な検査項目の有所見率や取組状況等を踏まえ、特定の事業場に対しては、事業者の理解を得た上で、重点的に、取組の要請等を行い、成果の普及を図ります。

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労働行政は、ストレスチチェック制度に基づく検査や面接指導の実施状況を報告させたということは、この通達と同じように、メンタル疾患による休職者が多い業界や事業場に対しては、『重点的に、取組の要請等を』 行うことになるものと想像しております。

ストレスチェック制度に関する指針

 

「心理的な負担の程度を把握するための検査(著者注:「ストレスチェック」という)及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」が示され、ストレスチェックの実施方法や面接指導結果における医師からの意見聴取、就業上の措置等についての指針を厚生労働大臣が定めました。

ここでの「ストレスチェックの実施方法等」についてですが一部抜粋して紹介します。

【ストレスチェックの実施方法】
[調査票]
・①ストレス要因、②心身のストレス反応、③周囲の支援に関する三つの領域に係る項目が含まれていること。
・事業者の判断により選択することができるが、「職業性ストレス簡易調査票」を用いることが望ましい。

【ストレスチェックの実施者の役割】
・ストレスチェックを実施した医師等(以下「実施者」)は、調査票の選定および高ストレス者の選定基準等について事業者に対して意見を述べるとともに、
 労働者が医師による面接指導を受ける必要があるか否かを確認する。
・調査票の配布・回収等の事務は実施者が直接行う必要はなく、実施事務従事者に行わせることができる。

【受検の勧奨】
 事業者は、実施者に対し、労働者のストレスチェックの受検の有無を確認し、受検していない労働者に対して受検を勧奨することができる。

【ストレスチェックの結果の通知および通知後の対応】
・「高ストレス者」として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた労働者のうち、面接指導の申し出を行わない労働者に対しては、実施者が
 申し出の勧奨を行うことが望ましい。
・ストレスチェックの結果の通知を受けた労働者に対し、産業医等と連携しつつ、保健師または看護師等による相談対応を行う体制を整備することが望ましい。

 

 

ストレスチェックをインターネット上で実施するには

ストレスチェックの実施方法は質問票によって実施することとされています。紙ベースの質問票に自記してもらう、アンケート形式の場合には、配布には制限はありませんが、回収の際には、記入済の調査票が周囲の者の目に触れないよう封筒に入れ封印した上で回収したり、実施者である産業医や実施事務従事者である産業保健スタッフが直接回収したり、もしくは実施者である産業医や実施事務従事者である産業保健スタッフの元に送付するという個人情報保護の配慮が必要になります。インターネット等の電子媒体を介した実施も可能ですが、その際には以下の条件を満たす必要があります。
①事業者および実施者において、個人情報の改ざんの防止のための仕組みが整っており、その仕組みに基づいて実施者において個人の検査結果の保存が適切になされていること
②労働者以外にストレスチェックの結果を閲覧することのできる者の制限がなされている(実施者以外は閲覧できないようにされている)こと
③ストレスチェック結果の確認や点検といった実施者の役割が果たされること。なお、ストレスチェック結果だけでは面接指導の対象者選定が難しい場合であって、衛生委員会での調査審議にて実施者が面談等を通じて対象者を選定する旨が決議されているときは、ストレスチェック実施後に、実施者が面談を通じて面接指導の対象者を選定することが可能です。健康診断と異なり、ストレスチェックについては、事業者が指定した実施者以外の機関で受けても良いという規定はありません。このため、事業者が指定した実施者以外で受けた場合、ストレスチェックを受けたこととはなりません。

ストレスチェックに要する費用は通達(平27・5・1 基発0501 第3 号)によると、全て企業が負担することとされています。一方、ストレスチェックを受検した時間を労働時間として扱うことの必要性については、同じく前掲の通達は「面接指導を受けるのに要した時間に係る賃金の支払いについては、当然には事業者の負担すべきものではなく、労使協議をして定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、ストレスチェックおよび面接指導を受けるのに要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい」としています。海外の現地法人に雇用されている場合は、日本の法律が適用にはならず、ストレスチェックの実施義務はありませんが、日本の企業から現地に長期出張している社員の場合は、ストレスチェックを実施する必要があります(一般健診と同じ扱い)。業務上の都合や、やむを得ない理由でストレスチェックを受けることができなかった者に対しては、別途受検の機会を設ける必要があります。

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