2021年9月15日施行の改正「脳・心臓疾患の労災認定基準」とは|健康経営推進型産業医に向けて
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2021年9月15日施行の改正「脳・心臓疾患の労災認定基準」とは|健康経営推進型産業医に向けて

2021年09月15日(水)12:54 PM

過老かつ過労社会




厚生労働省は20年ぶりに「脳・心臓疾患の労災認定基準」を改訂し(以下、新基準)、2021年9月15日よりこの新基準にて労働災害の該当、非該当を判断しています。

そこで
◆この新基準の4つのポイント

関連話題として
◆ダブルワーク
◆労災保険の特別加入

以上3点をストレスチェックの活用にて健康経営優良法人認定支援を行っているメンタル産業医で知られる合同会社パラゴン(東京都港区)が紹介します。

 

◆新基準 4つのポイント

ポイント1

長時間労働に伴う過重性の評価に、旧基準では中心命題だった労働時間に加え、労働負荷要因をも加えて、労働の量と質との両面からの判断を行うことにした。かつその質的吟味内容を明確化した

 

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ポイント2

長時間労働に伴う過重性の評価における質的負荷要因を、より現実に即した内容に改正

ポイント3

旧基準では捕捉しえなかった月当たりの時間外労働の合計だけではない過重労働の内容を明確にした。

例えば 短期間での過重労働、異常な出来事の業務とは何なのか、過重性の評価をより明確化。



ポイント4

支給対象とする疾患に、重篤な心不全も追加






異常な出来事|ハラスメントについて

注意すべき点を、咲くやこの花法律事務所の代表の西川暢春弁護士のご指摘から抜粋しました。


条件1 従業員への指導が適正な範囲を超えている場合


「辞めてしまえ」などの退職強要発言や「新人でもできる」「新人以下だ」などの侮辱発言はパワハラに相当。


条件2 発言に容姿や病気などの業務に無関係な人格攻撃が含まれていたりする場合

教育的指導ではなく業務改善にはあたらないため指導を目的とした発言と認められず、パワハラと判断されることがあります。

容姿、国籍、信仰、病気などの、業務とは無関係のパーソナルな部分を否定・攻撃する発言が含まれている場合、パワハラと判断されることがあり
ます。

 

東京地方裁判所判決 令和元年11月7日 外国籍の女性従業員に対して国籍に関する差別的言動をした事例

外国籍の女性従業員に対して、「あなた何歳のときに日本に来たんだっけ? 日本語わかってる?」という発言をしたことがパワハラであると判断されました。これは、国籍や外国籍に対する差別・侮辱発言ですので、三つ目の条件である言動に人格攻撃が含まれていることになり、パワハラだと判断されています。

条件3 発言・手段が過剰

指導を目的としる場合でも、発言内容や手段によってはパワハラにあたると判断される場合があります。

例① ほかの従業員の面前で怒鳴りながら叱責した例:東京地方裁判所判決 令和元年11月7日 

従業員の指導の際に、わざと目立つように自身のデスクの横に立たせたり、フロア全体に聞こえるような大声で怒鳴りつける指導をしたことがパワハラだと判断されました。

例② 達成不可能なノルマを課した例:東京地方裁判所判決 平成30年6月29日

従業員に対して、社内試験を合格することができなかった場合は退職する旨の文書を作成させた上で合格できなかった従業員に対して、会社に不要な人物であることを確認する内容の職場アンケートを実施することを示唆しながら退職を迫ったことがパワハラであると判断されました。

 

なお、就業規則に基づく指示は当たらないと判断された例があります。

前橋地方裁判所 平成29年10月4日判決 就業規則に基づいて、部下に対して朝6時に出社するよう提案した事例

 

部下に対して「夜早く帰りたいのだったら、朝6時から仕事をはじめるのはどうか、自分も6時に来るから」などと発言したが、パワハラにはあたらないと判断されました。理由はフレックスタイム制がもとより適用される職場であり、かつ、就業規則上、業務上必要であれば時間外労働を命じることができるとされていたことから、就業規則に基づく指示であったと判断されたからです。従った、発言自体はパワハラにあたらないと判断されています。

出典:


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以上は産業医契約先に対して健康経営優良法人の認定支援に邁進する「健康経営推進型産業医」
かつ
クラウド環境でも産業医活動を行う「クラウド産業医」の産業医の先生方にとっても有用と思います。

出典:厚生労働省労働基準局補償課.脳・心臓疾患の労災認定基準を改正しました

 

◆ダブルワークへの対応

働き方改革関連法」がらみとして、ジョブ型雇用を推進する政府や日本経済団体連合会は、兼業・副業を推奨することで、ワークシフトをはかってきました。その前から日中8時間の勤務をしている正業先があることを知りながら、従業員の少なくなる夕方から夜間帯に労働をさせる「ブラック企業」が少なからずありました。

民法715条:使用者責任を基にする労働基準法に基づく行政通達からすると、夕方から夜間帯に労働をさせる企業が、割増賃金の支払いを含めた安全配慮を行う必要があります。しかしながらそれらブラック企業は、従事者が日中、どのような正業先で何時間就労をしているのかさえ確認していません(民法709条:不法行為責任、同415条:債務不履行・不作為)。

本来ならそのようなブラック企業はSDGの理念とは程遠いものの、あろうことか「ウェル・ビーイング」とか「健康経営」とか唱える団体に出資して、認証をえたりといった化粧を行っている企業さえ確認可能です。

対して行政は、「複数業務要因災害における脳・心臓疾患の認定について」として2020年度中に労働者災害補償保険法における保護の対象として位置付けしています。


出展:雇用保険法等の一部を改正する法律等の施行について(労働者災害補償保険法関係部分)基発0821 第1号 令和2年8月21 日

 

◆特別加入枠の拡大


コロナ禍下、外食が難しくなっている中、出前配達サービス提供事業が拡大しています。リーマンショック後に勃興した外資企業も2016年9月には進出しました。その企業は「配達員は業務委託の個人事業主。労働組合法による『労働者』には該当しない」と団体交渉をかたくなに拒否し続けています。

出展:週刊ダイヤモンド.新階級社会 上級国民と中流貧民

対して行政は2021年4月1日から労災保険の「特別加入」の対象業種として以下も含有しました。

・ 芸能関係作業従事者
・ アニメーション制作作業従事者
・ 柔道整復師
・ 創業支援等措置に基づき事業を行う方

出典:厚生労働省.令和3年4月1日から労災保険の「特別加入」の対象が広がります

 

 

また、同9月1日から 自転車を使用して貨物運送事業を行う者やITフリーランスも特別加入が可能となりました。

出典:厚生労働省.令和3年9月1日から労災保険の「特別加入」の対象が広がります

 



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