メンタル産業医ドクター櫻澤のヘルシーコラム|「あざみ野STYLE vol.47」に掲載

メンタルヘルスを維持向上するために、栄養学的技能(ニュートリショナル・テクノロジーズ)を駆使して企業の健康経営®の進化発展支援に貢献しうるのがメンタル産業医だと意味づけした合同会社パラゴン(東京都港区)代表の櫻澤博文執筆 
『メンタル産業医 ドクター櫻澤のヘルシーコラム いつもこころにうるおいを!
食物繊維で腸もメンタルも健康に
が以下に掲載されました。

出典:あざみ野STYLE 2022SPRINGr Vol47

掲載された内容は、御覧のようにA4 1ページのみです。原稿としては以下であることからすると抄録みたいなものです。そこで原稿記載を掲載することで読者の健康増進や健康経営®にお役立てください。

何しろ食物繊維は当社代表が医学部時代だった2000年代初頭には、整腸作用といった効果しか着目されていませんでした(きちんと学んでいなかっただけかもしれませんが)。

2021年の年初は関西地区のみ確認されていたいわゆる「命の選別」が、2021年夏には首都圏でも、そして2022年に入ってからは第6波として発生し続けています。

 

参考サイト:産業医による新コロ対策⑬|中等症なのに入院不可な中でも往診医を探すには@失われた30年

理由は休み中の人増に加え、「ブレイクスルー感染」や「不顕性感染」が知らずに感染を拡大したからです。

「ブレイクスルー感染」とは、ワクチンを接種したにも関わらず、高齢や基礎疾患の程度が著しいと免疫が得られず、ワクチンを打ったのに、罹ってしまうことを指します。インフルエンザでも、「ワクチン打ったのに、罹った」という方、多くいました。

「不顕性感染」とは、罹っているのに発症せずにいる状態を示します。知らずに感染を広げてしまうことを指します。有名なウイルス感染症としては肝炎ウイルスによる慢性肝炎が、いつの間にか肝がんになる場合があります。またピロリ菌による慢性胃潰瘍が、いつの間にか胃がんになってしまうことも多くあるので胃がん検診は、ABC検診に置き換わってきています。もとい
「不顕性感染」は、どの程度生じているのかというと、2020年夏の場合、1人の発症者の背景には59倍、「不顕性感染」があることを当方は横須賀市調査を根拠に導き出したことがあります。PCR検査や抗原検査をしても、陰性の人をきちんと陰性と判定する精度は4割と、見逃しが6割も出るものだから、更にワクチン接種で、重症化せず、軽く済んだり、PCR検査でも反応しなかったりと、知らずに感染を拡大した方が出ていたものと推測されます。

参考サイト:産業医による健康経営対策⑬|発症1人の背景に59人もの不顕性感染という無症状者が感染拡大の原因!?

「あざみのSTYLE」にて免疫力を高めるのみならず、「うつ」も防止できる栄養素、ビタミンDを紹介したのは2020年7月のことでした。もう1年半も免疫力確保やメンタルヘルスの維持増強に向けて、栄養の改善にてコロナ禍に伴うを乗り切るとうい方法や手段(テクノロジーズ)を紹介し続けていることになります。このように年の単位での自粛が続いている以上、当シリーズを再参照することで食事を整備し直すことが、ストレス緩和と不安沈静と免疫力低下の防止効果を改めて期待し直す時代ともいえましょう。

 

そんな中、今回は「食物繊維」を紹介します。

 

食物繊維とは

 

キノコ類、野菜、海藻類は果物、穀物などに含まれ、消化酵素に影響されにくく、大腸まで届き、腸内細菌の栄養になったり、腸内細菌の住処(すみか)になったりします。

▶水に溶けない「不溶性食物繊維」はサツマイモやタケノコの「セルロース」が代表ですが、水分を含むと容量が増し、大腸を刺激し便通を促します。
▶他方、水に溶ける「水溶性食物繊維」には
海藻のヌメヌメ成分は「アルギン酸」や「フコダイン」、
ゴボウやイモ類、玉ネギに多い「イヌリン」、
コンニャクの「グルコマンナン」、
果物や野菜に多い「ペクチン」、
オグラやモロヘイヤ、ヤマイモといったネバネバ系野菜のネバネバ成分も「ムチン」があります。

ここでプロ野球チームのシンボルにもなっている猛牛を思い浮かべてください。草食動物なのに筋肉隆々です。確かに牛乳は飲みますが、子牛の時代だけ。その後はプロテイン飲料を飲んでいるわけではありません。草を食んでいるだけなのに。ではどうして筋肉隆々になるのか。それは摂取する食物繊維を餌に、筋繊維構築に必要なアミノ酸を産生する微生物を体内で定着しているからです。人間も、善玉菌を(その培地や培養液、生成物質ともども:以下、善玉菌等)積極的に摂取することは「プロバイオティクス」といい、食品製造会社より、各種効能を持つ乳酸菌飲食物、多く提供されるようになってきています。しかしこれら、善玉菌等を積極的にしていても、住処となる【食物繊維】を摂取していないと、効果は一時的、または気のせいレベルでしかありません。逆に、【食物繊維】を積極的に摂取しておくと、善玉菌等の定着が促され、相対的に悪玉菌の生育が阻止され、その結果免疫力や持久力までもが持続的に増強するというにも有用性があることがわかってきました。

食物繊維摂取の有用性機序

その機序は以下です。食物繊維は善玉菌等により酪酸、酢酸、プロピオン酸という短鎖脂肪酸に分解されます。酪酸は大腸の機能を助け、快便につなげます。酢酸は、酢飯が腐敗を防止するように、腸管のバリア機能を維持し、細菌が分泌する毒素による炎症を沈静化させます。プロピオン酸は体内に吸収され、腸の蠕動運動に資するエネルギー源になるだけではなく、脂肪を効率よく燃焼させるというエネルギー産生に寄与します。

 

 

食物繊維に期待される効果

 

  • 便秘防止、デトックス(排毒効果)、大腸がん防止効果まで

 

食物繊維が、拭き掃除のように腸内の汚れや老廃物をふき取るのみならず、食事をとっていなくても、食物繊維を栄養源とする善玉菌から持続的に腸に栄養が供給されることより、腸の蠕動を促し、積極的に排便させることから、腸の疲労困憊が少なくてすむようになります。

 

便秘がちになると肌荒れが起こりやすいという方、いらっしゃるかと。はい。排便で排出される●●なものの中には、毒素もあります。それらが逆流すると・・・想像したくないですよね。 逆に、積極的に摂取している群では体臭は落ち着き、吹き出物は少なくなり、皮膚はシットリ なめらか、色素沈着も少なくなり、そして大腸がん発症が少なくて済んでいるという研究結果さえあります。

 

 

  • 免疫力を高め腸内年齢や血管年齢の低下からアンチエイジング効果

素手で栗やウニを掴むより、手袋をして掴むと怪我が少なくてすむように、食物繊維が胃腸にあると、食事中に含まれてしまうことがある毒素や病原菌の直接的な浸食性を食物繊維はある程度防止してくれます。実際、善玉菌等が豊富だと、生成される酢酸によって悪玉菌が少なくなり、そして腸壁の悪玉菌による浸食が少なくて済むことより、腸の表面が長持ちします。また、免疫細胞が長生きすることで、体内の免疫力が高まります。実際、善玉菌等と食物繊維を摂取している群では、腸内年齢や血管年齢が若い傾向があることがわかりました(江崎グリコ社調査)。

 

 

  • リーキーガット症候群の防止

 

小麦に含まれる「グルテン」や牛乳に含まれる「カゼイン」といったタンパク質は、東洋人は長いこと、摂取する習慣がなかったことから、消化し辛い遺伝子を持つ人が存在します。消化し辛いタンパク質を摂取すると、腸の上皮細胞を結合させている「タイトジャンクション」という結合機能がゆるみ、それら難消化性タンパク質を下痢にて排出しようとします。それを防止する効果が期待できます。

 

注:毎日のように小麦や牛乳を飲む食生活を行っていると、タイトジャンクションが緩みっぱなしになります。すると食物繊維を摂っていたとしても、緩んだ隙間から、毒素や病原菌が入り込み、それが年の単位で続くと総理大臣を引退に追い込んだ潰瘍性大腸炎や全身性のアレルギー反応、炎症性疾患を引き起こしかねません。それを「リーキーガット症候群」といいます。そのようなレベルは防止しえませんので、元から断つために、和食中心食を心がけましょう。

 

 

  • 食後の高血糖防止から自律神経の安定化<ストレスの緩和>

 

野菜から先に食べようと呼びかける調味料会社のCM、見た人、いませんでしょうか。あれこそ食物繊維から先に摂取するという健康への意識を促したい意図があります。食物繊維摂取すると、体内で水分を不溶性食物繊維が吸水すると、空腹感が癒されることになり、食事全体の摂取量が少なくて済むようになります。また、食物繊維が穀物とこなれると、果物ネット中の果物を食べようとするようなもので、消化に時間がかかるようになります。その結果、食後の血糖値の急激な上昇が抑えられます。それは膵臓への負担を和らげるから糖尿病防止効果が得られるのみならず、持続的に血糖値が高くなることから、集中力の維持と疲労感軽減、そして、いわゆる「腹持ちのよさ」から、肥満を防止しえる効果も得られます。

なお、食後に血糖値が上昇してしまうと、自律神経のうちアクセルの働きを行う交感神経が急激に興奮を強いられるようなもの。それが続くと自律神経が痛み、自律神経失調をきたし易くなります。朝食に和食中心食ではなく、血糖値を急激に上げる糖類と自律神経をに興奮させる「カフェイン」が入った、いわゆる「エナジードリンク」やコーヒーを好んで飲んでいると、自律神経の過敏性が更新され、いわゆるパニック障がいというイライラ、不安、心配、杞憂が理由もなく四六時中生じてしまうという 「不安障がい」という病的状態に至りやすくなります。逆に和食を中心とした朝食摂取が労働災害防止にもなること、知られています。朝食は金メダルと言われます。銅メダルを何個取ろうと、金メダル1個には敵わないように、少なくても朝食は必ず摂るようにしましょう。
「食育」という、「生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきもの」とう理念を持ち、食事の改善が人生の改善になることを目的とした「食育基本法」が施行されたのは2005年でした。食に関する正しい知識・適切な食習慣を、今一度確認することは、心身の健康を生涯にわたって保つのに欠かせません。

参考サイト:健康経営㊵|「朝飯前」の意味

摂取するには

食物繊維は第6の栄養素ともいわれることから、厚生労働省は18~70才の男性は20グラム以上、女性は18グラム以上の摂取が推奨されています。しかし食生活の欧米化から、食物繊維の摂取量は減少の一途をたどっています。

「まごわやさしいな」という、
ま:大豆や枝豆といった豆類、
ご:ゴマなどの種実類、
わ:ワカメなどの海藻類、
や:野菜、
さ:小型の魚、
し:シイタケなどのキノコ類、
い:イモ類、
な:納豆などの発酵食品

キノコ類は丹波産のマツタケ以外、安価で入手可能です。

海藻類にはビタミンBや、カリウムという血圧を下げる効果のあるミネラルも多く含まれています。

忙しくて!という人でも、朝食にワカメ、ネギ、豆腐、ナメコといった食物繊維が摂取可能な味噌汁を1杯摂るだけで、いわゆる「腸活」になります(味噌汁一杯には、スポーツ飲料1リットル分の電解質が含まれることから、夏場の熱中症予防にもなります)。

 

 

摂取時の注意点

摂取したからといって、すぐ効果が得られるわけではありません。また善玉菌の定着と、その効果が発揮されるまでにはどうしても時間がかかります。メンタルヘルスの維持増強に王道はなく、様々な技能(テクノロジーズ)を満遍なくバランスよい食事が、それも和食中心食だと滋養効果があることを紹介しています。今回もこの思いを強くして記載しました。

 

 

参考 厚生労働省 日本人の食事摂取基準