労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル (以下 マニュアル)には、いくつか判りにくい箇所があります。
人事労務実務のQ&A2015年4月号にてストレスチェックの解説記事を執筆した後、全国の産業医に向け「メンタル産業医」入門という参考書を執筆した立場から、今後、判りにくい箇所の解説することにします。
今回は40ページ以降からの高ストレス者を選定するための方法についてです。
特に43ページに以下とあります。
出典:厚生労働省.労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル
巻末の資料に、職業性ストレス簡易調査票を用いた実績データから作成された分布表を添付していますので、比率や具体的な基準点の設定にご活用下さい。
この設定方法が解らない方、多いのではないでしょうか。
巻末165ページの分布表をご覧ください。
『心身のストレス反応29項目』というタテの行の下から5行目・・・77点の行をご覧ください。 その行の右端の値は7.9とありますが、これは『心身のストレス反応29項目』で77点以上を示した方の割合が7.9%であることを示しています。
一方、『要因17項目支援9項目』というヨコの列の右から5列目・・・・76点の列をご覧ください。
うち、『心身のストレス反応29項目』63点の行との交点を探してみてください。 4.7%です。・・・①
次に『心身のストレス反応29項目』77点の行との交点を探してみてください。2.7%です。・・・②
①-②より 4.7-2.7=2.0%が求まります。
『心身のストレス反応29項目』で77点以上を示した方の割合が7.9%でした。
対して『要因17項目支援9項目』が76点であり、かつ、『心身のストレス反応29項目』が63点~77点である方の割合は2.0%であることがわかりました。
ここでマニュアル 40ページをご覧ください。
【概念図】が あります。㋐の部分が7.9%、㋑の部分が2.0%ということになりました。
なお、7.9:2.0は ほぼ8:2 ということになります。これが マニュアル 42ページ以降の『注1)上記の設定例(その1及びその2)は、㋐と㋑の比率を8:2とし、高ストレス者の割合を全体の10%程度とした場合の例』 に 相当します。
ここで比「8:2」が評価基準例として示された根拠は以下のとおりでした。
検討会では、当初、評価基準例として示す候補として、「9:1」、「8:2」、「7:3」が挙がっていたそうです。
いずれの比が適切かを決める際に、3候補の真ん中だからとの理由で「8:2」になったそうです(委員談)。
最後に10%という数字についてです。
『ストレスチェック制度関係 Q&A』 Q4-1にあるように、”各事業場における数値基準は衛生委員会等で調査審議の上で事業場毎に決めていただく必要があり、一律に目安を示すものではありません。”
こだわることは必要ありません。