ある医師が、ある事業所の「産業医」になるためには厚生労働省令で要件が定められています。その要件をその医師が満足していると、その医師はその企業の「産業医」だと名乗ることができるようになります。
その為に日本医師会(東京都文京区)は同会の認定産業医の認証制度を整えると共に、その認証を得た医師に対し、有効期間5年のうちに、産業医学生涯研修20単位以上を修了するとその認証を更新できると定めています。
しかしながら
“更新は義務付けられているわけではない”、
“安衛則第14条は、確かに一定の研修を修了することを求めているが、更新によって資格を維持することまでは定めていない。したがって、一度産業医資格を取得してしまえば、死ぬまで産業医ができる” #ブラック産業医
以上のような解釈が成立することから更新せず、有効期限切れのままの医師が産業医を担当しているという、つまりは「名ばかり産業医」が現実問題として存在します。
確かに過去、その医師は日本医師会から、認定産業医の称号を受領したことは事実です。でも今やそれは昔。
有効期限がある日本医師会からの認定産業医認証は失効しています。
それなのに、まだその医師を産業医として任用する企業の存在が確認されています(更にはその医師の知らぬところで、勝手に産業医としての選任届出を出しながらも、その事実を伝えない業者の存在も確認できています)。
産業医としての選任要件を満たしていることは事実でしょう。でもその後、労働衛生コンサルタントを取得するわけでもなく、ましてや日本医師会認定産業医資格の更新する実施しない医師に産業医選任をし続ける企業があることも以下のような労働経済下、事実でした(過去形)。
2017年当時、人不足は深刻さを極めていました。
①平成29年3月の有効求人倍率(季節調整値)は1.45倍となり、平成28年4月より0.11ポイントも増加し、バブル期の1980年代末をも超えています。
②新規求人倍率(季節調整値)も平成29年3月値では2.13倍と、平成28年4月時より0.07ポイントも上回り、3月の新規求人(原数値)は前年同月と比較すると6.5%増とまで至っています。
過重労働対策をないがしろにするブラック産業医の存在が問題視されている中、このような医師を産業医に選任している事業所の問題も問題視されてきています。
2 法第十三条第一項に規定する労働者の健康管理等(以下「労働者の健康管理等」という。)を行う のに必要な医学に関する知識についての研修であつて厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が 行うものを修了した者
参考サイト:日本医師会.「日本医師会認定産業医」制度について
2018年10月21日追記
行政が上記問題を解決しました。
久知良計画課長
「産業医の知識・能力の維持向上について」です。この点については、建議の段階で産業医は、産業医学に関する知識・能力の維持向上に努めなければならないこととすることが適当だとされたところです。
これを受けて、今般省令においては、「産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識及び能力の維持向上に努めなければならないものとする」という旨を規定するものです。
どのような能力が必要であるかという部分については時代の変化等によって変わってくる部分もあろうかと思いますし、その点について研修等の内容等を適宜見直すことによって対応する部分も、当然必要になってくるだろうと行政側の対応としては思っているところです。法律の規定の意味合いとしては、従来の規定をそのまま引っ張ってきているということで、従来と同じものを意味しているということです。
2021年3月4日追記
以上を受けて、労働安全衛生法が改正され、第13条3として産業医に「誠実義務」が課せられることになりました。
出典:労働安全衛生法第十三条 3 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならない。
ブラック企業に勤務していることがわかった罹災した労働者からすると、罹災後、
「誠実義務を果たさない医師を産業医に選任する会社のせいだ」と、事業主責任を問いやすくなりました。
ブラック企業の経営者は
「誠実義務を果たしていない“産業医”のせいだ」
「普段から研鑽しないブラック産業医だったが、契約し続けておいたのは、こうした際の避雷針役としてうってつけだからだ」
とその事業主責任を、避雷針役の医師へ、用意周到ではなく 容易に 責任転嫁できるようになりました。
実際、以下の書籍の「第6章 産業医業務をめぐるリスクマネジメント」には、
「Ⅱ 産業医のトラブル防止策」があり、そこには
「産業医が労働者からうったえられないようにするための対応」や
「産業医が使用者からうったえられないようにするための対応」という内容記載があります。
また判決例として実際、2021年時点で「サンセイ他事件」として名ばかり産業医に帰責性があるとする実際も出ています。
参考サイト:「名ばかり産業医」③|過労死訴訟から学ぶ規範鼎立
出典:佐久間大輔.管理監督者・人事労務担当者・産業医のための 労働災害リスクマネジメントの実務.日本法令
また、その「名義貸し産業医」のことを「名ばかり産業医」と呼ぶ書籍が刊行されていました。
名ばかり産業医=名義貸し産業医≒ブラック産業医 という式が成立しえることでししょう。
参考サイト:「企業にはびこる、名ばかり産業医」 挑発的な書籍タイトルの真意は ?
なお、名ばかり産業医からしたら、そうさせた、もしくはそういう、小説「健康経営2.0」で描かれたスキームを企業に販売した組織こそ悪いと主張したいところでしょう。でもその組織は「前回のプランよりもさらにコンプライアンス順守を意識したプラン」を提案したに過ぎず、そして「Disclaimer 本提案書に掲載している情報の正確性については、万全を期しておりますが、その内容について保証するものではありません。法律、規則、規定は、常に変 更が加えられる可能性もあります。本資料情報は、その時点の情報が掲載されており、完全性、正確性、時間の経過、あるいは、情報の使用に起因して生じ る結果について一切の責任を負わないものとします。」といった注意書きがあることから、責任は選考・選任した企業へ転嫁され、転嫁された企業責任は、以下のようなことに対応してこなかった、誠実義務と衛生委員会での調査審議を求められる権限がありながらもそれを尽くさなかった医師に集約かつ執着されるように仕込まれていきます。
参考:「名ばかり産業医」⑧|新たな化学物質管理と産業医の役割
対策
労働基準監督署に至急、通報ください。
また、「名ばかり産業医」⑥|厚生労働省:特別相談窓口設置@健康経営2.0 に記載された各種機関も相談に応じてくれます。
医師という職業倫理にかんがみても。そして枕を高くして眠るためには、まずは労働衛生コンサルタント資格を取得することを健康経営に長けたメンタル産業医で知られる合同会社パラゴン(東京都港区)は推奨していますし、代表の著書でもそのことを記載しています。
実際、毎年のように労働衛生コンサルタントが誕生して20余年になります。
出典:ストレスチェック面接医のための「メンタル産業医」入門 改訂第2版
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