健康経営に長けたメンタル産業医命名者が代表を務める合同会社パラゴン(東京都港区)が、2017年7月8日に東京内科医会とクラシエ薬品(株)の共催開催の東京内科医会学術講演会の内容を紹介します。
演題1は東京女子医科大学 東洋医学研究所 准教授の木村容子先生の「現代の口訣を考慮した人参養栄湯の臨床使用 について」でした。
加齢と比して運動機能や認知機能といった身体的、精神・心理的活動という心身の活力は低下します。その結果、外出や近所付き合いがおっくうになったり、同居家族の死や離散によって独居を余儀なくされたり、更には生活機能にさえ影響が続くと、経済的困窮から更には、孤独死といった社会的問題までもが引き起こされる現実があります。 これら、心身の活力低下に加え社会的機能の障害までをも「フレイル」という概念で医療や福祉の現場では語られるようになっています。ただ、病気や怪我のように、苦痛や苦悩がある意味、自他ともに把握しやすい状況とは異なるため、単なる老いとしか理解されず、もしくはワークライフバランスに未だ課題が残るわが国の労働経済情勢を鑑みると、黙認・放置されている場合も少なくないのかもしれません。
この課題に対して木村先生は、「フレイル」を、「健康→未病→疾病/怪我」 になぞらえ、「健康→フレイル→要介護状態」と捉えなおした上で、「未病」状態に対しては、古くから漢方医療や中医学が対応し、健康状態にまで改善してきた事実から、「フレイル」に対して効果が期待できる漢方薬を、複数、それも実際の治療例に即してご紹介されていました。虚弱にて栄養がとれなかったり、運動するだけの意欲がわかなくなっている方々には、確かに漢方薬治療にて、意欲や活力が回復できたら、栄養摂取も運動励行も叶うようになることでしょう。老いではなく、抑うつ性障碍という疾病が栄養不良と運動不足による虚弱化を招き、それが勤怠不良という社会生活上の機能不全まで招いていたものの、主治医は何ら支援が提供できずにいた労働者に対し、産業医ではあるものの、六君子湯を近所のドラッグストアにて購入の上、服用するよう提案したことが、意欲や活動の回復から、社会生活上の安定性にまでつながった自験例を思い出しました。
もとい
実際に、厚生労働省研究班報告でも、フレイルに対しては「適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」という字句で定義は締めくくられています。
なおこの「未病」状態に対して、健康状態はおろか、健康増進にまで昇華してきた実践体系は、産業医学を基盤としてきた労働安全衛生や産業保健になります。つまりは健康増進という理念はどのような医学においても共通課題であるのでしょう。
それと共に、産業医学と漢方・中医学は理念を共通していることを合同会社パラゴン代表は考察したため、産業医大関係者の中には、漢方薬、鍼灸、中医学はおろか遠絡療法をも究める医師が出るものなのだと、別の認識をしました。
演題2は鹿児島大学大学院 心身内科学分野教授の乾明夫先生の「フレイルと人参養栄湯 -健康長寿に向けて-」でした。
・「フレイル」、「サルコペニア」、「悪液質」、「ロコモティブシンドローム」といった老化にまつわる生体における生理学的活性低下や概念の整理
・人参養栄湯を構成する生薬と、その成分ごとの薬理作用からみた薬効や効能
・アンチエイジングや健康寿命延長に向けた最新 医学研究成果の紹介
・高齢者に多い、疾患の集簇に対する多剤併用問題(ポリファーマシー)対策に 漢方(多罪悪用をしてきた精神医療問題に対峙している立場として、このことは強く推進したいです)
・風土や文化豊かな鹿児島の実像 等が紹介されました(田中一村は代表が幼少時過ごした奄美大島ご出身の画家でした。奄美大島というと島尾敏雄が住んだ地でもあります)。