ストレスチェックを健康経営の基盤として活用するプロフェッショナル産業医として知られている合同会社パラゴン(東京都港区)が、2016年度の労働経済統計のうち、ストレスチェック実施状況や有効求人倍率、そして失業率を主項目として分析することで、過重労働や人手不足に悩む企業に対する羅針盤を示します。
平成28年労働安全衛生調査(実態調査)の概況
厚生労働省が2017年9月7日に公表した「平成28年労働安全衛生調査(実態調査)の概況」に、ストレスチェックの実施状況が報告されていました。
それによると、すでに平成27年度からストレスチェックを実施していた企業が22.4%も存在していたことが明記されました。
と共に、事業所規模別の実施率と2017年7月26日に公表した受検率は表のとおりでした。
表 ストレスチェックの実施率と受検率
規模 |
実施率[%] |
受検率[%] |
10-29 |
54.8 |
なし |
30-49 |
52.8 |
|
50-99 |
83.9 |
77.0 |
100-299 |
91.0 |
78.3 |
300-499 |
96.5 |
79.1 |
500-999 |
93.4 |
|
1,000~ |
95.7 |
77.1 |
全体 |
62.3 |
78.0 |
この表にあるように、努力義務が課せられたに過ぎない50名未満規模の事業所でも、5割以上の企業が、ストレスチェックを実施しています。
そして受検率が「なし」となっているのは、報告の義務化がないことから、調査がなされていないにすぎません。
ストレスチェックの実施が義務付けられている、常用の在籍従業者数が50人を超える事業所に対しては、このストレスチェックの実施結果に関する報告書を所轄の労働基準監督署に提出することが義務づけられています。しかしながら49人以下の規模の事業所に対しては、ストレスチェックの実施義務も報告義務も課せられていませんので算出すらできません。
◆50人から999人までの間に限るなら、実施率と受検率とは在籍従業者数に比例しています。
◆「専属」での産業医選任報告が求められる規模である1,000人以上の事業所でのストレスチェック受検率が、在籍従業者数100~999人規模の事業所より低い結果が確認されています。理由としては、メンタルヘルスに不慣れな産業医や、「実施者」になることを辞退した医師が「専属」産業医として選任されていることを、当シリーズで危惧されていましたが、的中したのかもしれません。
一般職業紹介状況
☆ 2017年10月31日に発表された「一般職業紹介状況」によると、2017年9月の有効求人倍率(季節調整値)は1.52倍となり、前月と同水準と、高倍率が続いています。
新規求人倍率(季節調整値)は2.26倍で、前月比0.05ptの増。正社員有効求人倍率(季節調整値)は1.02倍で、前月を0.01pt上回っていました。
人手不足が更に深刻となっています。
労働力調査
☆同日 総務省による2017年9月度の「労働力調査」では完全失業者数は190万人で、前年同月に比べ14万人減少していました。
なんと、完全失業者数の減少は88カ月連続。つまり雇用増が7年を超えて続いていることを示します。
●完全失業率(季節調整値)については、前月と変わらず2.8%でした。
●就業者数は6,596万人で、前年同月に比べて74万人増加していました。
●雇用者数は、前年同月比74万人増の5,866万人となり57カ月連続の増加でした。
●正規の職員・従業員数は3,483万人(前年同月比+76万人)で、34か月連続で増加。
●一方、非正規の職員・従業員数は2,028万人(同-2万人)と、7カ月ぶりに減少していました。
非正規雇用が減る一方、正規雇用が順調に増加していることより、労働経済は好転が続いているといえましょう。
以上より、人手不足に悩む企業は、ストレスチェック、その集団分析を通じた働きやすい職場づくりを勧めない限り、見向きもされなくなる時代になりつつあると考えます。
出典:櫻澤博文.ストレスチェック実施後の対策はこれ!うつ予防3法 虎の巻
参考サイト:キャリアコンサルティングに活かせる 働きやすい職場づくりのヒント 出典:金剛出版