ストレスチェック制度の設計と運用、そして健康経営認証制度への展開で知られるメンタル産業医命名者が創設した合同会社パラゴン(東京都港区)が紹介するストレスチェック制度(ストレスチェック及び面接指導)」についての解説シリーズその3です。
今回は、実施者の選考について深堀りしてみます。
「実施者」は当シリーズその2で紹介したようにストレスチェックの実施主体となれる者でした。厚生労働省令でその具体的要件が示されています。それは医師、保健師、( 検査を行うために必要な知識についての研修であって厚生労働大臣が定めるものを修了した)歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理師のように医療に関する国家資格を持つ専門職です。加えると「ストレスチェックと面接指導の実施方法等に関する検討会」という学識経験者による検討を踏まえた「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関する検討会報告書」では、事業場の状況を日頃から把握している者(産業医等)がストレスチェックの実施者となることが望ましいとされた結果、「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(いわゆるストレスチェック指針)で以下のような内容記載がなされました。
法令上産業医は、事業場における労働者の健康管理等の取組の中心的役割を果たすことが想定されています。ストレスチェックでの実施者としても、産業医が中心的役割を担うことが適当であると。
いわゆるブラック企業からしたら、このストレスチェック指針での記載をもとに、「しめた。職場でのメンタルヘルス不調者の発生は、産業医責任に仕向けられる」とほくそ笑んだところが出たことでしょう。
更にこの指針には、以下の事業者の役割を産業医に分担させることが望ましいとまで示しています。
・実施者となること。外部機関を活用する場合でも実施代表者となること
・面接指導を行うこと
・事業者による医師に対する意見聴取に応えて意見を述べること
産業医は税金だと述べたり、名義貸しでよいとか、保健師に産業医業務を担わせるという実質名義貸しサービスと契約するような企業の産業医は、負えない責任という危険負担が生じます。そのあたりがかぎ分けられる産業医の中には、実施者になることを拒否したり、引き受けないことが起きています。
ただその場合、その産業医は
・高ストレス者に関する情報を把握しえません。
・事業者に実施してもらう必要がある就業上の措置の内容を事業者側に共有できません。
・未受検者に受検するよう勧奨ができません。
・努力義務だから実施していないでしょうが、集団分析という組織全体や部署ごとの高ストレス状態の評価とそれを踏まえた対策を執るよう意見できません。
これらはそういったブラック企業で働く労働者においても危険であるだけではなく、危険負担を負い、かつ応じる必要がある産業医は、この危険性を認識しているものでしょうか。
また“産業医は選任したものの・・・”という声は多くあると聴いています。また、事業場の状況を把握できるからといって、産業医であればどの産業医をも実施者にして良いのかというと、そうではないでしょう。その産業医に対する品質保証があるのかの吟味が必要でしょう。
実際に国は、「労働衛生コンサルタント」という国家資格を。日本産業衛生学会は学会認定指導医や専門医資格を。
そして国内の産業医学・産業保健をリードする産業医科大学は「メンタルヘルスエキスパート産業医」資格を用意し質的吟味に耐えられるようにしています。
これらの資格を持っている医師・・・いわば『健康経営優良法人認定支援型産業医』であれば信頼性が異なります。