健康経営支援産業医によるストレスチェック制度解説|その2:「実施者」「実施事務従事者」「制度担当者」の違い
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健康経営支援産業医によるストレスチェック制度解説|その2:「実施者」「実施事務従事者」「制度担当者」の違い

2021年10月27日(水)10:00 AM

ストレスチェック制度構築にて健康経営優良法人認定を受けられることを実証してきた合同会社パラゴン(東京都港区)。そのためのストレスチェック制度(ストレスチェック及び面接指導)解説その2です。

この制度の実施主体は誰なのか? 
「実施者」というのではないのか!?
「制度担当者????」
 
誰しもが疑問に思う用語の定義を示しながら、事業者との違いも踏まえ解説します。

2015年12月以降、事業者に対して実施が義務付けられたのが「ストレスチェック制度」(労働安全衛生法第66条の10第1項にて)。対象者は労働者に対して。ストレスチェック制度を実施するのは医師、保健師等によってです。

このように労働安全衛生法に基づいた制度ですので、実施しなければならないのは「事業者」です。しかしながら、「事業者」とだけ表記したらよいのに、厚生労働省は違いました。用語の解説をしながら、どうしてなのか理解できる記載にしました。

実施者→定期健康診断での診察医

労働者のストレス度を把握することができる医師、保健師、研修を受けた看護師、公認心理士と医療に関する国家資格有資格者しかなれません。なぜなら以下を担う立場だから。

①ストレスチェックの調査票の選定
②ストレスの程度の評価方法
③高ストレス者選定の基準の決定

医師以外も入っていますが、ストレスチェックそのものを担えるのは医療系国家資格有資格者のみ。例えるなら定期健康診断での診察医です。

この定期健康診断で診察する医師は、その企業の産業医であることは昭和時代にはありましたが、令和となったらまずなくなりました。それは致し方ありません。
何しろ、健診機関の雇用している医師が診察医を行うことも少なくなりました。では誰が担っているのか??

いわゆるバイトの医師です。時給いくらで医師紹介会社から供給されてきた方が大半。聴診器を当てて呼吸音や心臓からの異音を聴いているフリをしています。従って健康経営を標榜している企業は、バイトの医師に健康診断での診察をさせていることはないものです。

対して、きちんと呼吸音や心臓からの異音を聞き分けたり、胸部X線写真の異常を判別できる、つまりは健康診断んを専門に担っている専門医を雇用している健診機関もあります。そのような信頼に値する健診機関は、全国労働衛生団体連合会に加入しています。この全国労働衛生団体連合会(全衛連)は、その辺りの安かろう悪かろう健診屋では加入できません。従って健康経営を名乗る会社は、この全衛連に加入している健診機関を使うものですが・・・

定期健診でもピンキリだということがわかりました。ましてやストレスや心の問題を扱うストレスチェックは、委託先の選考には、十二分に慎重にならないといけないこと、ご理解いただけるかと

合点 がってん  ガッテン 

 

実施事務従事者→健診機関と衛生管理者

定期健康診断での診察医が記載した健診結果票に検査データを入出力し、取りまとめ、集計し、定期健診結果として出力し、その結果を送付するのは健診機関です。そして それらの定期健診結果を会社で扱うのは衛生管理者です。
これらと同じようにストレスチェックでの受検結果票を取りまとめるように、文字通り「事務」に従事するのが「実施事務従事者」です。いわばストレスチェックにおける実務に従事するから「実施事務従事者」。従って、ストレスチェックでの「実施事務従事者」は外部のストレスチェック実施機関も担うことが可能です。

会社側でいうならば、定期健診結果に対して、有所見者の通院指示を行うのは「衛生管理者」。そのように、ストレスチェックでの高ストレス者に対する医師による面接指導の申出勧奨などを行うのも衛生管理者が望ましいのですが、担う方を「実施事務従事者」といいます。

★定期健診との違いがあります。人事部長や役員など、人事権を持つ方は「実施事務従事者」にはなれません。人事権を持つ方が「実施事務従事者」になってしまうと、一般の社員は受検に心的抵抗を示したり、本音での回答をためらったりすることが想定されたからです。

なお
「実施事務従事者」には、ストレスチェックに対する回答内容や高ストレス者との連絡など個人情報を扱うことになるため、厳格な守秘義務が課せられています。厳格と記載したのは、違反すると処罰の対象となるからです。

従って、安かろう、 悪かろうな業者に丸投げだったり、親会社の指示だからといったことは、健康経営をうたう企業では、あってはならないことです。


 

出典:厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課産業保健支援室.改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について

 

<閑話休題>

「ストレスチェック」は、メンタルを確認するわけですからプライバシーとの兼ね合いの問題があります。この問題を解決するために、国は『実施者』という立場を考案しました。すなわち「ストレスチェック」の実施主体となれる者として「医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者」を『実施者』という定義を労働安全衛生法第66 条の10 第1項に規定しています。「ストレスチェック」を実施主体となれる者が『実施者』でして、「事業者」とを区分されています。
関連して、以下の用語が新たに定義づけられています。

「共同実施者」:ストレスチェックの実施者が複数名いる場合の実施者を「共同実施者」といいます。
「実施代表者」:複数名の実施者を代表する者を「実施代表者」といいます。
「実施事務従事者」:実施者のほか、実施者の指示により、ストレスチェックの実施の実務(個人の調査票のデータ入力、結果の出力事務、個人の結果の保存(事業者に指名された場合に限る)、面接指導の申出の勧奨等を含む。)に携わる者を指します。

★以上の仔細は別途こちらで紹介しています。

 

では臨床心理士や産業カウンセラーでは実施者になれないのでしょうか
「臨床心理士」資格は大学院等できちんとした修練を経なければ取得できません。現在は「公認心理士」として国家資格化されました。従って実施者になれるようになりました。

一方、産業カウンセラーは、取得後、キャリアコンサルタントという国家資格を取得可能な要件でもあります。ただ、医療資格を保有していない限り「実施者」にはなれません。

なお以前、日本労働安全衛生コンサルタント会の研修にて
「産業カウンセラーが、カウンセリングと称しては社員と逢っている。本当に必要なのか疑わしい」との疑念が出されたことがありました。

なお平成時代であっても、不治も出るをモデルとしたような企業の中には、この産業カウンセラーに社員が操られていて、気に入らない上司がいると“パワハラされたとコンプライアンス委員会にタレこみなさい”と陥れるかのような惨状があったそうです。ただ、それは質的な吟味がない時代の話であって、今や雇用の流動化という状況にあって、適材適所を推進される重要な役目を果たせるにまで至っているのが常識となっているので安心できます。

制度担当者→総括安全衛生管理者

「制度担当者」の法律上の正式名称は「ストレスチェック制度担当者」といいます。事業者側・・・会社側の責任者、管理者を「ストレすチェック制度担当者」と命名しました。

ストレスチェックの実施計画の策定、実施の管理を行います。人事権を持つ方でも担当することが可能で、予算確保から執行、社員の個人情報を取り扱わない事務手続き、社内での実施日時などの調整や他部門への通知、「実施者」との連絡調整、ストレスチェック調査票の配布、未受検者への受検勧奨などは行うことができます。

この「ストレスチェック制度担当者」という会社側の責任者を労働安全衛生法上の義務主体として制定することで、事業を行う者(事業主)におけるストレス管理の向上を促しやすくなります。

加えて努力義務ではありますが、集団分析を踏まえた職場環境改善計画を不断にかつ普段通り実施することで、社員はイキイキと働きやすい労働環境を享受することが可能となります。



のみならず業務効率を向上する方向性も見えてくるため、のびのびとした職場環境の改善が可能となります。結果としてメンタルヘルス不調者が発生することを未然に防止するための取組みが強化されていきます。




以上を簡単に理解することができる電子書籍もオンライン販売されています。

ストレスチェック実施後の対策はこれ!うつ予防3法 虎の巻』 

 

働きやすい職場づくりのヒント』(金剛出版)

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