第93回日本産業衛生学会講演集の内容

本来なら全国からメンタル産業医が、よりプロフェッショナル産業医たらん!と参加し、研鑽しあう場が日本産業衛生学会総会。その第93回日本産業衛生学会総会の講演集を紹介します。

出典:第93回日本産業衛生学会総会

新型コロナウイルス(COVID-19)の流行拡大を受けて、誌上開催・web開催となったわけですが、645ページもある立派な装丁でした。

なおプロフェッショナル産業医で知られる合同会社パラゴン(東京都港区)代表は、シンポジウム13同14の座長とシンポジストを担っています。

 

シンポジウム13 座長の言葉

【恒常的生産年齢人口減への備え】

1995年をピークとするわが国の「生産年齢人口」減は留まるところを知らず、同年を100とした2019年4月の同確定値は86にまで低下しています。今後の回復は期待しえないことが2019年の「第30回日本医学会総会」のシンポジウムで確認されたことから、更に毀損する労働力へ備える必要があります。

【労働力確保の為に】

2015年からの「ストレスチェック制度」により、合理的で働きやすい職場環境の構築整備が進んでいます。翌年4月からの「キャリアコンサルタント」の法制化により、多様性を求める労働者に対応するキャリア形成支援に拍車がかかりました。これらの活用を説く実践書(「キャリアコンサルティングに活かせる 働きやすい職場づくりのヒント」金剛出版)も刊行されました。

 

【雇用の流動化】

2018年に入り複数の東証一部上場製造業にて、人手不足や現場力低下にて赤字が確認されました。自動車製造業にて検査偽装が発覚した背景には、検査員不足や現場力低下があると考察されています。他方2019年4月からの働き方改革関連法施行にて、多様性ある働き方対応がより一層求められるようになりました。実際上場企業での早期・希望退職者数は6年ぶりに1万人を超え、かつ実施した35社のうち20社と6割近くの上場企業の最終損益は黒字だったという「黒字リストラ」が一般化されてきているとの東商リサーチ調査結果が報道されました。

 

【シンポジウム13の役割・・・多様性ある労働への対応】

「2025年問題」に加え、お一人様社員の定年延長に伴って、社員が要介護化した場合の対応も、現実問題として企業に求められています。これら多様性ある労働環境にどのように対応したら良いのか、①複数のキャリアコンサルタントから支援の実像、②海外からの参考例、③オープンイノベーションを活用したサービサー例を紹介することで、今後の「エイジレス社会」への備えを考える場になればと期しています。