2023年6月16日に開催された令和5年度日本労働安全衛生コンサルタント会神奈川支部定期総会において神奈川労働局安全課主席調査官と健康課長畑野俊様から特別講演会として解説がなされたのが「第14次労働災害防止計画(神奈川計画) 2023年5月神奈川労働局」であること、2023年7月16日に健幸経営産業医|第14次労働災害防止計画のポイントを解説にて紹介した通りです。
今回は労働衛生行政における根拠に基づいて策定された政策(Evidenced based Health Policy Making)の解説をします。
令和5年度労働衛生行政の重点
精神障がいの労災請求件数と支給決定件数という労災補償状況は年々増加するばかりです。
請求と支給という共に件数を下げるためには「第14次労働災害防止計画(神奈川計画)」において初表出の[アウトカム指標]という、いわば労働行政側の達成目標として
・60時間以上の時間外労働を余儀なくされる週労働時間40時間以上の雇用者の割合を2025年までに5%以下とすること
と、
・自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスがあるとする労働者の割合を2027年までに50%未満とすることが掲げられました。
労働行政は、これらの数字を満たすべく、労働基準監督署や同監督官は臨検等を通じた事業所への監督指導を履行しています。
次に事業主における行動目標である[アウトプット指標]には、メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合を2027年までに80%以上とすることが掲げられました。
ここでのメンタルヘルス対策というと、メンタル産業医に労働衛生を担わせたらよいということを示しているのではありません。
図にあるように、「ストレスチェックの実施のみにとどまらず、ストレスチェック結果を基に集団分析を行い、その集団分析を活用した職場環境の改善を行うことで、メンタルヘルス不調の予防を強化する」ことと、いわゆるハラスメント防止対策に取り組むという具体的な対応が掲げられました。
2015年12月から事業者に実施義務が課せられたのが「ストレスチェック」です。ストレスチェックその20|セルフケア&職場環境改善への工夫 にて紹介したように、ストレスチェックは集団分析を踏まえ、「働きやすい職場づくりのヒント」(金剛出版)で紹介したように、職場環境改善計画に基づいた参加型PDCAサイクルを駆使されると、永続的に働きやすい環境形成が自動化可能となるものです。
そのイキイキと働きやすい職場環境改善に向けた職場環境改善計画と具体的実行手段までを「職場ドック」という表現があるようです。
参考:メンタルヘルス一次予防のための職場環境改善 ~皆で進める職場ドック~
集団分析後の優秀事例紹介
キャリアコンサルタント有資格者である取締役が、職業性ストレスチェック実施センターの解説する80項目版ストレスチェック結果報告会に出て集団分析の結果を同センターの柴田稜平氏と検討。柴田氏は、数多くの企業の実際や経年変化までも俯瞰され続けています。何をどうしたら、どうなっていくという推移まで把握かつ、適確にフィードバックくださいます。
人事部の役目も労務管理から人財戦略へ変化する中、人材の人財化という人的資本経営において、人的資産価値向上への「アンラーニング(学修棄却)」と「リスキリング(学び直し)」が新陳代謝というダーウインの進化論を企業における永続性に具有するために必要事項と認識されてきています。多様性ある働き方とは、多様な価値観を持つ働き手のキャリア形成への想いも多様化することです。会社の成長発展のベクトルとが同じ方向性や時間軸を持つためには、キャリアコンサルタントによる社員面談を踏まえた社員への投資という、内部留保の人的資産価値向上への投資が、人的資本経営の中枢神経としての理解が欠かせません。
参考サイト:合同会社パラゴン代表で医師の櫻澤博文|社会構想大学院大学 実務家教員養成課程を修了 ~「アンラーニング」と「学び直し」の場として3つ目の大学院~
参考サイト:ストレスチェック48|メンタル産業医が説く攻めのメンタルヘルス対策(キャリアコンサルタントの活用事例も)
そのための書籍も2023年10月20日に販売開始されました。
▼ 2023年10月25日(水)付プレスリリース「合同会社パラゴン代表社員で医師・櫻澤博文共著の『社員の能力を120%引き出す研修講師32選』が10月20日刊行」
▼【新刊情報】いきいき職場づくりに貢献する講師の会:編集『社員の能力を120%引き出す研修講師32選』(有限会社イー・プランニング公式サイト)
▼ 書籍『社員の能力を120%引き出す研修講師32選』商品ページ(Amazon.co.jp公式サイト):https://www.amazon.co.jp/dp/4910739408
ハラスメント防止対策について
ハラスメント防止対策については改正「労働施策総合推進法」(2019年6月5日施行)にて職場におけるハラスメント(セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等ハラスメント)を防止するための雇用管理上の措置を事業主は、大企業に対しては、2020年6月1日から(中小企業は、2022年4月1日から)施行が定められた通りです。
おまけ
「第3次産業は大惨事産業」命名の産業医|転倒・転落・墜落防止に「ころばNICE神奈川体操」を紹介
「アクティブ体操®」をメンタル産業医が紹介|転倒災害防止にて健幸経営を
2021年に入り、1万人以上の日本人が転倒・転落・墜落で死亡していました。