産業医による健康経営㊳|根拠に基づく最善なる緩和ケア、看取りとは

コロナ感染が爆発した際、各都道府県がどの程度の感染状況を想定した上で、それぞれの医療体制を整備しようとしているのか、厚生労働省による2021年4月30日時点での集計結果が発表されました。

その集計結果とこれまでの最大値との比較は以下です。

新規PCR検査陽性者数1.6万人=2021年1月8日の最高値7,844人の2倍

▶入院や療養が必要なコロナ感染者数の1日あたりの最大値12万8千人= 2021年1月18日の最高値72,396人の1.8倍

出典:厚生労働省.各都道府県における医療提供体制の整備(緊急的な患者対応方針)(令和3年5月21日掲載)概要

思い出すに、「命の選別」が生じていたことが現役医師によって公になったことをお伝えしたのは2021年2月19日のことでした。

参考サイト:産業医による健康経営対策㉞|国立感染症研究所懸念:コロナワクチン耐性ウイルス流行への自力救済型対策とは(21/02/19)

前述の2021年1月8日や1月18日というと、いわゆる「第3波」という、2020年年末から2021年年始にかけてのコロナ罹患者数が増大していた頃を思い出すとわかるように、この「命の選別」は日本全国で起こっていてもおかしくはなかったのでしょう。対して、全国の地方自治体が想定している感染規模は、その時の倍です。今後、感染の拡大が収束しないと、第3波以上に十分な療養を受けることがなくなり、比して自宅や介護施設にて人生の最期を苦痛のうちに迎える方が増えるのみならず、その支援を行うご家族やケアラーの苦闘が増加したり、もしくはご家族と離れ離れ(はなればなれ)になって、いわゆる「死に目にもあえない」今生の別れという苦悶も倍増しえるものと危惧しました。

そんな中、西村真由美様が、そのような苦痛や苦悩の中にある方々への「ナラティブ(物語)」という、根拠ある、それは決してお仕着せではなく、その方々が営んできたかけがえのない、代替の効かない、その方々らしい営みにあわせた支援として以下14個のヒントをご提案くださいました。

西村様は、ケアや看取りという労働に従事されながら、京都大学大学院 社会健康医学系専攻の博士課程に通い、その従事内容が、より人々の健康と福祉を向上するためにと「End-of-Life」を研究テーマに日夜、研鑽を積まれている方です。

【紹介した想い】

◇家族が離れ離れになったとしても、つながりを保つことが期待できます。
◇緩和ケアにかかわらず、ケアラーとして必要な視点は、下記 すべてが提供できなくても、どれか一つでも支援になれば、それが救いになるものです。

【患者様への支援】

1.携帯電話を使えるようにする。

2.ご家族から、ご本人の好みの音楽を確認の上、本人が視聴できるようにする。

3.ご家族とのつながりが感じられるようなもの、例えば
・ご家族との記念の物、
・メッセージカード、
・家族写真 などを居室に持ちこんでもらい、患者様にお守りのように持ってもらう。

また、ご家族の方にも、患者様にそれら思い出の品を手に持ってもらったり、ベッドサイドに置いて過ごした写真を送る支援を提供する。

4.家族の名前をベッドサイドに貼っておく(患者様に言葉掛けする際、単に手掛かりになるだけではなく、ご家族の名前を聞くことは嬉しさが異なるものです「例:●●さんが連絡くれましたよ~」など)。

5.ガラス越しに家族と手のひらを合わせる(注:ベッドの位置を変更できなかったりと構造上の制限がある可能性があります)。

 

【ご家族への支援】

6.入院もしくは施設へ入る際、ご家族からご本人のお仕事、人生で大切にしてきたこと、楽しみにしてきたことを確認する。
そもそも患者様はモノではなく、ご家族からしたら尊厳ある大切な家族の一員です。そのようなかけがえのない大切な人として理解する姿勢は、忙しい中であっても忘れることはないようにしたいものです。そしてこれらのことは、他の職員の間でも共有することで、患者様への言葉かけの際、心と心で繋がるよい手掛かりにもなりえます。

7.ご家族に、定期的に患者様の経過に関して報告する。

8.ご家族は、闘病中の患者様のことを心配しているものです。意識がある患者様に関しては、看護/介護担当者との写真をご家族に送信することで、放置されているわけではないということ、お伝えすることが可能です。

9.患者様ご本人が希望された場合には、ご家族とお電話されている際の患者様のお写真を撮影し、ご家族に送信することも 「つながり」をより意識する支援となる可能性があります。

より高度な治療が必要とされる集中治療室等に患者様が入院している際には、よりご家族とのコミュニケーションは重要な意味を持ちます。これら積極的なコミュニケーションをとる工夫を重ねることが、ご家族との信頼関係を強固にするだけではなく、ご家族における悲嘆軽減に有用です。

参考サイト:Morris SE, et al. Caring for Bereaved Family Members During the COVID-19 Pandemic: Before and After the Death of a Patient. J Pain Symptom Manage [Internet]. 2020;60(2):e70–4.

 

【ご臨終に際して】

10.意識レベルが低下し、声が届いているか不明のときであっても、言葉かけは欠かさない。

11.ご家族が、どの声をかけてよいのか戸惑っていると察したのなら、
「お辛い中、どうされたら良いのか戸惑いではないでしょうか。今は、ご本人が安心できるように、ねぎらいや感謝の気持ちを伝えてあげてください」と提案することもありえます。

理由ですが、コロナ禍下とは場面は異なりますが、看取りの場面にて、「お陰様で、あの時、故人に対して、私の大切な想いを、きちんと伝えることができました。ありがとうございます。」といったような感謝の気持ちを表現されるご遺族いらっしゃるからだとか。

12. 患者様の苦痛や苦悩を軽減薬を投与、もしくは注入する際には、タイミングも重要です。
具体的には、ご家族による最期の言葉掛けの後になされるよう配慮が必要です。

13. ご臨終に際して、ご家族が立ち会えない場合でも、職員が傍にいて、患者様に、闘病に対するねぎらいや、入院中の心温まるエピソードに対する感謝の気持ちを込めた声掛けをお願いします。

14.声掛けをされたことは、ご家族にもお伝えください。ご家族から 隔離されてしまった看取りの場面であったとしても、患者様が決して一人ではなかったこと、孤立・孤絶・孤独のまま最期を迎えたわけではなく、素晴らしい仁徳をもとに入院されていたこと、尊厳と共に最期を過ごされていたこと、ご家族にも伝わるものです。

→特に率先垂範というように師長や医師という指揮命令者が率先して行うことで、屋根瓦方式よろしく、良い伝統形成と伝播が可能になりましょう。

参考サイト:Nouvet E, et al. Dying in honour: experiences of end-of-life palliative care during the 2013 – 2016 Ebola outbreak in Guinea. J Int Humanit Action [Internet]. 2021;6(10).

 


西村様 ありがとうございます。

以下を思い起こしました。

A heart is not judged by how much you love, but by how much you are loved by others. - The Wizard of Oz.

【意義】

十分な医療資源や人的ケアが得られないコロナ禍の下、人間としての尊厳を維持し、その人らしい最期を迎えるような支援を行うにはどうしたらよいのか、悩みに悩み、臨床研究者として、今、看取りに向き合う現場に役立つ情報を探し、上記のように貴重な支援策としてまとめられたと感服しました。

その他の支援

確かに1990年代、日本は電子立国でという想いを馳せることができた時代、過去にありました。失われた〇〇年といわれて久しいですが、そのギャップを埋めるためにか、慣れない高齢者に対してさえもオンラインでのネット予約を、文字通り、命ヲ懸ケサセテワクチン予約手配にてDX化に追い立てているかの様子。カスタマージャーニーという概念を取り入れた書籍の監修を、メンタル産業医命名者である当社代表は務めたことがあります。それは【作業管理】の要諦でもありますが、それらとは程遠い、ユーザーアンフレンドリーなインターフェイスであっては、相当な心身への負担が蓄積されているのではないかと危惧しています。

集団接種ではなく、近所の内科に「ないか?」と尋ねても、マスクやトイレットペーパー、消毒薬さえ2020年に切れた実際を鑑みる必要がありましょう。

出典:電子立国日本の自叙伝
出典:金剛出版.キャリアコンサルティングに活かせる 働きやすい職場づくりのヒント

参考サイト:チャートで見るコロナワクチン 世界の接種状況は

【長野県の支援】

長野県新型コロナウイルスワクチン接種アドバイザーチーム監修の以下、広く利用が可能となっています。

出典:長野県.「教えて!!新型コロナウイルスワクチン」

 

【こころの体温計】

感情鈍麻といいますが、こころが疲れ切ると、心身の疲れ具合を自ら把握しえなくなり、気が付いたら遁走、自暴自棄、最悪には自死選択に至ってしまう場合もあります。そこでどれだけストレスがかかっていて、心身が衰弱しているのか以下を使って認識することが必要です。

参考サイト:メンタル産業医によるレジリエンスを高める⑳|こころの体温計

【こころのサポートダイヤル】

ダブルケアやトリプルケア、中にはクアッドケアと負担がコロナ禍下、増加しています。

電話での相談先を以下で紹介しております。

参考サイト:健康経営㉞|こころのサポートダイヤル他 相談先のご紹介

 

【苦悩のうちに心が沈むケアラーの方へ】

5分だけでいいので、以下にあるコンテンツを確認ください。

参考サイト:メンタル産業医によるコロナうつ対策⑥|5分でできる ”こころ”のケア

 

【心身不調に悩む女性ケアラーへ】

以下の「ヘルスケアラボ」にある各種 心身不調チェックをご実施ください。

参考サイト:健康経営に長けた産業医による「女性の健康週間」と「ヘルスケアラボ」の紹介

【1分間マインドフルネス】

参考サイト:こちら「メンタル産業医」相談室(1):働く人に多い「過緊張」、1分間マインドフルネスで予防を

【瞑想の一助】

参考サイト:ROOT CHAKRA HEALING with Soft Hang Drum Music | Let go of Worries, Anxiety and Fears