医療業・保健福祉業への産業医活動

健幸経営を推進する産業医として医療業・保健福祉業の産業医や労働衛生コンサルタントとしてコンサルタントする際、課題があります。医療業・保健福祉業は、長時間労働がある意味当たり前であり、つまりは過重労働を余儀なくされる業種だということ、想像しやすい現実がございます。生死を左右する医療現場に従事する医療職は、その背負う生命の重さが最優先され、医療職自身の過酷さは省みられることは、確かに過去、多くはありませんでした。加えると、「医療事故」や「医療過誤」も、その当事者である医療従事者は、本来、問われるのは
その「説明責任(accountability)」だけのはず。しかしながらコロナ禍での迫害事例が一例ですが、「非難を受ける責任(responsibility)」までをも問われ、糾弾され、「魔女狩り」よろしくその医療職に責任の全てが帰着され続けてしまい、医療職は挑戦的な治療の提案はせず、無難な防衛的医療提供にとどまるという、手痛い停滞を余儀なくされ、幸福追求権を持つ市民の期待権に限定が生じるという帰結を迎えていました。

 

参考サイト:産業医による健康経営対策㉒|医療従事者への差別や偏見の実際と対策
出典:Inquiry into the Export of Defense Equipment and Dual-Use Goods to Iraq Telated Prosecutions, 1995-96,H.C.115

その背景にある過重労働や過酷な労働現場、「医局講座制」や「白い巨塔」に象徴される悪しき因習や経験・権威主義といった非科学的、非合理性があったとしても、労働安全衛生での「作業環境管理」や「作業管理」面からの課題把握と分析、そして対策という本質安全化という根本解決が鑑みられたり、なされることは「メンタル産業医」命名者である当社代表が低減に向けた提言を行うまで、ほとんどありませんでした。

思うにコロナ禍でも、中国型コロナウイルスを伝播させた中国や輸入し続けていた防疫の不備が問題なのに、医療従事者が差別されたことは、ハンセン氏病や水俣病の当時と 同じ 前時代性どころか科学立国日本が20世紀という過去の遺物だったと称せられるだけの後進性のなせるわざなのかもしれません。

そのような中、当社代表は、企業における労働安全衛生対策の費用対効果は2.7倍にも及ぶことを示す支援を1998年から1999年と、ノストラダムスの大予言で世の中が揺れていた頃に行っていました。その立場から、医療業・保健福祉業も「企業」であるならば、当然のように労働安全衛生対策を執り行うべきという立場で当ページを記載しました。

参考サイト:中央労働災害防止協会 受託研究 平成10年度~平成11年度企業の労働安全衛生対策にかかる費用効果分析(主任研究者:長崎大学環境科学部 浜民男教授)    

このサイトは、当社代表が労働安全衛生という実践体系を医療・保健福祉業にも導入してきた実践例を紹介します。

0.目次

1. 医療機関も事業所、医師も労働者
2.事業所たる医療機関の作業環境管理面での課題と対策
3.労働者たる医師の作業管理面での課題と対策 
4.労働者たる医師の健康管理面での課題と対策 
5.事業所たる医療機関の労働安全衛生対策
6.日本鍼灸師会の取組み

 

1.医療機関も事業所、医師も労働者

・福井社会保険病院主催 福井産業保健推進センター後援 医療事故・過誤防止セミナー「人は誰でも間違える-労働安全衛生面からの防止対策―」2003717

→代表支援の下、労働安全衛生面からの医療事故・医療過誤対策に対して病院全体で取り掛かった記録が残るのは福井社会保険病院が最初でして、それは2003年のことでした。

・福井医大放射線科主催 平成15年度技師研修会 「MBAに学ぶ職場の活性のポイント」 2003年9月29日

→今日の「健康経営」の視点を取り入れた医療機関としては、福井医大(現 福井大学医学部附属病院)放射線科で、同じく2003年のことでした。
 
産業医を取り巻く法的・実務的課題 東京弁護士会医療過誤法部2018年度第4回部会 2018年7月27日

→東京弁護士会の医療過誤法部会という、「医療事故」や「医療過誤」を扱っている弁護士の先生方の勉強会にて、医療従事者にはまだまだ労働基準法や労働安全衛生法といった基本的人権たる法の保護がなされていないという、いわば治外法権的被差別を被っている現状に関して問題提起しました。

第93回日本産業衛生学会 シンポジウム13「令和時代の産業保健支援とは~恒常的人口減社会における産業保健支援のあり方~」2020年6月12日~28日 WEB開催 

→共同座長を担った際、2級キャリアコンサルティング技能士で公認心理師の濱田佳代子氏より、熊本市に本部がある医療法人社団仁誠会における2007年からのキャリア形成支援や医療職に対するメンタルヘルス支援の実施例を紹介してもらいました。この医療機関では2007年より、医師を含めた医療従事者は、当然にキャリアの危機や悩みを抱える労働者性を持つものとして扱い、そのキャリア開発やキャリア形成に、キャリアコンサルタントが支援を提供し続けているという卓越した知見が紹介されました。 

第94回日本整形外科学会学術総会シンポジウム52「若手整形外科医の育成—労働衛生の観点から—」2021年6月10日~7月12日 WEB開催

→産業医科大学 整形外科学講師 川崎展医師と共同演者

参考サイト:第94回日本整形外科学会総会シンポジウムでメンタル産業医が共同演者

2.事業所たる医療機関の作業環境管理面での課題と対策

・病院における喫煙の危険性について. 洛和会病院医学誌 2002;13:5-7.

→病院食堂で喫煙できることが、患者のサービスになるということが信じられていた時代がありました。喫煙する患者様のためには、喫煙しない患者や医療従事者は受動喫煙を強いられてもガマンを強いられていたわけです。対して当社代表は、「作業環境測定法」に基づく粉じん測定という科学的技法を用いることで、食堂利用者が滞在時間中、どれだけのヒ素曝露を受けるのかの実態を定量化するのみならず、数値基準まである「事務所衛生基準規則」に抵触することより、受動喫煙による実際を科学的根拠に基づいた法的対策を執れるということで、労働者たる医療職の保護をも可能となるという論点を2002年に呈示しました。


30回日本医学会総会 2019中部 産業医の社会的使命と過重労働・ワークライフバランス.シンポジスト. 2019年429

→「80項目版ストレスチェック」を活用することで、ポジティブ心理学に基づいた イキイキとした前向きな就労意欲の涵養と、「集団分析」実施後の「快適職場環境改善計画」にて、快適な職場環境づくりが可能となることを医師会の先生方に紹介しました。

3.労働者たる医師の作業管理面での課題と対策 

研修医・労務管理者・産業医を対象とした研修医の就業と健康に関する調査.77回日本産業衛生学会、名古屋 20044月、産業衛生学雑誌200446(臨時増刊号):104

→研修医に対する労働者性の有無が争点や論点となっていた時代、当事者意識を持つ医学部学生による発表支援を行いました。

・厚生科学研究費補助金(医療技術評価総合研究事業)医療事故防止対策における医薬品、医療用具等を通じての効果的な実施及び評価に関する研究 研究班に所属し、「医療過誤・事故防止に必要な労働安全衛生管理体制の構築に関する研究に従事(2002,2003年度)

出典:医療過誤・事故防止に必要な労働安全衛生管理体制の構築.医療事故防止対策における医薬品、医療用具等を通じての効果的な実施及び評価に関する研究 平成14年度総括分担研究報告書

出典:医療過誤・事故防止に必要な労働安全衛生管理体制の構築.医療事故防止対策における医薬品、医療用具等を通じての効果的な実施及び評価に関する研究 平成15年度総括・分担研究報告書

2002年2003年には、厚生科学研究費という科学研究費が支給された研究班にて、労働安全衛生管理体制を医療・保健福祉機関に導入することで医療事故・医療過誤防止に寄与し得るという以下の論点を呈示しました。

★医療事故や医療過誤の背景には、そもそも医療従事者の労働環境が劣悪という背景があることが考えられる。
★労働安全衛生管理水準でみると、多くの課題が確認。
☆医療従事者の労働環境を労働安全衛生管理面から改善する事で、医療過誤・事故を減少しえる事を検証
☆研修医も含め労働者性がある医療従事者にも労働者としての保護を提供
☆医療機関における衛生管理者や産業医選任

実際に実用化・実装化されたもの

<本質安全化>
・RFを使ったICチップ(RFID)

<作業管理のキモ(人を合わせるではなく、人に合わせる)の導入>
・紛らわしい医薬品名を、識別しやすい名称に変更。間違えにくい医薬品の命名
・医薬品のアンプルやシートに一目見るだけで認識しやすいマークや色彩を加えてもらう
・EBMに基づくフローチャートの導入(作業標準化) 

燃え尽き症候群の再発防止 ─そもそもの発生ゼロへの提言─・治療2019年5月号

4.労働者たる医師の健康管理面での課題と対策


・燃え尽き症候群からの職場復帰(復職)支援.治療 2019年5月

→需要旺盛に対して 頑張りすぎ、頑張りがちな「現実の否認」という、問題を問題のまま放置する総合診療科医に対して、「休んだら?」という現実の受容という過労死防止の基準点を示しました。また、「時間の援用」で構成される円滑な職場復帰支援を、「休職期」「生活安定期」「復職準備期」に分けて、具体的に紹介しました。

5.事業所たる医療機関の労働安全衛生対策

 ・第93回日本産業衛生学会 シンポジウム13「令和時代の産業保健支援とは~恒常的人口減社会における産業保健支援のあり方~」,2020年6月12日~28日 WEB開催

→2050年までには実現する「Society 5.0」社会における労働と健康支援の未来予想図を示しました。いくら科学技術が発達しようと残存する課題として「2つの「死」と「志」」を提示し、共同座長とシンポジストを務めながら医療機関における80項目版ストレスチェック実施事例やキャリアコンサルタント有資格者から、医療機関におけるキャリアコンサルタントの活用事例を紹介しました。

参考サイト:第93回日本産業衛生学会総会のシンポジウム13にメンタル産業医登壇

 

6.日本鍼灸師会の取組み

 ・医療福祉を担う重要な職種として鍼灸師がいらっしゃいます。個を対象とする臨床から、広く地域や企業の支援にも視軸を定めていきたいという取り組みが始まっています。 

メンタル産業医の講話|日本鍼灸師会関東甲信越ブロック&神奈川県鍼灸師会学術講習会終了