2021年5月の「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」(以下、改正医療確保法)を受け、高次医療を担う特定医療機関でさえも医師への時間外労働の上限が、これまでの青天井から1,860時間までとされる規制が2024年4月から開始されます。また、その実態調査が開始されます。過重労働対策で知られる合同会社パラゴンの支援を得た産業医科大学整形外科学講師川崎展(まこと)医師シンポジウム52「若手整形外科医の育成—労働衛生の観点から—」での講演が第94回日本整形外科学会総会で紹介されました(2021年6月10日から7月12日までWEB開催。以下学会)。時間外労働を医師に課している医療機関は、この講演内容を参照の上で改善対策が求められます。
合同会社パラゴン代表社員の櫻澤博文は2001年と今から20年強も前から、医療機関における労働安全衛生管理の不備事例(写真参照)を根拠にした発表と論述を開始し、今も医療過誤・事故防止に必要な労働安全衛生を研究し続けています。
2002年と2003年には、厚生科学研究費という科学研究費が支給された研究班にて、労働安全衛生管理体制の不備という命題と、それらを医療・保健福祉機関に導入することで医療事故・医療過誤防止にも寄与し得るという論点を呈示し以下のように報告書でも記述しました(これを引用せず、さも自分らが発案したような研究者がいますが、著作憲法第32条 引用 と同48条 出所の明示 規定に反する 盗用&剽窃です)。
参考サイト:医療過誤・事故防止に必要な労働安全衛生管理体制の構築.医療事故防止対策における医薬品、医療用具等を通じての効果的な実施及び評価に関する研究 平成14年度総括分担研究報告書
加えて医療機関の提供する医療水準を下げることなく医師の長時間労働を低減する支援のあり方に関して複数の研究成果を発表した立場から、共同演者として講演内容編成に協力し、「医療確保法」を掛け声だけに終わらせない、実像を示す機会にしてもらいました。
その1:第30回日本医学会総会 2019中部(2019年4月29日) シンポジウム「医師の社会的使命と過重労働・ワークライフバランス」
シンポジストとして行政(官)や日本医師会、そして学者(学)からの分析や検討に関する議論に参加すると共に、産業医という実務家の立場から、「産官学」が三位一体となれるような、つまりは最適と考えられる具体的対応方法を紹介。
以上のように、当社代表は2019年には日本医学会にて。2020年には日本産業衛生学会で議論を深めてきた背景を持ちます。また、公的(対外的)な記録としては2002年以降、医療業は保健福祉業に対する産業医としての支援のあり方を長く研究してきた立場でもあります。
産業医科大学 川崎医師には発表内容の構成要素として以下の内容を含有するよう提案しました。
・労働者性の構成要件やその保護のために必要となる時間外労働を規制する法的保護概念
・法的保護概念を実現させるために国や日本医師会が構築した具体的な対応
・快適職場形成に向け、医療機関として時間外労働削減のための具体的対応手段と80項目版ストレスチェックを活用した労働監査
実際、以下の発表がなされました。
「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」(以下、「改正医療確保法」)を2021年5月28日に公布されました。
長時間労働を行う医師に対して医療機関が講ずべき健康確保と共に、地域医療構想の実現に向けた医療機関の取組に対する支援の強化等の措置が講じられることになります。また厚生労働省は、全国の医療機関を対象に、改正医療確保法に基づく時間外労働の上限基準である年1,860時間を超す医師の存在に関する実態調査を開始することになりました。この1,860時間は救急医療機関のように、地域医療を担う基幹病院や医療技能を集中的に向上する必要がある医師であっても、厳守が必要な上限時間です。令和元年度調査によると、時間外労働が1,860時間を超える整形外科医は10.1%も存在しています。整形外科は、いわゆる3k(「きつい」、「苦しい」、「汚い」)に加え「苦痛」、「過労」、「帰れない」、「悔いる」、「気が滅入る」等のKも加えられる多K職場と目されており、腰痛や肩こりを訴える女性が多い中、対応できる女性医師は「平成26年度医師・歯科医師・薬剤師調査」(厚生労働省)によると4.6%と診療科の中で最低という現状もあります。
腰痛や肩こりを訴えるのは女性が多い中、対応できる女性医師が少ない現状では整形外科学会の明日はありません。
そこで整形外科医がより働きやすくする方法や対策を集約し、学会参加者に修学してもらうことで、明日の整形外科を取り巻く状況を改善することを目的としたシンポジウム52「若手整形外科医の育成―労働衛生の観点から―」が6月10日 から7月12日 までWEB開催中の第94回日本整形外科学会学術総会(以下、学会、URL:http://www.joa2021.jp/app/index.html)にて企画され、産業医科大学整形外科学講師川崎展(まこと)医師による講演が発表されました。
川崎医師自身が整形外科医を志した25年前の実情を踏まえ、厚生労働省、日本医師会および医療機関による週20時間分のタスクシフトという、医師業務分担の実例紹介、産業医科大学での実際の働き方改革、同整形外科学講座でのITを活用した会議の削減例他、明日からすぐ導入できる対応事例が複数紹介されました。
以上の川崎展医師の紹介している産業医科大学での具体的な実施内容を知ることで、年あたり1,860時間とは単純に月単位でみると155時間にも及ぶ、過剰な時間外労働が低減されることはもとより、全国の整形外科学医は確実に働きやすくなることが期待できます。
また、2020年の医療法改正にて、医療放射線被ばく軽減の実効性を高める改正がなされました。
その理由は、以下のように日本での放射線防御が、2011年の東日本大震災以降、甘くされた背景からか、曝露量が増大した現実があります。
参考サイト:合同会社パラゴン.産業医による新型コロナウイルス感染症対策⑩|マスクの選択<追記の追記>
更に2021年度より電離放射線障害防止規則が改正されました。
出典:厚生労働省.【令和3年4月1日施行】改正電離放射線障害防止規則及び関連事業について
これらをも川崎展先生はご発表され、科学的根拠に基づく法的対応の必要性を述べられました。
このように 日本整形外科学会が、産業医学の世界的権威といって過言ではない産業医科大学からの、より具体的な実践内容を取り上げました。そのシンポ有無での発表内容は、合同会社パラゴンによる20年以上もの研究という蓄積があればこそとと自負しております。
実際、以上にて全国の整形外科医は、よりイキイキと、その持つ医療技術を提供できるようになることが期待できるでしょう。その結果、受療者側である市民の満足度や充足度も、より高まることが期待できます。いわば健康経営の整形外科や整形外科医療版です。
今後は、他の過重労働を強いられている他の繁忙な救急科や脳神経外科、産科医療においても、上記の内容が水平展開されていくことで「医療確保法」に掲げられた法理念に、ワークライフバランスという実体が伴うことで、医療従事者の実際的な支援となっていくにものと期待できると共に、医療の享受者である市民が、より安心して病院やクリニックにかかることができることを願ってやみません。