産業医が解説|働き方改革関連法施行5か月後、残業減未達企業65.5%、従業員還元企業は4.8%のみ

【はじめに】

2019年4月より働き方改革関連法が施行されました。その5か月後の9月上旬に、国内主要企業を対象に働き方改革関連法の施行による労働環境に関する調査結果(回答数145社)が2019年12月31日の日経新聞朝刊に開示されていました。 題名は「働き方改革 減った残業代 「社員に還元せず」5割」となっていました。

記事を引用しますと、残業が減った企業50社のうち、従業員に何らかの形で利益を還元した企業は7社(14%)のみでした。

この7社に加え、実施を検討しているという11社を合わせた18社を対象と底上げした上での還元の内訳が示されていました

・ボーナスへの上乗せが4社(22.2%)と最多、
・基本給への上乗せと各種手当の支給が共に3社(16.7%)、
合計すると10社(55.6%)の企業は、残業代が減った分の補填を行うか行うことを検討しているとの記載が連ねられていました。

【課題抽出】

この55.6%という数字を導き出したから、題名に「5割」と記載したのでしょう。その前に、そもそも「国内主要企業」の定義や、有効回答率が何%なのか仔細説明がありません。つまりは統計結果をきちんと把握していない、捏造や偽装といっても過言ではない恣意的な記述でした。
そこで科学的根拠に基づく医療・保健福祉政策の実現を目標に、正しいことを正しくを理念に邁進しているメンタル産業医命名者が創設した合同会社パラゴン(東京都港区)としても、仔細を検討し直す必要があると考え以下、検討を行いました。

【仔細検討】
働き方改革関連法の施行で、残業が減った企業は50社(34.5%)に過ぎず、逆数の65.5%の企業では、残業は減らなかったことが記事から読み解けました。

次に、医学統計学的には、回答を寄せた145社を母数として考えなおしてみる必要があります。

【方法と結果】
従業員に実際に還元を行ったのは145社中7社に過ぎません。割合を求めると、

  7/145
 =0.048

すなわち4.8%です。

【解釈】
信頼区間を2SDの95%に設定したら、5%未満の4.8%棄却されてしまいます。その程度しか、従業員に還元した企業は出ていない結果でした。

【考察】
働き方改革関連法が施行された結果、健康経営を旗印として、生産性の向上に邁進する企業が多く出ているものと期待を寄せていました。

この調査結果を読み解くと、この期待とはずいぶんと印象が違います。

【合同会社パラゴンの支援実績】
当社は「健康経営」認証取得支援に長けた産業医集団で知られています。その顧客は、上記とは一線を画していることの証左を以下に紹介します。

●働き方改革関連法対応研修会にて当社代表に講師を依頼した団体例

  ◇全国医書同業会(東京都文京区)
  ◇東京都印刷工業組合&出版メディア協議会(東京都文京区)

テレワーク導入企業

メンタルヘルス不調者の復帰支援

●健康経営に関する著述例
  
  ◇「産業保健と看護」2019年4号(メディカ出版)

  ◇『キャリアコンサルティングに活かせる 働きやすい職場づくりのヒント』(金剛出版

●健康経営への取組み度合いが判るチェックシートの紹介